後継者

組織を隔てる三つの壁 ~同族経営の二代目が知っておきたい知識

一時、「ワンピース」という漫画が一世を風靡しました。
あの物語を一言で表現するとすると「仲間」という言葉に集約されるでしょう。
しかし、仲間意識というのは、時には大きな壁を作ります。
仲間の外と内に存在する壁です。

こんな経験はないでしょうか。
ある仲間意識の強いグループに、たまたま自分が入ることになりました。
決して仲間はずれにはされていないものの、どこかアウェイ感がある。

企業における部門ごとの壁とどこかしら似ているこの感覚は、どこからやってくるのでしょうか。


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製造部門と営業部門。
マーケティング部門と営業部門。
経営幹部と一般社員。
先代と後継者。

たとえ小さな会社であったとしても、いくつかの役割による分化はあるものです。
とかくこういった部門が双方で壁を作って、妙なわだかまりがある事は珍しい事ではありません。
「まったく、製造部門は営業の苦労をわかっていない」
「営業の人はなぜ、数日の納期が待てないのか」
そんな言葉が各部門の人間の頭には浮かんでは消えているのではないでしょうか。

 

この原因には、三つの要素が絡んでいるという説があります。
ハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は、著書
チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
の中でこう分類しています。

・物理的な距離…分離による相違
・地位…格差による相違
・知識…多様性による相違

 

まず、物理的な距離(分離による相違)というのは、簡単に言うと文字通り居場所です。
部屋が分かれるだけで、協力し合う度合いは下がるという研究結果があります。
私の知るある組織は、「営業」「事務」「パート」でそれぞれ島を作り、席を役割ごとにかためてしまいました。
営業と事務、事務とパートのコミュニケーションは圧倒的に不足したといいます。
結果として、仕事の効率や品質をかなり落としていたケースがありました。

 

格差による相違は後述するとして、次に知識(多様性による相違)についてを考えてみます。
これは仕事自体が専門分化するなかで、各々の知識や教育の違いからくるコミュニケーション不全です。

製造部門であれば、その品質にコミットしたい。
しかも、残業は減らせというミッションがある。
その中で、営業からは無理な納期を迫られ、無理やり一定期間で製品を仕上げなければならない。
自分たちの計画が丸つぶれになることを、営業社員はまったく気にも留めない。

営業にしてみれば、苦労してとってきた契約。
信頼関係を重ねるためには、納期は厳守。
無理な納期であっても、製造部門は何とか仕上げるのが筋であろう。
もうすこし協力的になれよ、と感じている事でしょう。

こういったお互いの考えの違いにより、その心理的距離はどんどんと離れていきます。

 

この三つの中で、もっとも大きい影響を及ぼすのが、地位の問題(格差による相違)のようです。
組織の中には、指揮命令系統といった考え方や、職位や経歴からおのずと上下関係ができます。
こういった上下関係は、指示する人とされる人、といった立場が様々な壁を作る事があります。

こういった”壁”にどう対処するかは、状況によってさまざまだと思います。
たとえば、知識の壁を壊すに至っては、各部門でのミッションではなく、会社全体の機能としてのミッションへの賛同といった事が必要かもしれません。
(恐らく、これこそが経営理念だというところに落ち着くのでしょうが)
物理的な距離については、特に協力すべきチームを物理的に近い位置に配置するといった事が考えられます。
冗談のような話に聞こえるかもしれませんが、”席替え”が効率を高める事があるのは、実証されている事実です。

 

地位(格差による相違)に関していえば、小さな組織でも起こりがちな問題です。
対応としては、どちらかといえば支配的になりがちな上位者が会社に対して心を開く必要があります。
チームが一丸になりにくいのは、もしかしたら社員教育が必要というより、幹部教育が必要なのかもしれません。
積極的に発言せよ、といいつつそれを受け入れない雰囲気を作りがちです。
よく、「ウチの社員は、自発的に物を言わない」という経営者は多いと思います。
しかし、実際は、その雰囲気を作っているのは経営者だった、という事はよくある話です。

これは恐らく、先代と後継者という関係においても同じでしょう。
少し違うのは、一般社員はなかなか上に対して意見は言えないことが多いのに対し、後継者は意見をいってしまう。
そこで衝突がおこるわけです。

 

この事は、社内に不穏な空気を作り出してしまいますから、場合によっては
同族経営ファミリーとそれ以外、という障壁を作ってしまう可能性もあります。
実は、そういった疎外感から辞めていく社員も実際は結構多いのではないかと思います。

 

きっと、後継者はそういう空気をかぎ取るわけです。
その結果、一刻も早く先代との対立を解消しなければならない、と焦ります。
すると、先代を締め出すというかなり厳しいゴールに向かい始めます。

やむを得ない場合、そういった決断が必要な時は確かにあると思います。
しかし、出来るだけ避けたほうが無難ではありそうです。
そんな状況におけるヒントを考えたときに、可能であればまずは先代と自分の関係は置いておいて、
社員との関係をしっかり作り上げる事に注力するのが結果として良い状況を作るように思えます。
いくら先代と争って、自分の意見を通しても、社員がついてこなければあまり意味がありません。
逆に、社員があなたに賛同し、そこに向かう一体感を作る事ができれば、先代もその流れからいつまでも外れているわけにもいかない。
そんなところから考え方が変わることがあるのではないかと思います。

状況に応じて試行錯誤は必要かとは思いますが、そんな方法も検討されてはいかがでしょうか。

 

さて、冒頭のワンピースのお話。
実は、私は全く見たことがないのです。
あれだけのブームになった作品ですから、きっと多くの人の心を引く何かがあったのだと思います。
ただ、「仲間」という言葉は耳障りがいいのですが、それは仲間の内と外を分けるリスクを持っています。
その「仲間」の範囲をどこまで広げて社内外に展開できるかが、経営者の腕の見せどころではないでしょうか。

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