心の距離と、物理的な距離は比例するものです。
後継者が会社と距離を置きたいと考えると、会社から離れたくて仕方がない。
逆に言えば、会社にいたくない場合、会社とのリアルな距離をとりたくなる。
社員や親とのそれも同様ですね。
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割と、会社と距離をとりたがる経営者、けっこう見受けます。
なにかと出張の予定を入れたがる経営者、
優先順位の低い飲み会に参加して、いつも
「忙しい」とぼやく経営者、
勉強会に頻繁に顔を出すけど社内でそれを共有しない経営者、
などなど。
だいたいこういう経営者は、会社の中に問題を抱えていることが多いものです。
いっぱしの経営者でさえそういう人はたくさんいます。
後継者の場合ならたとえば、
会社の仕事から遠ざかろうと社員を顎で使おうとしたり、
経営者団体みたいなところの活動に精を出してみたり、
会社を辞めたくて仕方がなかったり。
こういう後継者もまた、何かしらの問題を抱えていますね。
そこで考えたいことがあります。
まあ嫌なこと、見たくないこと、体験したくないことを遠ざけると、たしかに一時的に楽になります。
わたしも基本的に、その一時的な平和を求めるタイプです。
しかし、それで状況は改善しますか?
少なくとも私の経験上、改善した記憶がありません。
そりゃあそうですよね。
問題を遠ざけてみないようにしてるだけで、そこに問題がある事には変わらないのですから。
で、踏みとどまって何とかしようと決心したとします。
私の場合、それでもどこか逃げ腰というか、足は踏み込んでも身体はのけぞって距離をとろうとする傾向があります。
ところで、昨日たまたま、頭に浮かんだイメージがあります。
それは、例えば相手との距離が1mに満たない時との会話と、5m離れたときの会話の比較です。
同じ人と話していたとしても、距離が離れれば会話の内容は変わると思いませんか?
5mも離れてると、ディープな意見を交換するにはちょっとばかり勇気のいる距離です。
距離があると、なかなか本音では話せない、ということです。
心理学的に言うと、1m未満の距離というのは「個体距離」、5m離れると「公共距離」という距離感になります。
「公共」というくらいですから、個別の話というより、誰に聞かれてるかわからないのでないように気を遣う距離、と言えそうです。
これでは、なかなか深いところにある問題解決は難しそうです。
件の会社から遠ざかる経営者や、後継者は、そういった「ディープな話の出来ない距離」で組織とかかわろうとしてるわけです。
だいたい、そこから逃げ出したくなる理由がある組織だから、表面的なやり取りで問題解決ができるわけがない。
なのに、遠隔操作をしようとする傾向があるようです。
なぜならば、公共距離ならば、自分が攻撃にさらされた時、逃げられる距離だからじゃないかと思います。
そういった距離をとりながら、組織を遠隔でいじってもうまくいかない。
そう感じたときは、もう思い切って、その渦中に飛び込んじゃったほうが手っ取り早く処理できたりすることも多いのではないでしょうか。
ただ、やみくもにそこに飛び込むと、やっぱり結構グダグダになります。
だから戦略というか、仮説のようなものが必要になります。
ああすれば、こうなるんじゃないか、という考えですね。
まあ、問題は様々なので、解決策も様々になろうかと思います。
ただよく見かける失敗は、「相手が間違いで、俺が正しい」という前提から入るパターン。
たぶん、自分が会社と距離を置きたくなる背景には、この思い込みがあることが多いと思います。
これを改めずに渦中に入っても、やっぱり同じことが起こるんだと思います。
そういった思い込みを、主語を入れ替えて考えてみるとか、述語を逆の意味に考えてみるとか、いろんなシミュレーションをしたうえで今までもっていたものと違う考え方、ものの見方を考えてみるんです。
そうすると、上手くいくと、ああ、こういうことか、と起こっている問題の本質が見えることがあります。
私の場合でいうと、
・親である会長は私に従うべきだ
という思い込みがあったからしんどかったんです。
けど、たとえば、
・誰も誰かに従うべき理由はない
ととらえなおして、ハッとしました。
ならば、会長にになってほしい役割を自発的に担ってくれるにはどうすればいいか?とか、
会長が好き勝手に動いても、私が気にならないような体制を作るにはどうすればいいか?
とかいう風に、自分への質問が変わってきます。
延々と、「先代は後継者に従うべき」という思い込みを持ち続けていたら、
私は親を打ち負かすことしか考えないでしょうし、
親はその圧力に抵抗することしか考えないでしょう。
そこから抜け出すには、思い込みに気付き、それを書き換えることが大事じゃないかと思います。
それもこれも、距離を詰めるという決心がないとできないことだとは思いますが。
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