事業承継を確実に”失敗”へ導く13の行動

タイトルを見て、”おや?”と思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、間違いではありません。
今回のテーマは、事業承継の失敗です。

この内容は、もともと「Family Business Magazine」という雑誌に取り上げられたものを、
武井一喜氏が著書「同族経営はなぜ3代で潰れるのか?」でご紹介されているものです。

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事業承継を失敗へ導く行動

同族経営はなぜ3代でつぶれるのか?

まずは、ここで全体像を俯瞰してみましょう。

  1. 遺言を書かずに死ぬ「弁護士と税務署を喜ばせよう」
  2. 家族と会社の幹部には、財産承継と事業承継の考えを秘密にしておく。事業の承継をプロセスではなく(自分の死によって起きる)一つのイベントとして扱っている。
  3. 会社の株は子供に引き継がせると決めつけた財産継承計画を立てる。家族にビジネスをどうしたいかという事は絶対に聞かない。「子供たちには自分たちの事を自分たちで決める能力はない」と思い込んでいる。
  4. 生命保険に入らない。「会社には相続税を払う金は十分にある」
  5. 子供たちを自分の会社に無理やり入れて、簡単にあとを継げるようにする。「学校でしっかり勉強したのだから、少し休んでもいいだろう」
  6. 息子の嫁や娘婿を自分の会社から遠ざける。「結婚が一生続くとは思えない」。配偶者には関係ない事、と思い込んでいる。
  7. どんな形にせよ、会社のコントロールは死ぬまで手放さない。「自分が育てた人間は俺が死ぬまでずっと忠実で、辛抱強いはずだ」と思い込んでいる。
  8. 息子がビジネススクールを卒業したらすぐに大きな権限を与え、娘の権限は少なくする。娘には朝の会議にコーヒーとお茶菓子を忘れないように伝える。
  9. 取締役は自分と妻だけ—-他人は入れない。「部外者に何ができる?金がかかるだけだ」
  10. 「売渡・買取規定」(株の売買に関する規定)なしに家族や従業員に株を渡す。会社の株が少しくらい他人の手にわたっても、どうという事はない。社長が高い報酬を取り、働かない家族に給料を払い、株主に配当を出さない理由など、誰だってわかるはずだ。
  11. 今までのやり方がベストの方法だ。新しいマネジメント手法や戦略プランなど、うちには必要ない。「目の前の仕事で手一杯だ。将来を考えたり講義を聴いたりしている暇はない」
  12. 顧客や仕入れ先との大事な人間関係は自分が受け持ち、商売の秘訣は自分だけが知っていればいい。だれも信用できない。たとえ身内であっても。
  13. 毎晩の家族との夕食で仕事の問題を話し合い、取締役会で家族の問題を話し合う。「みんなの役割を混乱させよう。」

 

いかがですか?

いくつか、気になるものをピックアップして、私なりの考え方を述べたいと思います。

争続問題が会社をつぶす

オーナー企業においては、多くの場合、創業者は会社のオーナーであり、
場合によっては、会社が利用している不動産のオーナーであることもあります。
その創業者の相続問題は、会社の相続問題に直結します。

例えば、会社の自社株を事業と関係のない親族が相続したら、
また自社ビルの建つ不動産を、事業と関係のない親族が相続したら、
これはその後の経営を難しくすることが予想されます。

多くの場合、「うちに限ってそんなことはない」とおっしゃるわけですが、そういった創業者の相続後、
様々な問題が勃発している話は、日常的に見聞きします。

例えば、長男が事業を継承し、兄弟が自社株の一部を取得したとします。
そのようなケースで、起こった事例でこんなお話があります。

会社の売り上げが一時と違い、上手く伸びないタイミングで長男が事業を継承しました。
古参社員との関係、先代からの借入金の返済といった悩みに長男は頭を抱えています。
組織の立て直しを図ろうとするも、すぐにはいかず、会社の財政はますます厳しい状況です。
長男は自身の役員報酬を大幅に下げて、しのいでいました。

そこに、株の一部を受け継いだ弟が出てきます。
弟の内心は、兄貴はいいよな。親父と一緒に仕事をして楽をしてる。今では社長さんだ。
そこそこの会社だし、相応の収入を得てるんだろう。
しかし、自分はサラリーマン。
自由度も低く、転勤生活。

給与は近年の不況のあおりを受けて下がっていくのに、子供たちの教育費はどんどん上がっていく。
会社の財産、ビジネスを受け継いだ兄貴はひいきされている。
せめて、自分が持つ株の配当ぐらい主張したって罰が当たるものでもないだろう。

こうやって、兄弟の仲は悪化し、長男にとって弟は会社の経営を邪魔する存在となりました。

創業者夫婦は、「兄弟仲良く」といったっけ。
しかし、兄弟がいがみ合う種を残していったのは、あんたたちじゃないか。
長男からはそんなつぶやきが聞こえました。
そこに対して、どのような対策を事前に打つかは、ケースバイケースとなります。
各々の事情にあった対策を、是非元気なうちに考えたいものです。

その一つとして遺言があります。
そういう提案をすると、創業社長は非常に嫌がります。
自分の死を意識するのが嫌なのか、可能な限り先延ばしをしたいのか、
そこはわかりませんが、早めの手を打ち、その考え方を家族内にオープンにしなければ、
争いの種を残すことになります。

生涯現役は善なのか?

ときおり、「生涯現役」をポリシーとされる方をお見かけします。
そのことは、場合によっては称賛されることも多いと思います。
しかし、それが称賛されるというには、ある前提条件がある、と私は考えています。

その前提条件というのは、
「会社の存続、または顧客との関係において、迷惑をかけない」
という事です。

一職人が、その技術がさびない範囲において、生涯現役を貫くのは素晴らしい事だと思います。
超高齢化社会の解決策の一つに、生涯現役で収入を得られる社会、というものがあるでしょう。
しかし、それはあくまで個人と製品という小さな範囲の中で、その技術・技能が一定レベル確保できている、という関係において認められる話です。

一方、会社の経営者、というスタンスで考えてみた時にはいかがでしょうか。
「バトンタッチ」という言葉に関連して、リレーにたとえるとわかりやすいと思います。

創業社長が、社長としての「生涯現役」を謳うという事は、
リレーでいうところの、走者交代エリアで待つ後継者を突き飛ばして、バトンを運ぶ、という事です。
その様子を見た、後継者、従業員、顧客は恐らく口をあんぐりとあけてみていることでしょう。
そして、力尽きた時、そのバトンを受け取る人はそこにはいません。

創業社長が遠い先で落としたバトンを、後継者はわざわざ拾わなければならないのです。

生涯現役を悪いとは言いませんが、周囲を巻き添えにしないでいただきたいのです。
ですから、代替わりをする、と決めたのであればそのタイミングにきちんと、自分の立場を変え、
もし生涯現役で働こうと思うなら、自分の技量の衰えのないところで、会社の一部分として後継者を盛り立てる必要があります。

以前にも書いたように、創業社長の多くは自分が注目を浴びることにモチベーションを強く持ちます。
その光を、意識して後継者に向けなければ、事業承継など上手くいくものではないでしょう。

会社の代表者という立場を辞するタイミングの一つとして、
「新たな考え方を取り入れることが億劫になり始めた」
という事があるかもしれません。

そんな自覚を持った際には、一人の技術者・職人として生きる道を考えた方が良いのではないでしょうか。

生命保険と事業承継の関係

生命保険は、死んだら保険金が出るもの・・・。
一般的には、そのような理解だと思います。
しかし、保険金は税制上の優遇措置もあれば、なにより死亡というきっかけで、大きなファンドを得られる他にはない仕組みを持っています。
さらに、他の相続財産とは違い、受取人を指定することができます。
このことが意味することは大きいものです。

一般の相続財産は、遺言がない場合はそれをどう分けるかは、遺族で話し合いが必要です。
しかし、生命保険は、契約時に「このほけんの保険金は、○○に渡す」という約束を含んでいるという事です。
例えば、事業を継ぐ長男に事業用の財産を集中して相続させた時、他の兄弟からは「不公平だ」という声も出てくるでしょう。
その対策として、兄弟にはそれぞれを受取人とした生命保険を用意することで、キャッシュを渡すことができます。
そうやって争族を防止する機能として活用することも可能です。

相続税対策という意味でも様々な手法が、考えられます。
そもそも、現金納付しなければならない相続税の支払いファンドとして、
生前贈与の手段の一つとして、検討する項目は多岐にわたります。

こういったものを無視して事業承継を考えるのは、ナンセンスとさえいえるかもしれません。

大事な顧客ほど早く引き継ぐ

時折耳にするのが、
「この顧客は、当社にとって大事な顧客だ。だから、ワシが対応する。」
という創業社長のお言葉。
これは、正しいようで、疑問の残る考え方です。

なぜなら、これは
「ワシがいなくなった未来の事は、ワシにとっては関係のない話」
という言い換えができないでしょうか?

創業社長と後継者という小さな関係の中では、それでもいいのかもしれません。
しかし、問題は、その大事な顧客を未来永劫会社として守っていこう、という意思が感じられないのです。
今は、創業社長が最前線で対応することで、顧客の満足度は高く維持されるかもしれません。
では創業社長が動けなくなった時、そのお客様はどうすればいいのでしょうか?

ここに、深いところで事業承継の「方針」のずれが出てくるのです。
これは、事業承継を成功させる、というスタンスではなく、自分がスタープレイヤーであり続けるというスタンスに見えてしまいます。
顧客を守り、社員を守るための事業承継だけではなく、
自分の後ろの守備だけを固める事業承継になってしまっているのです。
この深層心理のギャップで、創業社長と後継者の確執は発生します。

本来的には、大切であれば大切であるほど、
その重要顧客に新たな担当者を付け、その顧客の満足度を下げることなく向上させる手を打っていく
助走期間が必要なはずです。

ここをはき違えないよう気を付けたいものです。

事業承継の目的

事業を継がせることではない!?

さて、ここで結論めいた話をします。
私自身、さまざまな経験を経て感じること。
それは、事業承継の最終的な目的は、事業を継承することではない。

え?何を言ってるんだ?コイツ。
そんな風に思われたかもしれません。
事業は時代とともに変遷します。
やり方も変われば、商品も変わります。
それでも会社が会社として存続するために必要なこと。
これを突き詰めていくと、
人を育てること
以外にその目的はないのではないか、と思うようになってきました。
事業が形を変え、時代の中で生きていく背景には、
それを動かす人さえいれば、半永久的に成り立つと考えられそうです。

ここで誤解されがちなのが、
人を育てることは、今の仕事ができる人を育てること、
という考え方です。
マニュアル化し、経験を積ませる、という育て方になるのでしょう。

しかし、実際はそうではないと思っています。
それはどんな時代、どんな事態が訪れても、臨機応変に対応できる人を育てなくてはなりません。
そのためには、失敗を経験させ、自分で考えさせることが何より重要です。
手取り足取り教えるというより、自由にやらせて自ら学ばせることがとても大事なのではないかと思うのです。
その一歩を踏み出してもらうためには、押さえつけてはいけません。
ともすれば、後継者を気にかけ、手を差し伸べがちです。
しかし、それは必要ありません。
後継者は自分の責任を、自分で取らなくてはならないのですから。

まとめ

海外の雑誌に掲載された、事業承継を失敗させる13の要素についてみてみました。
どうやら、洋の東西を問わず、似たような問題があるのが、事業承継のようです。

これらを一言で言うと、
創業社長がどれだけ事業承継のために動けるか?
という事がかなり大きなキーになると思いますが、いかがでしょうか。

もちろん、後継者にかかわる問題も少なくありませんが、後継者の事を云々する前に、
そもそも創業社長は事業を継承させようと本気で考えているのか?
そこに沿った言動が行えているのか?
という自問自答が必要となるのではないか、と思います。

全てが当てはまる、という事はさすがにめったにない事だと思いますが、2つ3つはドキッとさせられる項目があったのではないでしょうか。
今すぐ、そこを改善できれば、理想的ではあります。
しかし、恐らく今まで意識さえしなかった話もあるのではないかと思います。
まずは、そういったことが問題である、という事を認識することが第一歩として必要なことだと思います。

そしてそのことは、後継者を育てること、人を育てることにつながります。
考える人を育てるのです。
だから、創業者が先回りしてはいけないのです。
頭を打とうが、失敗しようが、創業者はそれをじっと見守っているのがご自身の役目ではないでしょうか。
もちろん、どうしようもないピンチには手を差し伸べる必要もあるかもしれません。
しかし、ギリギリのところまではやらせてみる寛容さが必要なのだと思います。
大変なことではありますが、後継者のすべてを受け入れてみてください。

 

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