ある二代目経営者がいます。
彼は、販売不振な会社を見て、こう判断しました。
「販売強化をしてはいけない」と。
けっか、数年後その会社は素晴らしい勢いで伸びていきました。
彼はいったい何をしたのでしょうか?
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その二代目経営者が、親から代を引き継ぎ初めにやった大改革。
それは、販売強化のための営業マンへの尻たたきをやめることでした。
なぜなら、彼はそれでは業績が回復しないことを知っていたからです。
私たちは、つい、目の前に起こることに心を奪われがちです。
それが苦痛を伴うことならなおさらです。
たとえば、子供が登校拒否を起こしたとします。
親としては、卒業のことや、子の将来のことを考えると、
「這ってでも行きなさい」
「しっかりしなさい」
「こんなことをしていて、将来どうやっていきていくつもりなんだ?」
などとどんどん子供を追い詰めていきます。
最近の登校拒否の中には、いじめといったわかりやすい理由のないものも多いといいます。
そうすると、親としては、
「なぜ学校に行かないか?」
と詰め寄りたくなります。
目の前にある現状を何とかしたいばかりに、学校に行かない事実を変化させようと必死になります。
その中で、子供はどんどんプレッシャーを感じ、ますます内にこもってしまう。
結果として、自分で前に進もうという力を失ってしまうということがあるようです。
会社の問題も、不登校も、目の前に見えている症状は大きな問題のごく一部であることが多いようです。
件の二代目社長が、目の前の痛み(売り上げ減少)に対処するために営業社員の尻たたきをし続けるとすると、何が起こったでしょうか。
一時的に売り上げの回復は見込めたかもしれません。
しかし、それは長続きせず、営業社員は疲弊し、最後はその経営者も疲れ切ってしまうでしょう。
結局、自分たちは何のためにこんなことをやっているのだろう?
うつろな表情で心はさまよう。
そんな状況が予想できます。
さて、親子関係で悩む後継者はどうでしょうか。
やはり、目の前にある苦しい状況ばかりが頭の中でぐるぐる回ってはいないでしょうか。
オヤジがあんなふうだから大変なんだ。
自分が二代目として生まれたばっかりに・・・
古参社員がもっと従順だったら・・・
自分がふがいないばかりに・・・
そんなことに目を奪われて、大局を見失うことが多いのではないでしょうか。
目の前の苦しみで動きが取れなくなった時、試してほしいことがあります。
それはほんの少し、上の視点から物事を見てみることです。
第三者の視点とでもいうとわかりやすいでしょうか。
たとえば、登校拒否の児童に関して言えば、学校における環境はあくまで引き金に過ぎないケースも多いと聞きます。
むしろ、それまでに続けてきた親子の関係の中で培われたものが、あるタイミングで噴出してしまう。
それが学校にいけない、という行動に現れることがあるようです。
営業についても、営業努力が足りないせいで売れないわけではないことも多い。
商品であったり、戦略のミスや、顧客とのかかわり方はもちろんですが、会社の在り方自体を問い直す必要があることがあるわけです。
ちなみに、前出の二代目経営者は、販売強化ではなく、業界の慣行ともいえる流通や販売のシステムを根底から覆す必要性を感じ、実行しました。
結果、その会社は息を吹き返した。
営業効率は圧倒的に高まったようです。
二つの問題の共通点は、現在目に見える事実(不登校と売り上げ減少)に直接的に対処できたとしたら、のちにもっと悪い形で問題が押し寄せる可能性が高そうだ、というところにあるように思います。
後継者と先代における関係性の問題もまた同様で、目の前の問題に本質的な原因があるわけではないことのほうが多いと思います。
なぜなら、先代を失った後継者からも、悩みの相談があるからです。
これを対症療法的に、先代を追い出したりしても、たぶん根本的な問題解決には至りにくい。
その本質的な問題として、私が考えていることがあります。
実は、私たち後継者は、自分の行きつく先が見えていないのではないでしょうか。
自分がどうありたいのか、会社がどうなってほしいのか、というイメージがない。
その代わり、これはいやだ、あれもいやだ、という現状を否定する考えは持っている。
行きたくない先は知っているけど、行きたい先がわからない。
そんな状態があるのではないでしょうか。
行きたい先がわからないのは、原因があります。
自分の本心をよく知らないからです。
一度、気をつけて自分の内面を観察してみてください。
自分の判断は、痛みから逃げる判断ばかりではないのか?ということに。
たぶん、思考の99%くらいはこんな感じではないですか?
・これをやらなければ収入が減るからやらなければならない
・これをやらなければ誰かから叱られるからやらなければならない
・こうしなければ周囲から批判されるから、そうしなければならない
・こうしなければ恥をかくから、やらなければならない
ほかにはこんなものもあります。
・こうすれば誰かから褒められるからやろう
・こうすれば賞をもらえるからやろう
・こうすれば自慢できるからやろう
これは、判断基準を他人にゆだねているということです。
こういった、周囲に押し付けられた判断基準を正当化させて、自分の考えだと思い込んでいるのです。
そうしているほうが安全かのように見えるので、何十年もそういう判断をしてきています。
だからすぐに変えることは難しいかもしれません。
しかし、こういった考えをとらえて、「本当に自分のやりたいことか?」という癖をつけるとだんだんと本心に気付き始めます。
本心が見えてくると、実は目の前に邪魔をする人が出てきても、意外と気にならないものです。
むしろ闘志がわいてくるかもしれません(笑)
後継者がつまづきがちなポイント。
それは、他人の価値観で物事を判断していることが原因にあるのではないでしょうか。
先代や古参社員の反発が障害に感じることは、あくまで引き金です。
私も道半ばではありますが、自分の本心を探り始めると、これまでの自分が滑稽に見えるかもしれませんよ?
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