後継者

後継者が身につけたい危機察知能力 事業承継における変化の起爆剤は何か?

ある冬の朝。
その会社の本社工場の前には、どこか物々しい空気が流れていました。
少し離れてその会社を取り囲むように、スーツ姿の男が何人か立っており会社の様子をうかがっているのです。
何事かと、その会社の常務を訪ねたところ大きな事件が起こっていたのです。


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その企業は、私どもの保険のお客様でした。
コーヒー貿易商社を営んでおり、社員数は30名ほどだったでしょうか。
海外からコーヒー豆を輸入・焙煎し、喫茶店にそれを卸していました。
今でこそ、喫茶店はカフェと名前を変えて大きな市場となっていますが、その当時はまだスタバが日本ではなかった時代です。

当時の喫茶店といえば、まさに斜陽産業で、個人経営のお店が一つ、また一つと潰れていく状況でした。

会社の創業者は、すでに会長に退き、実質的にはその事業にはほとんどノータッチです。
後継者として、ご子息が常務として会社を切り盛りしていました。
このご子息、財務にはめっぽう強いのですが、ご本人は営業については門外漢、とその役割を営業課長に丸投げしていたようです。
一方、営業課長の方は、ご自分でもおっしゃっていましたが、まさにサラリーマン課長。
決められたこと、指示されたことは一生懸命やるものの、何か新しいアイデアを社内に持ち込むようなことはされませんでした。
むしろ、そういうアイデアを出すことは、リスクと考えておられたのかもしれません。

結果、どんなに営業担当者が頑張っても、売上はじりじりと落ちていきます。
それもそのはずです。
主要な顧客である喫茶店が毎年、閉店していくのですから。

 

そんな状況を憂いて、営業課長から相談は何度かありました。
特に、喫茶店への納入は、値段競争が激しく、利益の確保が難しいという事ですから、
顧客を変える意味でも、ギフト用のコーヒーのてこ入れ、WEBでの販売などを進言したこともありました。
特に、焙煎技術には自信をもっていらしたので、徹底的に手間をかけた値段が相場の5倍、10倍する商品を数量限定で作ってみては?
等というお話もさせて頂いたこともあります。

その時の営業課長の反応は、下をうつむきながら、
「うーーーん」
と考え込むような状態。
暫くして顔を上げたときにおっしゃったのはこんな言葉でした。
「変わったこと、リスクのあることはしたくないんだよね。」

 

その数年後、冒頭でおはなしした、”ある朝”がやってきました。
その会社は破たんし、その会社の社員達はお客様へのあいさつに伺うところでした。
周囲を取り囲むスーツ姿の男たちは、同業他社です。
破たんした会社の営業社員の後をつけ、その客先に営業をかけるために後をつけているのです。

実は、その破たん会社の社員のほとんどは、同業他社への再就職が決まっていたそうです。
もちろん、彼らが担当するお客様との関係を新たな就業先へもっていく前提ですから、他社に奪われると、彼らの再就職さえ危ないので必死の攻防です。

 

さて、後継者の役割はいくつかあると思います。
その中でも重要なものの一つが、会社を潰さない、という事でしょう。
残念ながら、本件ではそのことを成就できなかったケースです。

ここで、どんな問題があるのか考えてみます。
私の目から見たときに、気になるのが、下がり続ける売り上げを取り戻すために、変化しなかったことが最も大きな原因ではないかと思っています。
恐らくこれは、現場の社員発信で行われることは少ないでしょう。
その役割を担うのは、やはり後継者なのだと思います。
この企業、今までのやり方をなぞっていて、営業社員の努力だけで売り上げが戻ったでしょうか?
恐らくそれは難しかったか、取り戻した売り上げは一時的だったではないかと思います。

このお話は、もう10年以上前の話です。
しかし、皮肉なことに今の状況を見るとカフェが花盛りです。
スターバックスは、「家でも会社でもない第三の場所」というコンセプトで成功しましたが、もともと喫茶店はそういう場所だったはずです。
結局見せ方だったり、コンセプトの明確さだったり、違いはごくわずかなんだと思います。
そもそも、コンビニカフェまで出てくる昨今の状況を考えると、コーヒーを求める感情は今も昔もあまり変わらないように思います。

スターバックスにはなれないにしても、自社なりの特徴を出すことは、可能だったように思います。
試行錯誤の苦しい時期はあれど、座してすたれていくよりかはましなのかもしれません。

 

この事例に接した当時、私自身、どんよりした気持ちになったのを覚えています。
他人事ではなかったのです。

悲しいかな自分の置かれている状況は、第三者として他人を見ているときのようには見えないものです。
その企業には申し訳ないのですが、彼らの破たんは、私にとって自分を映す鏡のように感じられ、ぞっと背筋が寒くなるのを感じました。
その時に、その状態を感じ取る危険感知センサーをもつことは、後継者にとって重要な能力の一つかもしれません。


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