創業者

見えるものと、見えないもの 事業承継で後継者と創業者の思いが交わらない理由

まずは、この動画を見て頂きたいと思います。

この動画は、白いTシャツチームと、黒いTシャツチームが、ボールを回します。
そして、皆さんにお願いしたいのは、「白いTシャツチームが何度パスを回したか?」を数えて頂きたいのです。

結構難しいので、よーーーく見ていてくださいね。

では、どうぞ。

 

 

見ようとしないものは見えない

いかがでしたか?
答えは、動画の中で出てきましたね。

そこで、さらにお聞きしたいのですが、この動画の中に「不自然なシーンはありませんでしたか?

そう、白と黒のチームが入り乱れる中、ゴリラの着ぐるみを着た人が堂々と中央を歩いてましたね。
わかりましたか?

これを心理学では「選択的注意」というそうです。

人の脳は、あふれかえる情報の中から、自分に必要なものを取り出して認知するという機能があります。
この動画では「白いTシャツチーム」のパスを数える、というミッションがあったため、そこに意識が集中しました。
結果として、黒いゴリラを見落とした形になったわけです。

さて、なぜこのブログでこんなお話をするのでしょうか。
それは、次に明らかにさせて頂きます。

創業者が見えてる世界、後継者が見えてる世界

ここでは結論から申し上げます。

同じ会社の経営に携わり、同じ事象が発生していることを認知していたとしても、
創業者と、後継者、それぞれ見えてる世界が全く違う、という事を言いたいのです。

例えば、ベテランの営業社員が辞める・・・と言い出したとします。
彼は、トップセールスマンであり、創業者は彼を高く評価していました。
しかし、後継者は彼を評価していませんでした。

なぜなら、そのトップセールスマンは、会社の輪を乱す存在だったからです。

彼は、非常に自動車の運転が荒く、営業者で度重なる事故を起こしています。
後継者としては、「今までは、物損で済んでいたからまだいいけど、人を引いてしまったらとんでもない事になる。
と考え、彼から営業者を取り上げる事を考えていました。

しかし、創業者は違いました。
「彼のようなセールスマンから、車を取り上げるなんて、どういう事だ!」
両者は大ゲンカです。

創業者は、短期的なビジョンで物事を決定する傾向が多いように思います。
そうすると、彼を営業から外すことによる売り上げ減少と、起こすか起こさないかわからない将来の事故とを天秤にかけた時、前者にフォーカスした、と言えるでしょう、

後継者は、逆の選択をしたわけです。

この事例、結果として後継者の意見が採用されました。
創業者にとっては、厳しい決断であったでしょうが、私は拍手を送りました。

社員の有用性を考えるフレームワーク

有名な、ジャック・ウェルチが紹介したマトリクスがあります。

これは、社員と企業との関係を考えたものです。
縦軸には、成果。
横軸には、価値観の共有度を置きます。

 

matrix右上のゾーンは、価値観の共有度も高く、成果も出している人。

こういった社員は、今後も大切にしていきたい人立です。

 

右下のゾーンは、価値観の共有はできているが、

成果が出ていない人。

 

このケースについては、「教育」が有効となります。

教育して右上のゾーンに持ち上げてあげたい層です。

 

そして、左下は、価値観も共有できず、成果も出ない。
このゾーンの人は、今の会社に会っていない可能性があるため、
早めに別の職場を探していただくのが、双方のため、という事になります。

問題は、左上のゾーンです。
このゾーンは、成果は出しています。
しかし、価値観が共有できていません。

価値観は、「教育」で変えることはできませんから、頭の痛い問題です。
世代交代の際には、先代についてきた番頭さんなどが、ここにいるケースが多いようです。

こういった視点で、先のトップセールスマンを見た時に、後継者は、「左上のゾーン」と感じたかもしれませんし、創業者は、「右上のゾーン」と感じたかもしれません。
このギャップは深刻です。

より深刻なのは、創業者にとっては、こう考える後継者のものの見方が全く分からないし、逆もまたしかりなのです。

心理背景が全く見えない中、双方で議論を始めると、結局泥沼のケンカになってしまうことがしばしばあります。

左ゾーンの強敵

創業者と後継者の視点はこれだけ違います。
しかし、そのことに気づかなければ、お互いがお互いをどう考えるか。

創業者にとっての後継者は、左下のゾーン、後継者にとっての創業者は、左上のゾーン。
これでは、会社が上手くいくはずもありません。

ところで、ある企業では、左上のゾーンにやはりトップセールスの番頭さんがいました。
その企業の社長は、断腸の思いで、番頭さんに別れを告げました。
番頭さんは、自分の子飼いの営業社員を連れて独立、会社の業績は1/3になったといいます。

しかし、そこで奇跡が起こりました。
残った人たちは、皆、価値観が共有できる仲間です。
いざとなった時の団結力は、すごい力を発揮したそうです。
短期間で売り上げを回復したどころか、毎年安定した増収を果たしているそうです。

信じるか信じないかはあなた次第…
という所ですが、価値観の違いは小競り合いだけでなく、会社の雰囲気や、ポテンシャルをそいでいる可能性が非常に高いと思えます。
そのためには、見ている世界をそろえる必要があります。

冒頭のゴリラが見えなかった人も、意識を変えれば見えるようになったと思います。
会社経営は、目でとらえられるものばかりではないので、少し難しいのですが、決して見る世界をそろえることが不可能というわけではありません。

しかし、見ているものが違う、という事に気づかなければその努力もできないわけです。
ですから、まずは、お互いが何を見ているかに気づき、そこからどう調整していくか、

という話し合いがあって初めてスタートラインに立てるのが、中小企業の事業承継なのではないでしょうか。

 

※この記事でご紹介したマトリクスは後継者がチームメンバーを検討する際に使えるシンプルな考え方でご紹介したものと同じものですが、縦横が逆になっておりますのでご注意ください。


私の著書です。

関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

親の会社を継ぐ技術

親の会社を継ぐ技術

 

 

 

 

 

 

 

 


関連記事

  1. 後継者が仕事で充実感を得るためのロードマップ

  2. 古い業種だからできること

  3. 後継者・二代目経営者にとっての最大の敵とは?

  4. 後継者が知っておきたい「ビジネスモデル」という考え方

  5. 親の会社を継がないのは親不孝?

  6. 後継者が自身の考えを発表する場をつくるための「朝礼」のやり方

  7. 自分はメンタルが弱いと思っている後継者の方へ

  8. 後継者が親の古い会社のテレワーク化を進めるチャンス

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。