後継者

後継者は親の事業を継ごうとしてはいけない!?

自分達が営むビジネスがだんだんと衰退し始めている証を肌感覚でつかむのに私はこんなことを指標に考えています。
自分達の商品・サービスを、売るのが難しくなっていないか?ということです。

たとえば、かつては比較的簡単に売れていた、問い合わせ電話に対応すればそれでそこそこ売り上げが上がっていた。
以前は普通におススメすれば売れていたが、最近はかなりのセールステクニックがないと売れにくい。
値引き交渉などほとんどなかったが、最近は相見積もりやライバル社に顧客を取られることが増えた。
利益率がかつては高かったけど、今はかなり下がってきている。

これは自社の衰退の証かもしれませんが、そもそも業界全体の衰退の証と言える可能性もあります。
親の代で一世を風靡したビジネスも、後継者の代ではすでに衰退を始めていることがあります。
こういったときに「親の事業」を継ごうと思って後継者になると、とんでもない貧乏くじになってしまうこともあるのではないでしょうか。

 

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三代で資産を食いつぶす?

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

二代目、三代目が愚かでなくとも衰退する?

良く世間では、初代が作った資産を三代目あたりで食いつぶしてしまう、なんていうことが言われます。これは、その人の優劣やリーダーとしての器といったことがよく論じられますが、私は必ずしもそうとは言い切れないと思っています。まず、初代はある意味捨て身の攻撃です。捨てるもの、失うものは何もないというか、それを監視されることもないのでとても自由です。そういった中で、自分の持ち味、自分の得意な分野を活かして、リーダーとして名をはせるような活躍をしてきたと思います。しかし、二代目はどうでしょうか。まず、初代が作ったものを守る、という義務を負うような思いにとらわれます。そして本来、守りだけではなく攻め(ビジネスでいうと新分野の開拓)が必要なのですが、それが思うようにいかないことが多い。それはなぜかというと、守りながら攻めようとするからです。

映画を見ているとそのことがよくわかります。ヒーローは一人で戦えば強いのですが、人質を救い出し、人質の盾となって戦うと傷だらけになります。二代目の落ちりがちなパターンはそういったシーンに象徴されるような状況だと思います。さらに三代目あたりになると、こんどは時代、社会がかわります。場面、背景が変わるのです。これを映画で例えると、SF映画に迷い込んだ西部劇の主人公といった風情でしょうか。最新のレーザー武器を手にするSFの世界で、古臭い銃では太刀打ちできません。そうやってだいたい三代目で会社が衰退してく。

こうなる理由は、二代目、三代目といった後継者の器とか、能力の問題というより、「親から預かった事業を守る」といった事業承継の誤解が引き起こす悲劇なのではないか、と私は考えています。

大事なのは事業承継をどうとらえるか

一度機会があれば、二代目、三代目の経営者が出版された本を、集中的に読んでみていただきたいと思います。彼らの多くは成功者ではあるのですが、多くの場合、ストーリーは似通っています。親の会社を継いだものの、親との確執がおこり、社員の反発があり、それでも前に進んでいきました。結果として会社は大きくなった。それはすべて、親が残してくれた会社や社員のおかげです、と。私は親の想いを遂げるためにここまで頑張ってきました、と。

多少の幅はあれど、概ねこんな感じのストーリーではないかと思います。彼らの共通点はまず、けっこう大きな社内改革を行ったことです。先代も社員もそっぽを向いてしまうようなとんでもない改革を行っています。そして、よくビフォーアフターを見てみると、同じ業種のままかもしれませんが提供している商品やサービスの質が、マイナーチェンジレベルではないくらいの変化をしていることが多いのではないでしょうか。もちろん場合によっては新規事業を立ち上げたケースもありますが、今までの事業をかなりブラッシュアップしているはずです。それがまずは、会社の成功要因だと思います。

一方これは深読みかもしれませんが、なんとなく私から見るとみなさん相変わらず心理的にはどこか苦しい部分を残しているように思います。そう思う理由は「親のために頑張ってきた」という言葉が割とよく出てくるところです。自分のためではないんですね。なんだかこんなに頑張って、「自分自身」が報われているのだろうか、と他人事ながら心配になってしまいます。
私自身がよく聞く話は、親は「自分達はこうやって苦労してきたんだから、後継者であるお前たちも苦労するべきである」といったお話です。社長たるもの、あんな苦しみもあり、こんな苦しみもあり、こんな大変な思いをして会社を育ててきたのだから、お前もそうすべきである。そういった話を真に受けてしまう傾向が強いのではないかと思います。それでは後継者はやっぱり貧乏くじじゃないの?と思ってしまう私は、ちょっとひねくれすぎでしょうか(苦笑)

色んな二代目、三代目経営者の著した本を読んで私が感じ取ったことは以下の二つ。
ビジネスの発展のためには変化が必要、
ビジネスがうまくいっても「親のため」という自己犠牲感は抜けない、
ということでした。

事業を継ぐというよりも・・・

Free-PhotosによるPixabayからの画像

「親のため」は見直そう

まずいきなり私の私見を申し上げます。事業承継において、後継者の方はよく「親のため」とかいう方が多いです。けどこの考え、捨てたほうがいいと思っています。事業の登場人物は、自分や会社があり、顧客があり、仕入れ先やその他関係先があるわけですが、そこに「親」という登場人物が登場するのは意味不明です。親のために働く後継者って、古い日本の価値観だと美しく見えるかもしれませんが、それで顧客を喜ばせることはできません。仕入れ先やその他関係先も、親との関係がよかろうが悪かろうが、自分たちのビジネスが健全に行えることができればそれでOKなのです。親子関係がどう乗って、誰得?なわけです。そんなことは、見えないところでやってくれ、というのが本音でしょう。

だから、私は親を尊敬するのは勝手ですが、親のために仕事をするとか、親のために会社を経営するとかは辞めたほうがいいと思っています。もちろん、事業を創業したとか、ここまで育ててきた功労者としてたたえることは会社の歴史を尊重することですから必要なことではあると思います。しかし、彼らは基本もう手にバトンはもっていない人です。今の時代はバトンを持った自分が、思うようにビジネスを展開するべき時であることがとても大事です。親のためにやる仕事というより、顧客とか、社会のためにやるビジネスであるべきだと私は思っています。そこの区別はしっかりつけたほうがいいのではないでしょうか。

ということはつまり、こうすれば親は悲しむだろうな、というのはとりあえずは脇へやる必要があります。これは究極のシーンにおいては、親が悲しもうとも会社をたたまなければならないときはあるでしょうし、そういった判断を「親のため」に曇らせないような注意が必要だと私は思っています。

見習うべきは

会社を切り盛りしてきた先輩として親を見たとき、私はもっとも見習うべきことはその起業家精神だと思います。特に創業社長の場合、創業当初は比較的安定した立場をなげうって、お金を集めて新たな世界にチャレンジしたわけです。その当時は恐らく周囲の反対を受けたり、誰もついてきてくれなかったり、周囲の理解を得られない苦しみや孤独があったんじゃないかと思います。それでも、もうこの道しかない、と退路を断って企業という道に飛び込みました。実はそのシチュエーションは後継者のシチュエーションにも結構似ています。そもそも、親の会社に入るという時点で、その仕事を辞めるのはとても難しいことは明白です。ある意味、退路を断って進んだ道なわけです。しかも、きっと後継者という立場は、社員からも浮いている事でしょう。やろとすることはことごとく反対されるでしょう。これも、創業者と同じシチュエーションじゃないでしょうか。

つまり、私たちの置かれている立場は、起業家とさして変わらない環境にあります。けど、そこには親が作った事業という人質がいて、この事業を守ろうとするから起業家としての能力が発揮しづらくなっています。ここに対処すれば、私たち後継者の未来も明るく見えるかもしれませんね。

後継者にとっての保険

後継者と起業家には決定的な違いがあります。それは起業家はゼロ、あるいはマイナスからのスタートです。しかし私たち後継者は、すでに収入の糧となるビジネスがあります。このビジネスが糧でもあり、人質でもあるわけですが、ここを回す人がいればけっこう都合がよいんじゃないかと思うのです。旧来のビジネスを誰かに回してもらい、日銭を稼ぎつつ、自分は次のビジネスに全力投球する。こういう流れができれば、最強のように思うのですがいかがでしょうか。そうすることで、親には旧来の事業を守ってもらう。きっと親は年齢的なこともあって保守的になっているはずです。だから守りは大得意。その守りの守備を引きはがそうとするのではなく、徹底的に守りとして活躍の場を作っておけば双方ハッピーということもあり得るのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

ある人が、「親子の事業承継とは、子が画策する好意的な会社の乗っ取りである」という表現をされるのをどこかで見かけました。上手いことを言うなぁと思ってみていました。乗っ取りという感覚とは少し違いますが、私もその言葉の中に含まれる、子が主導する会社の変革というイメージは大事だと思います。事業承継は、親にしたがうことから始まるのではなく、子が突き上げる形で行う必要があるような気がします。その際に、守りの親と攻めの子という構図が出来上がれば、一つの理想形ではないかと思うのです。

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