後継者

売上を生む年賀状、売上を生まない年賀状

あなたの手元にも、沢山の年賀状が届いていると思います。
この年賀状、どうしていますか?
もう10年以上前の話になりますが、私は先代に「年賀状を送るのは、もうやめてしまおう!」と提案しました。
この時には、ご想像の通りひと悶着あったわけですが、なぜ私は年賀状をやめようと考えたのか。
また、その考えは結果として社内で受け入れられたのか。
先代を説得するコツはこんな事例の中からも見て取れるかもしれません。


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沢山の方々からいただいた年賀状

毎年、年初の行事といえば、大量に届く年賀状に一つ一つ目を通すこと。
当社も、いっときほどではないにせよ、たくさんの年賀状をいただきます。

自筆のメッセージを書いていただいた方の年賀状は、やはりいいものですね。
たとえ一行のメッセージだったとしても、それを読むとその方を思い出し、笑みが浮かぶこともあります。
一方で、ただ印刷されただけの年賀状は、どなたから来たかを確認するだけで、印刷された文字を読み込むことはあまりありません。

これは、逆の立場でもきっとそうでしょう。
私どもは、1000枚単位で年賀状を印刷・送付していましたが、殆どのお客様は
「ああ、来てたね。」
という程度の認識しかないのではないか、と考えたのです。
そもそも、来てなかったとしても気づきさえしないのではないでしょうか。

年賀はがきは1枚52円とすれば、1000枚出せば52,000円。
2000枚出せば10万円を超えるコストです。
もし、お客様が楽しみにしていただいているとすれば、その程度の投資は安いものです。
しかし、お客様から見て私たちからの年賀状を楽しみにしてることなんてあるのだろうか?と疑問に思ったわけです。
価値のないものであれば、5万であれ、10万円であれ、もったいない話です。

 

そこで、私は年賀状の出状をやめようという提案を、社内で行いました。
もちろん、先代は「年始のご挨拶を欠くことなど、まかりならん!」という考えです。
経理で働いていた母親もまた、大反対。

 

今でこそ、年賀状の重要度は低くなってきていますが、こういった話をしていたのはもう10年以上も前の話です。
当時の状況を考えれば、先代や母の反応は、もっともだと思います。
ただ、お客様に求められていないものだとすれば、それを惰性で送り続ける事に意味があるのか?
もっと価値あるものにできないのか?
私はそんなふうに考えていたのです。
しかし、長年社内の常識として送られてきた年賀状をやめる事には、それなりに勇気がいります。
私の提案は、先代にはお客様をないがしろにする私の資質の問題とさえ考えたかもしれません。

理由を何度説明しても、周囲の人間にはなかなか理解してもらうことはできなかったのです。

 

そこで一計を講じました。
お客様に尋ねたのです。アンケートという形で。

回答項目は
①従来通りの年賀はがきを望まれますか?
②年賀はがきは不要だが、紙での情報提供を望まれますか?
③何も送ってほしくないですか?
という三択。

 

結果は、圧倒的多数で②を希望される方が多かったのです。
その結果をもって、再度先代と話し合い、年賀状は取りやめにして会報誌のような物を年始に送ることにしました。
かかるコストは倍以上。
紙一枚を送るはがきとは違い、封筒や紙面の印刷などの費用が切手代に加算されるのですから、結構なコストアップです。
しかし、お互いが価値を感じられない事をするくらいなら、多少コストアップしてもお互いが求める価値を満たせるものにしたかったのです。

 

実は、年賀状のシーズンというのは、「年賀状」という理由があるのでメッセージを送りやすいわけですが、お客様のもとには私たち以外の業者からもたくさんのメッセージが届きます。
私たちのメッセージや気持ちをお客様に届けるという目的からすると、競争率の高いタイミングなわけです。
言いかえると、ほかの年賀状に埋もれてしまう、ということです。
ですから、年賀のシーズンとはずらして何かしらのご挨拶を、と当初は考えていましたがそこを先代は譲りませんでしたので、結果として年賀のタイミングでお送りはするものの、はがきではなく、お客様に有益な情報と封書で送る今の形ができました。

多少の譲歩はあれど、当初の目的であった「年賀はがきを惰性で送る」という事からの変化を促すことができました。
後継者である私が先代に、どういおうと動かなかったものが、「お客様の生の声」で動き始めたという事例です。
先代と話をする際、自分以外の誰かの言葉を活用すると、時に上手く行くこともあるようです。

 

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年賀の情報誌の情報について、FAX,郵送、電話でたくさんのお問い合わせをいただいています。

年賀状の話に戻ります。
ご紹介したような試みを始めて10年以上たちますが、そのことでお客様からクレームを頂いたことは一度もありません。
しかも、当社で取扱しているサービスのご案内も同封したところ、お正月明けには問い合わせのFAXが複数来ており、今も電話問い合わせなどをたくさんいただいています。
提供する情報の内容にもよりますが、お陰さまで年始早々フル稼働で仕事につながっている状況があります。
わざわざお問い合わせのFAXを頂けるという事は、お客様に価値を感じて頂けた結果だと思います。
そして私たちもまた、相応のコストと手間をかけて送った結果、サービスの販売に繋がります。
結果、誰もが良い状態がここにできたわけです。

 

まぁ、たかが年賀状を送るか送らないかの小さな話です。
しかし、そんなところにも世代間で小さな対立が起こります。
そんなときの解決策の一つとして、「お客様が何を望んでいるか?」という事の証拠を目の前に出す、というのは一つの方法だと思います。
口頭では伝わらない現実が、アンケートの紙を通して先代に伝わることもあります。

先代とのスムーズな意見調整のヒントになれば幸いです。

 

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