なにか問題が起きると、普通、その問題に対処しようとします。
たとえば、後継者にとって「親」が自分の思いと違う方向へ会社を誘おうとしたとします。
後継者はきっと「親」をコントロールしようとするでしょう。
そしてケンカになり、上手く物事が動かない。
こういった場合、少し回り道をする必要があるのです。
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Contents
ある会合で検討された問題
問題の原因は一つではなかった!?
先日たまたまある会合に呼ばれました。
それは業界団体の運営に関する会議で、一つの問題を解決しようとするものでした。
それは、運営側からの案内メールにたいして、団体メーンバーが適切な反応をしてくれない、
あるいはそもそも、そのメールを見ていない、という問題でした。
そこでその会合では、「メールに変わるツールを探そう」ということがテーマになりました。
無視できない「ツール」はないか?というテーマです。
しかし、決して無視できず、反応せざるを得ないツールと言えば思い浮かぶのは、「電話とFAX」です。
よくよく考えてみれば、相手の都合を無視し、決してシカトできない組み合わせとしては最強です。
だから、こういった問題を道具で解消しようとするなら、電話と、自働で電話をかけてくれる装置やサービス、ということになりそうです。
ただ、それが根本的な解決とはいいがたい一面があります。
そもそもその団体としては、単なる連絡手段をどうするかというより、会員におけるマインドシェア(言ってみれば気持ちの中での優先順位)をあげてもらいたい、という裏テーマもあります。
この問題は道具の問題に見えたのですが、実はコミュニケーションの問題だったのです。
優先順位を上げるためには・・・?
そういった場合に、会員のマインドシェアを上げる方法はいくつかあります。
・参加させる
・気軽なコミュニケーションが存在しやすい
・誰もが発言できる(発言に対してリスクを負わない)
などいろいろな条件を満たす必要があります。
また、メールに反応しない人が多いことで何が問題か?を考えていくと、
その問題が起こらないような運営に変更することで対症療法は可能になります。
たとえば、1年ごとの会員継続の意思確認ができないなら、自動更新にしてしまえばいい。
そして会費の引き落としを口座やクレジットカードにしてしまうことで、その問題は気にならなくなります。
そうなると、もはやツールの問題というよりも、その会そのもののあり方の問題となってきます。
一委員会というより、運営理事や理事長マターになる話です。
その会合は、結局はツールの問題から、会の運営規約の見直しというところに議論が飛びました。
後継者の前に立ちはだかる問題
後継者と親の確執の元
後継者と親が確執を起こしがちなのは多くの人が知るところです。
これは、見えやすい部分でいうと考え方の違い、方針の違い、ということになります。
一般的には、それを解決するには、話し合いが求められます。
しかし残念ながら、親子は話し合おうとすればケンカになります。
話し合いは、親子の確執を深めてしまうのです。
ここに、前章でお話ししたような「問題のすり替え」が起こっている可能性が考えられます。
普通の話し合いは、お互いがそれぞれの意見を主張し、双方の妥協点を探ることで着地点を見出すのが一般的でしょう。
しかし、親子の話し合いは、どちらかというと「相手を説き伏せること」になっています。
エリック・バーカーの『残酷すぎる成功法則』にはこんな話が掲載されています。
誰かが何かに関していらだっていて、あなたが彼らの信じていることに対する反証を挙げているとき、彼らの脳のMRI画像はどんな反応を示すだろう?脳の論理性を司る部位は文字通りシャットダウンする。かわりに攻撃性にかかわる部位が活性化する。
論理的な思考を閉ざして、攻撃脳になるわけです。
これでは、親子の確執は激しさを増します。
なぜ間違ったアドバイスが「常識」とおもわれているのか?
話し合いは、親子の確執を深める。
そんな経験を私たちはしてるはずなのに、なぜか誰もが「話し合いをすべき」といいます。
その答えは、ローラ・クレイとリチャード・ゴンザレスの実験に見つけられそうです。
学生たちに卒業後の進路についての調査を取った。
「あなたはどちらを選びますか?」
A:ずっと準備をしてきた堅実な仕事。はじめは大変だが、将来的には高収入と社会的地位が約束されている。
B:ずっと興味を持ち続けていた型破りな仕事。収入や社会的地位は期待できないが、充実感がある。自分のことの場合、66%の学生がBと答えた。
一方、親友にアドバイスするならどちらをすすめるか?
と尋ねると、83%の学生がBと答えた。
つまり、他人へのアドバイスは「いかにも道徳的」な方向へ偏りがちです。
すこし厳しい言葉をつかうなら、他人のアドバイスは「無責任」なのです。
そこに正しさを求めると痛い目にあうのは、自分自身でしかありえません。
親子の確執の根底にある原因
親の「意見」ではなく「親」が許せない
後継者自身、気が付いているかどうかはわかりませんが、親子の確執においては親の意見が許せないのではありません。
後継者本人は「意見」を攻撃しているつもりですが、そもそも親のふるまいが気に入らないのです。
その振る舞いというのは何かというと、
後継者を尊重しない
ということ一点に尽きます。
引退を表明してなお口をはさむ親は、後継者にしてみれば
後継者をバカにした行為
であり、
後継者がダメ息子・ダメ娘である
と言っているように無意識部分で感じ取ってしまいます。
もちろん、親がそういった意識を持っているとは言いませんが、感じるものは仕方がない。
後継者は本当は、自分の意見を押し通したいのではなく、自分を後継者として尊重してほしいのです。
後継者が余裕を取り戻す方法
そんな後継者がいつもストレスを感じている原因は、「自分は後継者として無能である」という思いを心の奥底にもっているからです。
そしてそう感じるのは、周囲の人から断絶されている、と感じるからです。
社員とも、社外の人とも、親とも、意見を酌み交わすことができない孤独の中にあるから、常に周囲に自分を大きく見せようと頑張っているのです。
ムリして仮面をつけているわけです。
これを外す最もシンプルな方法は、周囲の人間に受け入れてもらうことです。
そして、受け入れてもらうための最も確実な方法は、後継者自身が周囲の人間をまずは受け入れること。
そして受け入れることを可能にするのは、後継者が周囲の人たちの言葉に耳を傾けている、ということを当事者に感じてもらうことです。
これさえできれば、事実は変わらなくとも、後継者が知覚する世界は変わります。
そして後継者が知覚する世界が変わると、面白いことに周囲の人も変わっていきます。
後継者が経営者になる過程でやることは、実はこれだけなんじゃないかと思うのです。
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