私が30歳代のころ、ある経営者の集まる勉強会に参加したことがありました。
その時に驚いたのは、「企業の社会貢献」について真剣に話し合っているのです。
しかし、私から見た彼らの姿勢は、「やらなければいけないもの」というやらされ感満載だったことを記憶しています。
そんな思いまでして社会貢献を考えなければならないものなのでしょうか?
私の著書です。
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私がまだ会社の専務という立場だったころ、地元の経営者団体に加入し、少し勉強させていただいていました。
その折に出たテーマが企業の社会貢献。
当時の私にとって、ビジネスと社会貢献なんて、到底関連性を見出すこともできず、
「この人たちは何を言っているのだろう?」
と首をかしげたのを思い出します。
基調講演を終えて、小集団での意見交換を行った際も、
「やらなきゃいけないのはわかってるけどなかなか・・・」
「ウチでは、近所の清掃をしている。」
「そもそも、地域の雇用を生み出している事こそが社会貢献だ。」
と意見は様々です。
何人に話を聴いてみても、私の違和感はどうもぬぐう事ができません。
そもそも、ボランティアというのは進んでやることに価値があるのではないか?と思っていましたので、義務でやるというのもおかしな話にしか感じられません。
その後も、様々なシーンで企業の社会貢献といったテーマの議論を耳にすると、益々違和感を強めていったのを記憶しています。
当時の私のスタンスとしては、取ってつけたように特別なことをしない、というものです。
そもそも、社会貢献などというものは、本気になってやるべきものだと思います。
その時の私にとっては、社会貢献に関心を寄せている暇があるなら、きちんと会社を経営することのほうが大事だと感じていたので、もはや異次元の話です。
たとえば、大企業においても様々な社会貢献活動をやっているのを見かけます。
しかし、その多くの企業は「本業のビジネスにつなげたい」「イメージアップを図りたい」という事が透けて見えるのです。
それでも、結果として世の中が良くなるなら、それも価値のある事だとは思います。
とはいえ、自分はそんな白々しいことはやりたくない。本気で社会貢献を考えられるようになった時に、ちゃんと考えようと思った事を記憶しています。
そんな折、あるボランティア団体の事務局の方と話をする機会がありました。
その方は、こうおっしゃいます。
「例えば大きな震災などがあると、確かに寄付はたくさん集まります。しかし、それも時間がたつと潮が引くようになくなってしまいます。あるタイミングで高額な寄付を頂けるのは、それはそれでありがたいことですが、たとえわずかでも継続的にサポートいただけることが一番の助けになります。」
また、別の観点で考えさせられることがありました。
それは、社員のモチベーションについてです。
社内で社員にアンケートを取ったことがあります。その内容は、「仕事をしていて最もうれしい瞬間」についてです。
その結果は、版を押したように皆同じことを書いていました。
「ありがとうと言われたとき。」
という事です。
社員のモチベーションを上げるシンプルな方法は、周囲から感謝頂ける機会を増やすという事になるのだろう、と私なりに考えました。
数年間私の頭の中には、この三つの命題がぐるぐると回っていました。
企業はどうやら社会貢献をしなくてはならないらしい。
社会貢献は継続的に行う事が大事らしい。
社員のモチベーションは感謝を受けたときに最大化するらしい。
この三つがかみ合ったときに出た結論は、
事業そのものがどの様に社会に貢献しえるか
を社内に周知することだと感じました。
ところで、私が携わっている保険という仕事。
その普及を進めることは、社会に貢献する事業であるはずです。
しかし、現場においては、なかなかそういった意識になりにくい。
なぜなら、そこにあるのは、
保険の普及に貢献する事にコミットしているわけではなく、数字にコミットしている
という状態だからではないかと考えたのです。
経営者として数字にコミットするのは重要なことです。
しかし、数字のために仕事をすることと、実現したい社会のために必要な数字を売り上げることは似て非なるものです。
少しわかりにくいでしょうか?
たとえば、スティーブ・ジョブズは「世界を変える事」を目指してその手段の一つとしてiPhoneを開発しました。
決して、iPhoneを作るために仕事をしたわけではないようです。
つまり、私たちが今持っている商品やサービスは自分たちの会社の社会的責任を全うするための手段でしかない、という事のようです。
すると、保険を普及させる先に、人々の輝かしい未来があるという事ではなく、
輝かしい未来を実現するための手段に保険がある、という考え方へのシフトが必要となってきそうです。
では、私たちが目指す未来とはどんな未来でしょうか?
色々と考えた結果、お客様は保険が欲しくて買っているわけではない事に気付きます。
保険というものが役立つのは、何かしらのトラブルが起こることが前提です。
しかし、本当に望んでいる世界は、そういったトラブルがそもそも起こらない状態です。
この会社をそこにコミットさせていこう、そう考えました。
このパラダイムシフトは、社内にも様々な波紋を起こしています(現在進行形・・・笑)
それでも進めていく価値は、強く感じますし、若い社員ほどその考えを理解し始めてくれているのではないかと思っています。
今では、社会貢献を企業で行うとすれば、それが本業のビジネスの中に組み込まれていなければ難しいのではないかと思い始めています。
会社の事業とは別に社会貢献を考えるというよりも、事業そのものが社会に貢献する方向性を作る。
そうすることで、社会への貢献を継続的に、精一杯の力でできるようになり、社員のモチベーションも上がるのではないかと考えています。
そしてそれを文章化したのが、ミッションや理念といわれるものでしょう。
ミッションや理念が大事といわれることに自分なりに腹落ちしするには随分と長い年月が必要でした。
これはあくまで私の個人的な考え方です。
皆さんはどう考えておられるでしょうか?
私の著書です。
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