非常識な後継者50の心得

非常識な後継者50の心得(5)先代との人間関係に自分がどう反応しているかを知ろう!

親子での事業承継の中で起こりがちなのが親子の確執。
この時、後継者的には、一方的に先代を攻撃しがちだったり、時には諦めてしまったり、そもそも後継者がその立場を苦痛に感じることになったりします。
後継者として経営のかじ取りをしていかなければならない、というプレッシャーに加えて先代や古参社員との人間関係に悩まされるシーンが非常に多くなります。

後継者の頭の中は、経営のことと人間関係のことがごちゃ混ぜになってネガティブな状態になっていることが多いと思います。
この時に、無理にポジティブになろうと頑張る後継者も多いのですが、時にそれは劇薬です。
ポジティブに向かおうとする強い意志がポキリと折れたとき、一気に心の健康を害することがしばしばあります。

このような状態に陥ったとしたときに、その環境、つまり自分の外側を変えよう、変えよう、としてもたいていうまく行きません。
まず必要なのは、自分の心が現状にどう反応しているかを知ることから始めるべきだ、と私は考えています。

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先代は自分の敵か?

最悪の人間関係

ニューヨーク州立大学ロブ・ケーゲル博士の調査によると、最悪の人間関係というのは「操作的」「支配的」「不公平」「不平等」という関係だそうです。
これは権威的な人間関係とも言えそうです。
これを見たとき、後継者としては親である先代の振る舞いが、まさに当てはまる!と感じる人も多いのではないでしょうか。
こういった権力をかさに着た人間関係を人は嫌うようですが、実は親子関係というのは時としてこのパターンにハマりがちです。

もともと、何も知らない子供が成長する過程で、親は子どもに
・危険に近寄らないように振る舞う
・社会の中で生きていく協調性を育む
説いたことを学ばせるため、あるいは
・親が自分の時間や日常を守るために子どもを従わせる
・親の望んだ子供として育つことを意図する
という形で、少なからず操作的になり、支配的にもなるでしょう。
また、親と子は大人と子どもですから、子どもから見た不公平を親に感じることもあるかもしれませんし、兄弟間の不平等も体感するかもしれません。

皮肉なことに、親子関係の中ではこれらの最悪の人間関係の要素を多分に含んでいますから、元々親子関係というのはとても難しい関係と考えられます。
その証拠に、経営を一緒にしていない普通のサラリーマン家庭でも、親と子がうまく行かないケースはかなり多くあります。

権力への三つの対処法

人がこういった権力によるプレッシャーを感じたとき、基本的には三つの対処法を開始するそうです。
一つ目が、「闘う」。
二つ目が、「逃げる」。
そして三つ目が、「従う」です。

闘うというのは、「反抗」「抵抗」「欺く」「仕返し」などで、事業承継の親子関係で言うなら後継者の先代に対する反抗的な態度がすぐに思い当たります。
逃げるというのは、「逃げ出し」「ひきこもり」「アルコール・ドラッグ」「病気」など。
これは、文字通り逃げる(会社を辞めるとか、その問題から目を逸らすとか)、ひきこもって世間との接触を断つとか、アルコールなどで感覚を麻痺させるとか。病気というのも、心持から起こることが多く、病気を引き起こすことで現実から距離を取ろうとする行為が考えられます。
従うというのは、まさに従順に従うことです。

私が見る限り、案外多いのが「従う」です。
そして、闘うというのもよく見かけますが、ありがちなのは闘いながら逃げるというのが多い印象を受けます。

後継者の行動にあらわれる偏り

さて、この権力への対処は、実は本人はほぼ無意識でやっています。
ですから、その行動は自分の立場上当然であり、正しい、という風に自覚していることがほとんど。
権力への対処として行動しているとは全く気付いていないことがほとんどです。

自分はこう動くべきだ、自分はこう動くのが正しい、という思い込みとともに、闘い、逃げ、従うのです。

そして無意識下の私はその行動が権力への対処として出ていることを、自分の意識に悟らせないため巧妙に「自分の正しさ」を強く意識させようとします。
その結果、先代との話し合いは「正誤問題」になり、どっちかが勝ち、どちらかが負けるまで続く、つまり、負ける人が出るまで争いが続くような状況になってしまいます。

そしてたいてい、こういう状況の後継者は何をやってもうまく行きません。
自分は、「純粋に会社を良くしたいと思ってやる行動」は、実は親の権力から逃れるための行動だった、というのは良くある話です。

「支配の有無」は主観であることも

強制労働所であったとしても…

支配されているかどうか、というのは主観というと、「何を言ってるんだ」と反対意見が出そうです。
ただ、自身がナチスの強制収容所に収監された心理学者ヴィクトール・フランクルは、強制収容所の中でも生きる意味を見つけたと言います。
物理的に支配されている構図はあれど、実は心のありようによっては本当に支配されているとは言えないはずです。

たとえば、〇〇をやりなさいと言われて、「せっかくだから積極的にやってみよう」と考え、行動するならそれは、支配でもなく、従順でもなく、自発的な行動になります。
つまり、支配されている、という後継者が抱きがちな情景は、実は後継者自身の思いがそうさせていると言えます。

どんなに行動を支配されても、心の中まで支配することはできません。
しかし後継者は、行動を支配された時点で心も支配されたかのように思い込むことでより厳しい状況に立たされるのではないでしょうか。

まずは「反応」を察知しよう

さて、いきなり、支配的な状況で支配されていない自分を保とう!といったところで、簡単ではないと思います。
ここではそこまで至らなくとも、まずは、自分の言動が支配に対する闘争か、逃走か、従順か、というどこに分類されるのか、あるいはどこにも分類されないのか、というのをちょっと意識して観察してみてほしいと思います。
自分が動く原動力は何かが徐々にわかるはずです。

どうやるかは、難しく感じる必要はありません。
何かをいったりやったりした後、後味の悪い感じが残るものを中心に、「あの時の行動動機は、闘争?逃走?従順?」と問いかける癖をつければいいだけです。
そして心の奥からの回答や閃きを待ってみます。
すぐに応えは得られなくとも、徐々にわかってくるはずです。
焦らず、けど停滞することなく、試してみて頂ければと思います。

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