人は普通、険しい道があれば、その道を避けて通りやすい道を選ぶでしょう。
明らかな回り道があれば、それを避けて、最短距離をすすもうとするでしょう。
しかしどうも、それではうまく行かないことが多いと感じることはないでしょうか。
親の会社を継ぐ後継者という立場もまた、思ったことを最短距離で実現できるような道を選びたくなるのが人情です。
しかし、どんなに最短距離を目指しても、結局は回り道になっていることは多いと思います。
Contents
親の会社を自分の会社に!という気負い
不安と戦う後継者
私たち、親の会社を継ぐ後継者は、それこそ会社に入社したころにすでに「将来は社長」であることが推測されます。
それは周囲から見れば恵まれた環境かも知れませんが、私たちにとっては相当重い荷物を背負っていることになります。
実際皆さんもそうだと思いますが、入社一年目にして会社全体のことを見て、会社の将来をかなりリアリティを持って考え、その責任を負うわけです。
そりゃあ、不安しかないのは当然のことだと思います。
ところで、こんな研究があります。
日ごろ電車を使う方に、「電車を乗り過ごした」ときのことを思い出してもらったら、「人生最悪の乗り過ごし体験」を思い出すんだそうです。
乗り過ごしたけどギリギリ間に合ったとか、乗り過ごしたけどさほど問題にならなかった日もたくさんあるはずなのに、思い出せるのは最悪の体験。
何が言いたいかというと、人間は悪い状況を浮かべるのがそれだけ得意という事。
不安な中にいる後継者である私たちは、会社と自分の未来をかなり悲観的に設定したうえで、そうならないように頑張ろうと粉骨砕身します。
出来ることなら安全安心な道を通りたい
そんな不安にさいなまれる中で、私たち後継者が考えるのは、「どこかに安心安全な道はないものか?」という事になります。
ある意味守りの考えではあるのですが、後継者が安心安全を確保するには、一番わかりやすいのが社内の「仕組み化」です。そうすることで責任を分散させようと考えます。
今、親である先代社長は何もかも自分で握っています。
会社の手綱をひとりで引いているわけですが、これをある程度分業化しようとか、ある程度システマチックに動かそうとか、そういうことを考えるのが後継者のあるあるです。
そしてそれは、後継者が後継者として会社を率いる「最短距離」となるはずだと考えます。
「最短距離」はだいたい邪魔が入る
後継者が挫折するパターン
私たちはこれが最短距離という思いをもって、社員を教育し、仕組み化、分業化を進める後継者は多いです。
しかしそこで、いろんなことが暗礁に乗り上げ始めます。
後継者が期待するような動きができない従業員。
後継者の思いにそわない動きをする先代社長や古参社員。
後継者が頑張れば頑張るほど社内に蔓延するしらけムード。
まるで私たちがやろうとしていることを意図的に排除するかのような行動をする人がぞくぞくと出てきたり、場合によっては事故などのアクシデントが多発し始めるかもしれません。
反対や抵抗があると、ついついこちらも売り言葉に買い言葉的に、必死の思いで動きを強く早くしようとします。
しかし、社内の印象としては、今ひとつ前に進めない。
自分はこんなに頑張っているのに、頑張れば頑張るほど、社内で孤立していく自分を感じて、後継者はがっくり肩を落とします。
もうここに自分の居場所はないとか、自分に価値はないのかも、なんていう思いにさいなまれ、この場を去りたくなってきます。
押してもダメなら……
不通このような硬直状態に入ったなら、押してもダメなら引いてみるか?といった代案が出てきそうなものです。
しかしここまで追い詰められた後継者の心理状態はかなり偏った状態になっていると言わざるを得ないような環境にあるかもしれません。
ここで、「最短距離を最短時間で突っ切るのは無理そうだ」と考えたなら、別の道をとることもできるのですが、たいていは最短距離をすすみ続けようとします。
そして結局進めずに力尽きる。
なんとももったいない話です。
足りないものを経験する
最短距離が上手く渡れない意味
このように最短距離をすすむことができないとき、リーダーである私たちに何かしら足りないものがある、といえばあなたは反発するでしょうか?
私はそんな状況の時には、誰に何を言われても聞く耳を持ちませんでした。
私は正しい。だから、改めるつもりはいっさいない。というのが私の言い分。
けどそれで膠着状態が続くならば何かを変えなければならないわけです。
今ならば、社員の失敗を赦し、個性を受入れればいいんだ、という事がわかりますが当時はわかりませんでした。
あるいは文字というか言葉ではわかっていても、腹落ちしないから上手くいかない。
面白いもので、こういった上手くいかに時というのは、何かしら自分がレベルアップするタイミングなのです。
たとえば、RPGゲームで言うと、本来は段階を追って弱い敵を倒しながら進むから自分がレベルアップし、ラスボスと戦えるだけの能力を獲得します。
これを、弱い敵を全部避けてラスボスに行っても、ラスボスは倒せないでしょう。
後戻りして鍛えなければならないのです。
急がば回れ
そこで思いつく故事が「急がば回れ」。
これはなかなかの本質をついているような気がします。
焦るときほど、自分の経験値を上げるという、時間のかかることを意識するのが大事なのではないでしょうか。
是非ご検討いただければと思います。