後継者

上司から部下への「報・連・相」

タイトルを見て、「間違いじゃないの!?」と思った方は多いと思います。
「報・連・相」は一般的に、部下から上司に行われる行為です。
しかし、私は、上司から部下への「報・連・相」が割と大事だと思っています。

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報・連・相は上司に行うか?部下に行うか?

上司・部下は関係ない

一般的な、社員研修において、「報連相」と言えば部下が上司に行うもの、というイメージが強いと思います。
しかし、私はこう考えています。
報連相を行う側は、現場の状況を知っているものが見えるものを伝えることが責任です。
一方、報連相を受ける側は、受けた内容を判断したり、次の行動を決定することが責任です。

となると、現場の情報を見知る機会がある人が、見える景色を共有する責任を負っています。
一般的なピラミッド型の組織で考えると、現場の情報を知るのは一般社員です。
それに対して管理者は、現場を知る一般社員を通じて状況を知る流れになっている企業が多いのでしょう。
結果として、報連相は一般社員(部下)が、管理者(上司)に対して行うもの、というイメージが強いのでしょう。

しかし私はこう考えています。
ルーチンな仕事に関しては、それで多くのことが回るでしょう。
その反面、会社の今後のかじ取りや戦略に関して言えば、現場社員には見えないものです。
社長はじめとしたリーダー・マネジメント層が、自分が見ている景色を現場で働く社員に報連相することは意外と大事なのではないかと考えています。

ありがちな「レンガ職人」の話

よく自己啓発書などでイソップ物語の「3人のレンガ職人」の話が引き合いに出されます。
あらすじをお話しすると、こんな感じです。
通行人がレンガを積み上げる職人に「なにをしているのか?」と聞きます。
職人Aは、「レンガ積みをしている」といい、
職人Bは、「壁を作っている」といいます。
そして最後の職人Cは、「歴史に残る大聖堂を作っている」と答えます。

このことから、同じ仕事をしていても、違った認識が存在することがわかります。
そして、多くのリーダーは、自分の会社の社員が職人Aのように、目の前の作業をこなすだけであることに頭を抱えます。
たしかに、自ら職人Cのような高い意識を持ってくれればいいのですが、それができないとしたらどこに原因があるでしょうか?
それは実は、上司から部下への「報・連・相」ができていない可能性はないでしょうか?

立っている場所で見え方は変わる

20cmの身長差で見えるものが違う

身長180センチの男性が、身長160センチの女性と歩いていたとしましょう。
この二人が見ている世界は、同じようでいて違った世界です。
180センチの男性は、170センチの塀があってもその先が見えることがけっこうあります。
一方、160センチの女性からは、当然、塀以外は何も見えません。

男性が、塀の向こうに向けてスマホのカメラを向けました。
何かを一生懸命撮影しています。
女性はそれを目にすることができませんね。
だから男性が何をやっているのか、どんな意図をもってそんなことをしているかわかるはずもありません。
この時に男性が一言、「塀の向こうに素晴らしいオブジェがあるから写真を撮っているんだ」と説明してくれて初めてその行動の意味が分かります。
じゃあ、ということで男性の荷物をもったり、手伝うこともできるかもしれません。
しかし、何をやっているかがわからなければ、手伝いようもないのです。

部下は上司の仕事に手を出せない

先ほどの話はあくまでたとえですが、同じようなことが社内でも起こっていないでしょうか?
たとえば、社長や後継者は「会社をこうしたいんだ!」と思うとしましょう。
そもそもそれさえも伝えていないケースも多いのですが、そう考える背景を全く社員に伝えていないケースは割と多いものです。
状況はこうだから、会社をこういう風にしていきたい。
だからあなたにも、その一助を担ってほしい。
ここまでの話を、部下に理解させている上司は意外と少ないのではないでしょうか。

「それぐらいわかるだろ」と考えている人は多いのですが、残念ながら、部下の方たちは160センチの女性のように、あなたのやりたいことは理解不能なのかもしれません。
そういう意味では、上司から部下への「報・連・相」は想像以上に大事なのだと思います。

社員のモチベーションを上げたいなら・・・

3人のレンガ職人のモチベーション

先ほどお話しした、レンガ職人の話。
仕事へのモチベーションが高いのは、誰でしょうか?

まず職人A「レンガ積み」をしている人にとって、レンガを積むことが仕事そのものです。
一つ、また一つと、単純作業に喜びを見出している人でなければ、おそらく苦行のようなものです。
雇用というシステムの中では、彼は「レンガを積む」時間を売って、給与に変えているわけです。
モチベーションの源泉は、報酬以外に見出しにくいと思いますし、逆に言われたこと以外はしたくないというのが本音でしょう。
「働くのが苦痛」で仕方がない人になってしまうと思います。

そして職人Bの「壁づくり」職人。
これはものを作る喜びは感じられるかもしれませんね。
彼の価値観としては、壁を作ってナンボの世界。

そして職人Cは「大聖堂」を作っているといいます。
大聖堂という長年地球上に残る建造物であったり、そこに集う人たちが口々にその大聖堂への感嘆を表現する姿。
それをイメージして働く中で、レンガ積みはその喜びを見出すための手段にすぎません。
彼の仕事は、人々の喜びの声を引き出すことになるのかもしれません。

モチベーションは人の役に立つと感じられるときに高まる

リーダーにとっては、職人Cのような職人で構成される会社なら、ずいぶんとやりやすい気がします。
となると、リーダーの役割は、職人Aの人を、職人Cに育てることです。
自分でそこまで進化する人もいれば、いない人もいる。
むしろ、そこに行けない人のほうが多いのが現状でしょう。
それを促すのが、リーダーではないかと思います。

経営理念やミッションというのは、本来そのために存在するのだと思います。
そして、職人Aに見えていない世界を見せるのが、上司から部下への「報・連・相」なのではないかと思います。

強すぎるリーダーシップは壁積み職人を量産する

現在、60歳代~70歳代になる中小企業の経営者が考えるリーダーシップはこんな感じではないでしょうか。
自分に情報を集め、自らが判断し、率先して行動することで部下を引っ張ることだ、と。
そもそも世界で最も古い大規模なマネジメントは「軍隊」なのだそうです。
それを参考にして、多くの企業に取り入れられた経緯があるようです。
上司から部下への命令には有無を言わせないことが、リーダーの強さだったと信じられていたのだと思います。

そうすると、壁積み職人といえる職人Aが重用される組織になります。
余計なことを考えずに、言われたことだけを黙々とこなすことが、彼らの仕事です。
しかし、最近のリーダーは、部下に職人Aの姿を求めながら「意見を言わない」と言っている方は意外と多いように見受けられます。
職人Aのように扱いながら、職人Cになれというのですから、結果は明白。
職人Cはその会社から離れていってしまうでしょう。

先代から引き継いだ後継者は、ここに対して何をするか?を考える必要が出てくるケースが多いでしょう。
さて、あなたは職人Aを育てたいか。
あるいは、Bなのか、Cなのか。
親から下位者を引き継ぐ後継者は、そんなことを意識する必要があると思います。
そして、もし職人Cを育てたいとすれば、上司から部下への「報・連・相」は、とても重要な仕事の一つとなるのではないでしょうか。

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