後継者がこれからの会社の戦略を考えよう、といろいろ学ぶ中で恐らくかなり早い段階で耳にするのがSWOT分析ではないでしょうか。
このSWOT分析は、中小企業診断士や、税理士が好んで使うフレームワークの一種ですし、ビジネス書にもよく登場します。
歴史も古く、繰り返し使われているのは、比較的誰でも簡単に使えるシンプルさと、その実効性が認識されているからではあるのでしょう。
しかし、シンプルゆえに活用の誤りも多いようです。
なぜそう思うかというと、私自身やってみてあれ?と思う事が多かったからです。
私の著書です。
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ご存知ない方のために、SWOT分析とはどういうものかを簡単に説明します。
会社の戦略の意思決定の際、今の現状を4つの枠組みで分析します。
- 自社の強み
- 自社の弱み
という内部の要因と、
- 機会
- 脅威
という外部の要因のマスを作って、それぞれ埋めていく形です。
その内容を埋め尽くすと、今、自社が置かれてる立ち位置が浮き彫りになり、どう動くかが明確になりやすい、という事です。
私がはじめてこの言葉を知ったのは、あるコンサルタントによる研修でした。
その後、取引メーカーの社員さんだったり、税理士さんだったり、まあいろんな人から「やってみませんか?」といわれるわけです。
「御社の将来を考えるために、SWOT分析をやってみましょう!」
と誘われて、4つのマスに内容を埋めていきます。
そしてSWOT分析で実績を出したことのない指導者に限って、「強み・弱み」という内部要因のほうから書き出させます。
理由は、書きやすいから、です。
例えばこんな感じです。
自社の強み・・・「地域密着なので、効率が良くお客さんとのパイプは太い」
自社の弱み・・・「地域密着なので、顧客数の広がりが少ない」
そこでコンサルタントは言います。
「強みを伸ばすと同時に、弱みをなくしていきましょう。」
えっ?
って感じですよね。
中小企業の持つ限定的なリソースで、太いパイプのお客さんとの関係は維持・向上させながら、広範囲に多くのお客さんを取り込んでいくというのは至難の業です。
まあ、今のWEBや各種テクノロジーを活用すれば、出来ないわけではないのかもしれませんが、難易度は決して低くはないでしょう。
そんな事を考えるより、中小企業においては、お客さんを絞り込んで強みに集中するのが、一般的なセオリーと私は認識しています。
それでも、その場では、なんとなく納得した気になってしまうんです。
ああ、すごい分析したなぁ、と。
しかし結局、明確な戦略は打ち出されず、ある日はお客さんとのパイプの事を考え、違う日には顧客数を広範囲に広げることを考え、どっちつかずに終わってしまう可能性が高い。
もちろんSWOT分析自体は、これだけ広く使われているので現状の情報整理においては非常に優れた機能があるのは間違いないと思います。
私の個人的な印象ですが、自社の強みや弱みは、絶対的なものではないので想定する競合が明確になっていなければ、内容はブレます。
だから、やるとすれば外部環境から入って、想定する競合をイメージできなければならないでしょう。
そのうえで仕上がったシートのクロス分析(強みと機会、強みと脅威、弱みと機会、弱みと脅威といった掛け合わせで、プロジェクトを進めるか否か、撤退すべきかなどの検討を行う)がなくては状況を紙に書きだしただけで終わったようなものです。
まともなコンサルタントは当然そこまでは指導するはずなのですが、コンサルタントを気取ってSWOT分析を持ち出す人の中にはその真価を知らない人も少なからずいらっしゃる事は気に留めておいたほうが良いと思います。
余計に混乱してしまいますから。
SWOT分析に限らず、ビジネス上の様々なスキルにおいても、重要なのは目的意識だと思います。
知識やスキルの習得はもちろん大事ですし、必要に応じて専門家を利用するのももちろん大事です。
しかし、その手綱を引くのはあなた自身である、という事だけは忘れることなくそういった専門家とのおつきあいが必要だと私は考えています。
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