後継者

「家業に魅力を感じない」後継者にお伝えしたいこと

後継者が家業に魅力を感じない。
後継者が、家業を継がない理由の中で大きな割合を占める回答です。
確かに、先代が数十年かけて育てたビジネスは、当時はのぼり調子だったかもしれませんが、今やすたれかけているジャンル・・・
そんな事も少なくないでしょう。

 あえて、下り坂のビジネスに足を突っ込むより、上り坂の企業のサラリーマンとして生きていく方が良い、という考えも確かに理解できます。
また、何のしがらみもない世界で、良い業界を見つけてそこで起業するという選択肢もあるかもしれません。

ところで、よく、新卒者の就職希望企業のランキングが報道されます。
多くの場合、上位には比較的安定した業績、厚遇の企業の名前が並ぶことが多いようですが、トップ10くらいを眺めていると、その時々に話題の企業がランクインしたりしています。
かつては、こういった企業に就職できれば「勝ち組」と言われたかもしれません。
しかし、残念ながら今や、どんな企業に勤めようと、リスクは避けることができません

 わずか数か月で業界地図が塗り替えられることも、今や珍しい事ではありません。
また、決算上、好業績を出している企業でさえ、その内幕は、リストラのあらしが吹き荒れ、うつ病による休職者が後を絶たないという企業も少なからずあります。

 社内の管理体制の問題で、事故をおこし、屋台骨が揺るがされる企業があったり、戦略のミスから大きくシェアを落とす企業があったりと、大企業に勤めていたとしても安泰とは言えないのが今のご時世です。

 家業に魅力を感じない、という思いの一方で、果たして、このような企業への就職が、魅力的な事かどうなのか、一度立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。

本が出版されました!
関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック




大企業で仕事をすることの醍醐味

私自身は、残念ながら大企業で仕事をした経験はありません。
若いころに、大企業に勤める友人に、よく感じていた羨望のような思いがあったことは確かです。

 だれもが知る大企業に勤めた友人は、社名で仕事をすることができます。
例えば、新規の取引についても、有名企業の名前でアポイントを取る場合、全く無名の中小企業や個人名でのアポイントとは格段の差があるでしょう。
私は、仕事を始めたころ、飛び込み営業をしていたので、それは強く実感しています。

 また、仕事の内容についても、金額の桁が、2つ、3つ違う事が多いようです。
中小企業なら、数百万円の話がせいぜい・・・という状況が、数億円・数十億円単位の取引を扱うことが大企業ではよくあります。
そんな彼らがうらやましく感じられたこともあります。

 こういった大きなビジネスをプロジェクトチームで手掛ける、というと、まさにテレビドラマでも見ているかのような、印象を持ち、自分との差を思い知らせれたことがなかったとは言い切ることはできません。
 大企業といっても、企業によっては自由闊達な雰囲気の中、所定の有給休暇を消化すべく労働組合が目を光らせており、休みはきちんと消化できる。
転勤などはあるものの、家賃補助などの福利厚生制度も充実しているし、住宅ローンなどの審査も通りやすい。
とても魅力的な環境であるように見えてしまうのも無理はありません。

彼らのため息

しかし、そんな彼らも、時としてため息交じりで悩みを吐露するともあります。
大企業ともなると、規律がとても重要になってきます。
小さなことでも、個人の裁量で決定できる内容は限られてきます。
顧客からは、「もっと融通をきかせろ」とにじり寄られても、「自分では決済できない」というい事はよくある話のようです。

 また、自分では正しいと思ったことを、素直に口にできない事もあるようです。大きな組織では、しっかりした指揮命令系統が出来上がっており、その列を乱すことは、非常に大きな問題となる事も少なくないようです。本当は、こうした方がいいのに・・・とおもっても、それを自分の独断でできない事も少なからずあります。

 大企業の方とのメールのやり取りをしていると面白い事があります。
返信があるごとに、メールの共有者が増えていくのです。
それだけ各方面への配慮が必要となるようなのです。
そう考えてみると、自由度は非常に制限される一面がある、と考えられます。

 ある大企業の社員はおっしゃいました。
「年々、給与制度が改定になり、僕らの手取りは減ってきてるんです。だけど、そこに対しては何もできない。確かに、実績を残して、相対的な評価を高める努力はできても、絶対的な金額が減るんで評価が上がっても給与は増えないんですよ(苦笑)」

これは、就職ランキング上位に位置する企業の社員さんの談です。
彼らもまた、苦しい現実があるようです。

家業に魅力を感じなかったとしても…

話を元に戻しましょう。
家業に魅力を感じないから、家業を継がない。
そういう選択ももちろんあります。
むしろ、そういうお気持ちなら、継がない方が幸せだと思います。

 では、あなたは、どこに魅力を感じるのでしょうか?
それは、なにか大好きな分野があって、その仕事をしたい、という事でしょうか?
であれば、そこに向かって努力をされればよいと思います。
恐らくそれが最善の選択でしょう。

 そうではなく、家業ではない安定した企業に勤めたい、という理由だけであれば、大企業だから安定している、と考えるのは早計ではないかと思います。
特に近年は、社会全体の構造が大きく変わっていることを感じます。
例えば、ニンテンドーDSが大ヒットしていたころから、数年でゲームのメインストリームは携帯ゲームにとってかわられました。
ネットにおいても、PCからの検索が、今やスマートフォンからの検索にシフトしています。
テレビは、大型液晶テレビが売れまくった時代はもはや過去の話。

 どの業界においても、大きな変革が起き、その変革についていけなかった企業が、一つ、またひとつとその業界から脱落していきます。
それは、大企業とて例外ではないのです。

 しかも、職業というのは、定年まで働くとすれば、30年、40年、50年といった期間に至ります。
安定のために、好きとはいえない事を朝から晩まで、数十年こなすだけの生活というのも、なんともつらい話です。
企業の大小、安定の度合いも確かに大事でしょうが、何がやりたいのかを明確にしなければ、「こんなはずではなかったのに」という事は必ずと言っていいほど起こるでしょう。

だから、「安定」という選択基準は、一旦、優先順位を落として考えてみてほしいのです。

家業が面白い3つの理由

時代の速い流れの中で、中小企業なら生き残れるか?といえば、決してそんなことはありません。
基礎体力があり、資本力もあり、しかも人材も豊富な大企業が優位な部分が多いのは、事実でしょう。
とはいえ大企業とて、ずっと同じ事業領域でビジネスを続けることは至難の業です。
だから、新たな分野を開拓し、生き残りを図っているわけです。

 実は、中小企業は、大企業に比べてより大きな変化を求められている、と考えられます。
ネガティブに考えると、「ほら、やっぱり家業を継ぐなんて大変なだけじゃないか」といわれそうですが、積極的に家業を継ぐ理由もまた、存在します。

理由その1

経営者の考えに基づいてダイレクトに会社を動かすことができるのが、中小企業です。
大企業ほど、部門間の調整は必要とせず、社内政治に気を取られることなく、リニアに動かせるところが中小企業の良いところでしょう。
自分で、コントロールできるという事は、非常に有利な点ではないでしょうか。

理由その2

自分で会社の変革をすることができる、という事はすなわち、家業を継いでどの分野で生きていくか自分で選択できる、という事になります。

 さすがに、食品メーカーである家業を、金融業に変革するのは難しいかもしれません。しかし、食品の製造開発の中で培った、工場の効率化や、社員のマネジメント。
衛生管理のマネジメントや、販売に関するマーケティング知識。
独自の顧客や品質管理システムを構築している場合は、IT企業として生きていく可能性もありそうです。

 「なんでもあり」とは言いませんが、これまで培った社内のノウハウは、例えば別の業界に持っていった場合、非常に有効なものもあるのではないでしょうか。
長い年月で受け継がれてきたものを、新しい感覚で応用できるのは、後継者ならではのだいご味でしょう。

 そう。

自由を手にすることができるのです。

 この自由を手にするために、起業する人も多数いる事でしょう。
しかし、ゼロからの起業とは違い、今、既にきちんと回るビジネスを持ったうえでの第二創業です。
非常に、いい形で自分のビジネスを構築できる環境、と言えなくはないでしょうか。

理由その3

会社は、恐らく、あなたを求めています。
これは、先代の作った会社の社員が、という意味ではありません。
会社も、いってみれば生き物です。
これまで、ある分野でモノやサービスを生み出し、社会に提供してきたわけです。
つまり、社会に必要とされてきたのが、家業である会社です。

 では、時代が変わったから、ある日突然その会社は役割を終えるのでしょうか?
もちろん、そういう会社もあるかもしれません。
しかし、家業を継ぐかどうかを悩まれている、という事であればご自身で、家業を継ぐべき立場に自分がいる、という自覚があるからでしょう。
そのことは、つまり、会社も、社会も、あなたを求めている、という事のように私には感じられます。

 納得できないかもしれませんが、あなたの親が事業をやっていて、今の業種である、というのは偶然ではないと思います。
あなたがその事業を引き継いで、再び活気ある会社にしていく事は、定めのようなものなのかもしれません。
非常に感覚的な話で恐縮ですが、世の中には偶然というものはない、といいます。
家業を持つうちに生まれたのもまた、必然だったのではないか、と思いますがいかがでしょうか。

 終わりに。

ここまで、家業を継いだ方が良い、といった流れのお話をしてきました。
しかし、最後に少し気持ちを揺るがす発言になるのを、予め謝っておきます。

 正直、家庭内で事業を承継することは、非常に困難を伴う事が多いです。
そして、その悩みや苦しみを真に理解してくれる人は、恐らく周囲にはいないことが多いでしょう。
つまり、非常に孤独な状況が訪れることが予想されます。
社員さんと違う所を見て、先代とも違う視点を持つ必要が出てくることがほとんどです。

会社を良くしようとすればするほど、身近なところからの抵抗が出てくることも少なくありません。
日々学び、抵抗を受け流したり、おさえたりしながら前進しなくてはなりません。
何も考えずに、上手くいく、という事はまずないと知っておくことは必要です。

 そういった覚悟を前提の上で、「やってみよう」と思うなら、一つ一つの問題をクリアするごとに、自身の成長を確認できるやりがいのある事業ではないかと思います。
責任という重圧はありますが、自由なフィールドで活躍してみたいとは思いませんか?

本が出版されました!
関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック



関連記事

  1. 跡継ぎ・後継者・二代目社長はSNSでの自分の強め発言につかれてませんか…

  2. 後継者の経営革新は先代にとってなぜ「気に障る」行為なのか?

  3. 後継者の苦悩 前に進みたいのに進めない

  4. ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(2)

  5. 後継者が先代を思い通りに動かす世間で封印されたスキルとは?

  6. サラリーマンか?家業を継ぐか?親を経営者にもつ子の選択

  7. 親の会社を継ぐ私が親との確執を解消した際の3つのコツ

  8. 後継者は大変な時こそ「笑う」という技術を使いこなそう

コメント

    • 後継者ふーちゃん
    • 2016年 6月 04日 1:47pm

    初めて、拝見しました。

    現在の日本の、特に小規模製造業は業績が年々悪化し

    生き残りをかけて、他の部門へ参入や開発を行いたくても資金が無い等

    問題が山積しています。

    『会社は、恐らく、あなたを求めています。

    これは、先代の作った会社の社員が、という意味ではありません。

    会社も、いってみれば生き物です。』との言葉に、自分を奮い立たせて・・は、大袈裟ですが

    頑張ろうという気持ちになります。

     

      • suncreate_user
      • 2016年 6月 06日 8:59am

      後継者ふーちゃんさん

      コメントありがとうございます。
      何かしらの前向きな刺激となれば幸いです。
      ますますのご活躍を祈念しております。

      田村 薫

    • ss
    • 2017年 1月 07日 6:48pm

    今、自分がまさに同じような状況にあります。肩を押されました。有難うございます。

      • 田村薫
      • 2017年 1月 07日 10:06pm

      ss様
      コメントありがとうございます。
      もし何かしら参考になれば幸いです。
      共に頑張りましょう!