「もう引退する。あとはお前に任せた。」
そういいつつ、実際には第一線を引く気配を見せない創業社長は結構いらっしゃるものです。
これは、別に後継者に配慮をしていないわけでもないようです。
創業者なりの配慮はするものの、口(というより手)を出さずにはいられない。
そんなところのようで、悪意があるわけでもないし、
結果として売り上げが上がれば、それは褒めてもらいたいぐらいの行為だと信じていると思います。
たとえ、それが後継者の意にそぐわないものであったとしても…
双方のギャップ
立場がころころ変わる後継者
例えば、販売会社で創業者が一線を引かない、ということは、
営業の目標管理に口を出し、営業を自分でやろうとするということが多いでしょう。
多くの場合、自分の力で切り開いてきた自負を持つ創業者は、自分で売ることが大事という価値観を持っています。
一方後継者は、組織で売りたいと考えます。
ここには、創業者への尊敬という意味も含まれているかもしれません。
「個人の技量として、創業者と同じことはできない。だから組織で・・・」
というのはよくあるパターンです。
そんな後継者の思いとは裏腹に、個人技量を重視する創業者は、獲物を狩ってきたかのように自分の営業成果を誇示します。
そして、創業者は年齢とともにむらっけが出てきますから、自分がやる気がないときは何も言わず、「どうするんだ?」と迫るのに、
自分の成果が上がり始めると、「社員ども、ついてこい!」と言わんばかりに社員にはっぱをかけます。
創業者の気分次第で、後継者は「責任者」になったり、「創業者の手足」になったりと、何かと忙しい。
だんだんと後継者は、それに嫌気がさし、「いい加減にしてくれ!」となってしまう。
恩着せがましいおせっかい
そんなことを創業者に問い詰めると、多くの場合はこんな答えが返ってくるのではないでしょうか。
「俺は、後方支援をしているんだ」
「お前がちゃんとできないから、やってやってるんだ」
といったところでしょうか。
そうやって、今日も自分の成果を誇示しようとします。
上手くいかなかったときは、後継者の責任になるんですが(苦笑)
もうこんな状態、後継者からすればおせっかい以外の何物でもない。
営業成績と引き換えに、社内のマネジメントを失って迷走し始める会社。
この状態が長く続くと、社員が大量に辞めたりすることもあります。
後継者は、何とか先代の行動を変えたい、と考え始めます。
しかしそれはなかなかうまくいくはずもありません。
先代がそれを変える動機がないからです。
しかも、自分の成果を誇示するのは、創業者の本能です。
過去の記事で何度か詳しく述べていますが、自分の成果を誇示する人間だからこそ、
起業出来て、今も会社が存続しているのですから。
発想の転換
私の体験
実は、私自身、そういった先代の行動が疎ましく感じ、何とか変えられないものか、といろいろ試してみたことがありました。
一生懸命説得し、「わかった」といったんはなるわけです。
しかし、5分後には全く「わかってないじゃないか!」と突っ込みを入れたくなるような言動を始めるのを見て、
私自身がずいぶん荒れた経験もあります。
いい加減にしてくれ、と詰め寄ったり、険悪な状態になったり、
まぁ揺れに揺れました。
しかし、結局、何も変わりませんでした。
どんどん分離していき、社員はさらに混乱し、今から考えると何一つ良いことはなかったように思います。
改めて考えてみると、こういった先代の行動はもはや意識的な行動ではないわけです。
無意識の領域で考える前に、口が、手が動いているのです。
そのことを考えると、残念ながら先代を変えよう、という戦略は最も困難な道筋といえそうです。
逆に言えば、そういう先代の存在を前提に、これからのプランを組み立てていくよりほかはない。
これが私の結論でした。
強制したところで、よい結果が生まれるとも思えなかったので、いっそのこと取り込んでしまおう。
そういった発想の転換もまた、必要なことなのかもしれません。
現在進行形ではあるけれど
その結果、何かが劇的に変わったわけではありません。
ただ一つ、大きな変化を感じたのは、私自身がずいぶん楽になったんです。
自分自身の発想が自由になり、以前より、社内の状況がよく見えるようになった気もします。
「気がする」という程度のものかもしれませんが、あるものをなくそうという戦略から、
それを生かそうという戦略に頭を切り替えた瞬間、今まで疎ましく思えたものが力にも感じられるから不思議です。
変える努力は大事だと思いますが、場合によってはそれを受け入れる、さらにはそれを利用するぐらいのしたたかさを持ってもいいのかもしれませんね。
ところで、悩み多き後継者に向けて、個別相談会の日程を確保しました。
もし、ピンと来たらお気軽にご相談ください。
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