後継者育成においては、大事なものがたくさんあります。
まずは、会社の実務。
自社の商材についてや、業界について、
また、財務や労務。
そして社員との関係。
特に古参社員との関係は、非常に難しいものと思います。
こういった人たちを飛び越えて、社長のイスを目指さなくてはならないのです。
その難しさは、一瞬で理解できるレベルでしょう。
しかし、それだけではないのです。
いえ、これらの事を差し置いても、今の事業承継にはなくてはならないものがあるのではないか?
私はそう思います。
順を追ってみていきましょう。
実務の知識は本当に大事なのか?
「また変なことを言い出したな、そんなこと、当たり前だろう!」
と怒鳴られてしまいそうなタイトルですね。
ただ、私の知人の中で、全く業務知識を知らない状況で家業を継いだ方がいらっしゃいます。
彼は、それまでシステム系の会社にいました。
「そのうち」家業を継ぐかも、なんていう軽い気持ちはあったようですが、
経験とともに、今のシステム会社の仕事が楽しくなってきていたようです。
そんな時、突然、お父様が倒れられたそうです。
お父様は、食品会社の創業社長です。
地元で頑張って、社員も20名を数えるようになった矢先に、脳卒中でなくなってしまいました。
お母様も、事業を引き継ぐことに関しては「そんな大それたこと、とてもではないけどできない」という事で、
長男である彼に白羽の矢が立ちました。
「もどってこないか?」と。
彼はずいぶん悩んだそうですが、責任感の強いおとこですから、会社を背負って立つ覚悟を決めました。
会社を退職して、家業に戻り税理士から今の経営状況を伺います。
すると、返すあてのない借入金が数億円。
彼は愕然としました。
システムエンジニアから、食品工場の社長。
そもそもこの変化だけでも、決して緩やかなものではありません。
しかも、その会社はいつ沈んでもおかしくないような経営状況。
彼は、一念発起しました。
工場長と、何度も何度も話し合いを重ね、
どんどん新しい商品開発に着手します。
彼は、試食品を持ってあちらこちらのスーパーや、食品工場の仕入部に営業に行きました。
なんどか、くじけそうになったこともあるようです。
古参社員からは、「食品のことなどわからないくせに!」と陰口をたたかれながらも、
材料と品質にこだわった製品を開発し続けました。
「安く」を実現しなければ、と進言する番頭をよそ目に、
「良い」ものを提供することだけに注力しました。
結果、彼の商品は認められ、数年後には借入金を全額返済することができたそうです。
彼の場合、創業者である父の突然の死、という事件がありました。
そういった特殊な要素があったことを差し引いたとしても、全く業務知識のない状態から
数年で会社をV字回復させました。
もちろん、彼は夜寝る間も惜しんで、食品に関する勉強はしていました。
とはいえ、後継者として必要な教育のうち、業務知識などは優先順位が高く見えて、
実はそうでもない、という事だと私は感じています。
人間関係の優先順位は?
後から入ってきた「エース(候補)」は、とかく疎まれがちです。
若く、経験も十分でない後継者が、
業界での経験も、年齢も重ねた番頭格の社員との関係で悩むことも少なくありません。
良くある話ですが、創業当初、創業者はそういった番頭格の社員と家族ぐるみの付き合いをしていた方も多いようです。
後継者を前にして、
「お前のおむつを替えたことも・・・」
なんていう話が出る企業もあるかもしれませんね。
そういった番頭格の社員からすれば、後継者は子供同然です。
自分の経験を凌駕する存在と感じるケースは、おそらくまれでしょう。
仮に、番頭を脅かすほどの職業技術や知識を持っていたとしても、「机上の空論」などと言って、一笑に付されることも多いのではないでしょうか。
年齢を重ねた中小企業には、一種の閉鎖的な空気が流れていることもあります。
新しい風を受け入れられない風土があることもしばしばでしょう。
こういった中で、現時点での中核を担う社員との関係は、決して小さな問題ではありません。
創業社長の影響力が強い時期はさほどそういったネガティブな面が出なくても、
創業社長の影響力が消えたころにはそういった問題が表面化することがあります。
ところで、代替わりのタイミングで、社員の離合はよくある話です。
こういった環境に嫌気がさして、後継者が自分のためのチームをつくるというケースもあります。
一時的に、会社は苦境を経験するかもしれませんが、それが原因で、会社が良くなるケースも非常に多いのです。
さて、こういった人の問題は、一朝一夕で解決することは難しいのですが、一つやっていただきたいことがあります。
それは、後継者が社長になるときの儀式です。
後継者が社長になる際には、きちんとした機会をよういして、番頭や社員から後継者に対して、
「よろしくお願いします。」といわせてください。
この儀式は、心理学者によると後継者とほかの社員のその後の関係に重要な意味を持ってくるそうです。
では、果たして何が重要なのか?
事業承継において悩みを持つ中小企業で、こういった情報が気になる、という層はおそらく年間売上高が10億円を超えない規模の会社ではないかと思います。
つまり、社内が仕組化できていない状態の企業が多い、と思われます。
という事は、逆に言えば、創業社長の双肩に会社の未来がかかっているという事です。
ところで、事業承継の目的を確認してみましょう。
事業承継が、創業社長が引退してもなお会社に影響力を残すためでなく、
私利私欲のためでなく、
会社そのものが存続するために行われる、という前提でよろしいですね?
そういった前提で考えた時に、会社の未来を示せる人間でなくてはならない、という事になります。
もう少し具体的に言いましょう。
後継者は、一般社員と肩を並べて、実務をこなしている間も、
会社の未来を見続けなくてはならない、という事です。
そしてそれは、業界の常識や習慣にとらわれることなく、自由な発想ができる大きな視野を持っていなくてはなりません。
実は、これは本当に難しい事です。
なぜなら、同業者や、会社の古株や、創業者自身であったり、
業界の教科書や、同業のしきたりが、
それを常に阻もうと、後継者を洗脳するからです。
今まで通りの会社であろうとさせるのです。
ここから一歩踏み出すには、まずは、見えていない世界を見ようとしなくてはなりません。
これは同業種の中にいると、なかなか難しいかもしれません。
異業種の中にいても、難しい事です。
「ウチの業界は特殊だから・・・」という言い訳をされれば、異業種の人間からは
文句は言われませんからね。
そういった垣根を取っ払い、小さな視野を広げ、正確な現状把握ができる必要があります。
印刷屋が、印刷屋であり続ける必然性はどこにもありません。
また、新聞販売店が、新聞販売店であり続ける必然性もまた、どこにもありません。
しかし、今のままでは事業が衰退していくのが明白だとすれば、
今までの資源、自社のルーツ、創業精神を冒すことなく、
新たな道を見つけていかなければなりません。
その役割は、創業社長ではなく、後継者なのです。
いわば、第二創業を行うという重責を担うのが、あなたの後継者です。
0から事業をスタートした創業者は、0を1にするのにずいぶん苦労したと思います。
それが、成長して、今100だとします。
後継者は、気を付けなければ、「100から減らさない経営」をしてしまいがちです。
しかし、今の時代、「減らさない経営」では、減ってしまうのです。
200をめざす経営をしなければなりません。
そうなった時、今までの手法では未来を描けないことが多い。
創業者が苦労されたとはいえ、時代は登っていました。
緩やかな下降線を上げき始めた時には、新たな事業分野を開発しなければ現状維持さえままなりません。
そのサポート、相談相手となる人脈、コーチが後継者にとってこれから数十年にわたって最も大事なものなのではないでしょうか。
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