後継者

後継者は「捨てる」勇気も必要 ~その前提に自分に自信を持つ

親の会社を引き継ぐとなると、その会社は色んな状況にあると思います。
いい形でバトンタッチを受けた人もいるかもしれないし、
債務超過状態だった、なんて話もあるでしょう。
そこまで言ってないけど、ジャンジャン先代がお金を使いすぎるなんて言う悩みもあります。

そんな中で、私たち後継者は、色んなものを捨てる勇気を持つことも必要です。
そんな時は、会社や社会の中で、自分や会社が求められている役割から考えてみてはいかがでしょうか。


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親の会社を継ぐ技術

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後継者は「会社を守り育てる」という強迫観念の中で生きている

昭和の事業承継における後継者の役割

昭和の時代って、すべてが膨らんでいました。
人口、GDP、自動車の販売台数、白物家電・・・
どんどん生活を便利にする製品が発明され、市場がひろがっていました。

そんな中では、どれだけの時間を投下したか、どれだけの労働力を投下したかが、会社繁栄の決め手だったかもしれません。
この時代の後継者はまさに、既存のビジネスを守り育てることが大事な役割でした。
そこは先代と後継者でのブレはなく、同じことをよりたくさんできるようにするのが事業承継でのテーマだったように思います。

しかし、現在は少し変わりつつあるように思います。

効率化の時代と量のパワー神話

平成から令和にかけての事業承継は少し様子が変わっています。
いくらたくさん作っても売れない。だから、効率化をして安くしなければならない。
また、たくさん作り、打ったからと言って会社が安泰とは限らない。
ビジネスは、算数だった時代から、数学のように複雑な時代に入っていったのです。

一方で、算数時代の成功体験を持つ先代と、数学でなきゃ駄目だと思う後継者で、意見が食い違うようになってくるわけです。

社長の高齢化問題

さらに事を複雑化させるのは、社長の高齢化問題です。
30年前、65歳にもなれば、引退するにふさわしい老い方をしていたものです。
70歳になって現役であれば、かなり頑張っている印象がありました。
しかし、今や65歳なんてまだ高齢者というイメージがない。
75歳位になって徐々に衰えは見え始めるけど、80歳代で現役なんて話はザラです。
80歳代の先代と、50歳代の後継者という構図がここに生まれます。

なかには、80歳を過ぎてなお、会社の全権を握っている先代もいて、
そんな会社においてはだいたい後継者は自分で実権を握りたがらない。
だから、結果として、先代は生涯現役なんて言うパターンがけっこう出てきます。

ここで問題なのは、算数経営であるという事。
商品やサービスが時流に合わないにもかかわらず、それを突き通すといった事態が発生します。

後継者は会社を守るべき立場?

さて、このような環境下の中にいる後継者。
彼らの役割は、多くの場合、「事業を守り、育てる」立場。
昭和的価値観が、同族企業の周囲には匂い立ちます。

当然、世間体を気にしがちな後継者は、そういった昭和的価値観にコミットせざるを得ません。
そんな中、会社(というより事業)を守り育てるという前提で会社を引き継ごうとすることになります。

令和の時代の本来の後継者の役割

親の会社は子が継ぐ?

昭和の時代までは、親が商売をやっていれば、子がそれを継ぐのは当たり前の事でした。
ある側面では、せっかく作ったものだから、それを家族で守っていこうという事。
また、かつてはいい思いもしたので、それを子に受け継がせたいという事もあったのかもしれません。

そういったことで、社会的に世論が出来上がった気がします。
また、古代からの血族を大事にする伝統的な考え方もあったのかもしれません。
かつては、生活とビジネスが一体化しているような印象もありますので、その延長という気もします。
それが、生活とビジネスが分離されたことから、「家業」という感覚が薄れつつあるのが現場の素直な感想ではないでしょうか。

かつては、親が働く後姿を見てきた子供も、今では、普通のサラリーマンと変わりなく出社し、帰宅する親を見ていると、家業に対する帰属意識は減ってきているのかもしれません。

帰属意識のダウンとビジネスモデルの変化

そのように帰属意識が落ちて行く中で、世の中のビジネスモデルも段々と複雑化してきました。
分かりやすい業者の一つが、印刷業でしょう。
かつては、何かといえば印刷屋さんにお願いしたわけですが、今はたいていはパソコンで出力可能。
さらに、ペーパレス化の流れの中で、仕事はどんどん減ってきています。

かつてあった町の印刷屋さんでは仕事が立ち行かなくなり、プリントパックなどの仲介業者を介しての受注になりました。
それでも全体量は減っているでしょうし、ここにきての資材の高騰で青息吐息。
果たして、このままで事業は成り立つのでしょうか?
つまり、事業者として進化というより、変態していかなければいけない状態ではないかと思います。

後継者の認識と先代の認識

この辺りの状況判断について、後継者的には待ったなしと考えています。
逆に、先代は、今までの延長線上に会社に未来があると考えたい。
そこで衝突が起こるわけです。
事業承継が上手くいかない原因の大きなものの一つがこの、親子の確執。
某家具販売会社の例を挙げるまでもなく、多くの企業で当たり前に怒っていることです。

先代と後継者の衝突を乗り越えて

先代と後継者の確執

先代と後継者の確執は、双方が真剣に仕事にコミットすると避けきれないことかもしれません。
そして、それぞれが持っている信念がベースになる話なので、やすやすと相手を変えようとしても不可能です。

ならばどうすれば良いのでしょうか。
どちらかが、あるいは双方が、相手の意見を受入れる必要があります。
その過程において、先代は会社を手放す覚悟が必要です。
後継者は、会社の責任を一手に引き受ける覚悟が必要です。
どちらも、それなりに気張らないといけません。

後継者の捨てる勇気

先代との意見の衝突はある中で、後継者色んなものを捨てなければならなくなると思います。
今までのビジネス上の常識や、商品、一部の社員はやめていくでしょうし(たいてい一番頼りいしている人が辞める)、もしかすると顧客も変わっていくかもしれません。
「捨てる」という表現は失礼かもしれませんが、私たち後継者は色んなものを失います。
その失うものを負うことなく、当たらなものを取り入れて自分の世界を作っていくことが大事です。

また、ある意味においては、自分のこだわりも捨てざるを得ないことがあろうかと思います。
先代や古参社員と意見が合わないとき、あえて譲歩することも時には必要となります。

とにかく色々手放して、新たなものを取り入れる。
そういう意味では、守ろうとすると、執着になりますから、注意が必要です。

後継者は自信を持とう

色んなものを手放す、捨てる、といった家庭の中で後継者は自信を失うことがけっこうあります。
こうなったのは自分のせいなんじゃないか、と。
それはある一面において正しいけど、ある一面においては間違いです。

人が辞めるのはあくまでその人の人生観です。
人の幸せを後継者であるとはいえ、私たちが責任を持つなんてできません。
お客様が離れていくことも、心痛むことですが、私たちが時代にマッチしたサービスを提供するためならば、それも一時的には必要となることです。
感謝の思いでお別れをしましょう。
どれもこれも、良い悪いの問題ではなくて、選択の問題です。

大事なのは私たち後継者は、関係する人々に、誠意をもってどんな選択肢を提示するか?というだけの話です。
他人のことまで責任を持とうとしないでください。
後継者が決めた事ならば、自信をもって実行しましょう。

 

 


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