後継者

後継者が意識したい事業承継において行うべき事

事業承継といっても、色々とやるべきことがあります。
本当にたくさんのことが同時進行するのですが、逆に、現実は遅々として進まないことも多い。
ぼんやりと考えていると、その全体像に押しつぶされそうになりますが、まずは落ち着きましょう。
そして、何をすべきかを書き出し、優先順位を決める時間を作ってください。

そのうえで、今すべきことを考えてみてください。
以下に、ざっくりとした事業承継の全体像を見てみます。


私の著書です。

関心を持っていただいた方は、画像をクリック。


事業承継対策を3つに分けて考えてみる

事業承継は後継者だけでは当然できない

親の会社を後継者が継ごうとするとき、登場人物で大まかに三つに分けることができます。

  1. 先代が単独ですべきこと
  2. 後継者が単独ですべきこと
  3. 先代と後継者が共同してすべきこと

もちろん、詳細に分類するならもっとたくさんの分類はあろうかと思います。
しかし、便宜上これぐらいの分類にしておきます。

事業承継が最も難しい点

これらの中で、最も難しく、問題になるのが3の先代と後継者が共同すべきこと、という部分です。
双方が相手を思いやり、相手を主導として動く必要があり、1つの試練ではないかと思います。
実は、これは事業承継の中での一つの裏メニューで、継がせる側と継ぐ側の双方の人間鍛錬の時間じゃないかとさえ思うことがあります。

それでは、内容を具体的に見ていきましょう。

事業承継対策 先代が単独で行う事

①(自分のための)事業承継計画を作る

事業承継計画というと面倒臭そうなイメージがあるかもしれません。
ここで詳細な計画を作ったところで、物事は思うようには動きません。
この段階では、ざっくりした将来イメージを描く、という感じで十分かと思います。

項目は以下の通り。

自分は何歳で引退するつもりか?

ゴールが決まっていなければ、他の事も決めることができません。
まずはだいたいいくつくらいで引退するかを考えます。

自分が引退した後の収入はどうするか?

社長を引退して会長になったとすると、収入を半分以下にするのが一般的です。
その時に、その収入でいいのか?それ以外の収入を検討するのか?といったライフプランが明確でなければ、いざという時引退できません。

自分が引退した後の時間の過ごし方

先代が会社から身を引けない理由の大きなものに、人との関わりや、時間の過ごし方が圧倒的に薄くなることにあります。
仕事・会社に変わる自分の居場所がなければ、先代としての引退は難しいのです。

②資産の移転

先代がもつ資産(事業用不動産や自社株など)の移転。
これは、事業承継完了後、後継者が自分の考えで会社を動かせるかどうかのとても重要な部分。
兄弟や親せきに自社株が分散することで、後に後継者が辛酸をなめるケースは少なからずあります。

③関係各位への後継者の売り込み

後継者とともに、人脈を引き継ぐ以前に、まずは後継者の評価をしっかり伝えていってください。
「ウチの後継者はまだまだで…」という謙遜もいいのですが、それでは後継者がとてもやりにくくなります。
後継者の具体的なスキルを先代の言葉で周囲に伝えてください。

事業承継対策 後継者が単独で行う事

①仕事のスキルを高める

実務におけるスキルアップはとても大事。
しっかりと、本業におけるスキルアップと向き合うことは、生涯を通じて大事なことだと思われます。

②経営に関する学び

仕事のスキルが部分最適だとすれば、将来の経営者となる後継者は経営に関する学びが必要です。
財務・会計、労務、マネジメント、戦略、マーケティング、営業など、内容は多岐にわたります。
これはケースバイケースですが、財務・会計などはどちらかといえば守りの部分。
こちらは一生懸命学ぶというより、現実の実務フローを学ぶ程度にとどめ、まずは戦略やマーケティングに注力して学ぶのが個人的にはお勧めです。
守りの部分は現体制である程度任せておいて、攻めの部分の陣頭指揮をとれるといいのではないかと思います。

③仕事における哲学を固める

後継者って、先代の考えやこれからのビジネスの方向感を考えて、理念とかミッション・ビジョンを考えるシーンが多いと思います。
そこには、いわゆるフィロソフィーが自然に生じてくると思います。
仕事において、どんな価値を社会に提供し、どんな生き様をしていくのか。
そういったことが固まっている人は、外から見ても独特のカリスマを発揮しているものです。

④社員とつながる

組織を運営するという意味では、実はこれがとても大事。
大事なんだけど、意外と忘れられがち。
後継者は何よりもまず、社員の言葉を聞いてください。
そして彼らとつながってください。
それで景色は随分変わります。

事業承継対策 先代と後継者が共同で行う事

事業承継のステップの確認

親子の事業承継にありがちなのですが、双方の意思表示がハッキリしないことがあります。
なんとなく、何歳ぐらいに引退するぞ、と親が言います。
そこから後継者はその「何歳」という具体的数字が強く印象付けられます。

一方で先代は、とりあえず思い付きで言ってみた、という場合も多い。
この事に限らず、お互い思い込みで、一生懸命やってみたり、ふわっとした感じの事を言ってみたり。
そんな行き違いがとても多いのです。

だから、いつぐらい、どうなったらどうする、ぐらいの示し合わせぐらいは欲しいところ。
つまり、お互い向き合って、それなりの真剣度で考える必要があります。

会社の未来の姿へのコミット

双方が考える会社の未来。
そして、お互いがその未来にコミットする。
実はこの過程はとても大切です。

ここがはじめに見えていないから、ここの決定事項に対して対立が起こります。

人脈の引継ぎ

重要な人脈は、継続的に引き合わせをすることで引き継ぎを行っていきます。
人と人なので相性があったり、関係性が変わったりすることはやむを得ない事です。
ただ、これまでその人たちが、会社や先代にとってどういう役割を担った人かを知ることで、
後継者は先代が必要としていたものがわかるようになります。

これらを実現するために大事な事

すなおに相手を喜ばせる

これらの事を実現していくために大事なのは、目の前の相手を喜ばせるということ。
ある時は顧客、ある時は先代、ある時は後継者、ある時はその他の登場人物。
自分のためでもありますが、誰かを喜ばせるということをベースに物事をとらえると、きっとスムーズに進みやすくなります。

ぜひ検討してみてください。

 

関連記事

  1. 後継者にとって社内がうまく回らない時「執着」が生まれる

  2. 下着市場のライバルが下着メーカーではなくなった現在

  3. 後継者・二代目社長が成長する過程で段階的に変化する悩みについて ③

  4. 先代経営者の高齢化と後継者・二代目社長の待ち時間

  5. 後継者に必要なものは、〇〇〇ー〇できないことを楽しむ余裕

  6. 親子の事業承継の中で考えた「自分の使命って何だろう?」という問い

  7. ある創業社長との対話 ~後継者・二代目社長をどう育てるか

  8. やりすぎ注意報