後継者

後継者の3大悩みに対処する方法

親の会社を継ぐ後継者は悩み多き日々を過ごされています。
事業承継という一大事業を成し遂げるためには様々な障害があります。
それを一つ一つ解決し、前に進むというのは本当に大変なこと。

その中でも、多くお後継者が口にする悩みについて検討していきたいと思います。


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親の会社を事業承継する後継者に共通の悩み

親の会社を継ぐ後継者に共通の悩み

これまで、たくさんの親の会社を事業承継する後継者のお話を聴いてきました。
その中でよく出てくる悩みというのは、大体共通しています。
具体的には……

まずは後継者と先代の関係について。

  • 先代と後継者の意見が合わない
  • 先代と話し合おうとすると、だいたい喧嘩になる
  • 先代は後継者の事を尊重しない
  • 先代は引退すると言いつつなかなか引退しない
  • 後継者として会社のお金周りを知りたいのに決算書を見せてくれない
  • 後継者は中期経営計画などをつくろうと提案するけど先代は受け入れてくれない
  • 後継者は社のIT化を進めたいが、先代はそれを拒絶する
  • 先代を会社から追い出したい
  • 後継者が先代から追い出された

そして、後継者と社員の問題も結構噴出します。

  • 後継者が「がんばろう!」と号令をかけるけど社員の士気が上がらない
  • 後継者がやろうとしたことを、社員が拒絶する
  • 後継者が企画して準備しても、社員は先代の言うことしか聞かない
  • 後継者の会社改革を社員は冷ややかな目で見ている
  • 後継者が社員の統率をとろうとルールを増やすと会社の士気が下がる

また、社外の人や顧客とも…

  • 後継者が社会の変化に合わせて会社を変えると、顧客から「お父さんはそんな冷たいこと言わなかった」と詰め寄られた
  • 後継者が金融機関に挨拶に行っても、、先代にばかり話しかける
  • 後継者が会社のトップになるにもかかわらず、取引先は後継者の話を真面目に聞こうとしない

さらには、

  • 後継者として会社を発展させなければならないというプレッシャーがキツイ
  • 事業承継において、後継者として会社を変革していく必要があるのに上手くいかない
  • 事業承継を受ける後継者としての器ではないような気がする
  • 将来の世の中の変化の中で、会社を運営していく自信がない

などなど……
数えればきりがありません。

事業承継をする後継者の悩みを3つに分類する

さて、これだけ多くの課題に対応するには、これらの共通点を探る必要があります。
幾つかの問題は、1つの原因から出ている可能性もあります。
実は、最終的な結論をここで言ってしまうなら、
「後継者の人としての器を大きくすれば、すべて解決する」
ということが言えます。

今大きく見えている問題は、自分の器に対して大きいからであって、
後継者が自分の器を大きくすれば、問題ではなくなるのです。
アリにかまれた時、小さな昆虫だと瀕死の傷を負いますが、
像ならばチクリとも感じません。
アリという問題にたいする、自身の大きさが大きければ問題は問題でなくなります。

そうはいっても、今すぐ「器を大きく」なんてできませんよね。
だから少しだけ細分化してみていきましょう。

ここに上げた後継者の悩みは大きく次の3つにわけられると思います。

  1. 後継者自身のスキル・知識不足の悩み
  2. 見えない将来についての悩み
  3. 親や従業員、顧客や取引先との人間関係の悩み

この三つにしぼって考えてみましょう。

親の会社を事業承継する後継者に共通の悩み3選

後継者の悩み① 後継者自身のスキル・知識不足の悩み

一般的に後継者が若い時期には、この悩みや不安が最も頭を悩ませるものではないかと思います。
事業に関するスキルもなければ、知識もない。
そして現場の仕事に慣れてきても、経営って何をするのかイマイチわからない。

この悩みや不安は、先代や周囲の人が後継者に求める期待値の大きさが原因の一つかもしれません。
後継者というのは、生まれたときから後継者。
言い方によっては、「経営者の血筋を引いた」後継者なわけです。
周囲の人にとっては、後継者は「仕事ができて当たり前」なんです。
それを肌で感じている後継者は、自分の中での満足ラインも高めに引いているはずです。

不足は、「期待するレベル」と「現在レベル」のギャップで生じます。
つまり、現在レベルがいくら高くとも、期待するレベルが高ければ永遠にスキル・知識不足の悩みや不安から逃れることはできません

現実的なアドバイスとしては、
・ビジネス書やセミナーに参加して知識を取り入れる
というところがありますが、実は、知識をいれてもあまり不安や悩みは去っていきません。
大事なことは、実践を積むということ。
シチュエーションが許すのであれば、できるだけいろんな経験をし、小さな失敗を繰り返し、リアルな感覚として「これならできる」というところまで訓練することが大事です。

しかし、残念ながら、後継者はそれを許されないことが多いというのが現実。
先代は、後継者が指揮を執り、失敗することを許さないからです。
だからどうしても、一人でできる勉強は進んでも、実地での体験が不足してしまいがち。
これが、後継者が頭でっかちと評されやすい理由でもあります。

その対処というわけではありませんが、とにかく、色んな業種の経営者とのコミュニケーションを広げてほしいと思います。
自分で体験できなくとも、リアルな経営の経験者の話に触れ、相談者のネットワークを作ることを意識して見てください。

後継者の悩み② 見えない将来についての悩み

これは後継者に限らず、経営に携わる方なら誰もが持つ悩みや不安だと思います。
特に、ここ30年くらいで社会は激変しているように思います。
事業承継でバトンを受ける後継者だけでなく、これまで事業を営んでいた経営者のほとんどが同じ悩みや不安を持っているはずです。
これまで何十年も経営という荒波の中で生きてきた先代でも不安なのに、まだ経営の経験のない後継者が不安を持つのは当然です。

しかも多くの場合、そのハンドルを握らせてもらえていないのが後継者。
先代は、これまでの「カン」で手綱を引きますが、後継者の視点で見るとどうも違うような気がする。
それでも、先代にそのことを指摘すれば喧嘩になります。

どこへ向かうべきかわからない船の中で、自分は舵を握ることなく、しかしその先の責任は負わされる。
後継者の憤りは、そんな風に増幅しているのではないでしょうか。
まるで、安全の確認できないジェットコースターに乗せられているようなものですね。

では、ここにはどんな対処ができるのでしょうか。
一つ考えられるのは、後継者は不安や悩みを増幅させ過ぎている可能性が高いのではないでしょうか。
今困っていないことを、先へ先へと考えて、それを今すぐ何とかしなければならない、と焦ってしまう。
将来の計画は大事だとは思いますが、動かせない事ばかりに気を取られていてもなにもいいことはありません

残念な話かもしれませんが、今あなたが何か仕掛けて上手くいくかどうかもわかりませんし、
仕掛けられず、会社の寿命が延びることだってあります。
結果はある意味、ガチャです。
だから、できることには最善を尽くせばいいのですが、動かない事ならばそれは一旦手放したほうがいいのではないでしょうか。
不安があるならそれもいい。
不安を持ったまま、できることをやればいいのではないでしょうか。

後継者の悩み③ 親や従業員、顧客や取引先との人間関係の悩み

実は、後継者の悩みや不安の中で、一番大きなものがこの部分です。
親である先代や従業員、顧客や取引先とうまくいかない結果、

  • 親である先代をクビにしたり、後継者自身がクビになる
  • 社員のクーデターや大量退職が起こる
  • 顧客が一気に失われる
  • 税理士や金融機関とぎくしゃくする

などがおこりがちです。

そしてこれは、将来の話ではなく、「今困りごとが起こる問題」と直結しています。

なぜ、こういった人間関係の悩みが起こるのかというと、とても深い話になるのでここでは割愛します。
ただシンプルに言うと、後継者の器の小ささが原因となることが考えられます。

後継者は、自分の仕事が認められたいと感じ、
後継者が自分の基準を周囲にあてはめ、
後継者は、自分が正しいと考え、
後継者は、自分一人ですべてを背負い込もうとします。

具体的に言うと、
後継者にとって、先代が引退するというのは、自分が一人前と認められる証。
しかし、先代である親は、事業承継をほのめかすものの引退しない。
いざ引退を迫ると、後継者が未熟だから引退できないという。

また、後継者は自分はこんなに頑張っているのに、周囲の人間はだれ一人それを理解しようとしない。
そう感じて、孤独の中に自分を押し込めてしまいます。

この対策は、実はやることそのものはそんなに難しくありません。
後継者は、相手となる人、
つまり、先代や従業員や、取引先や顧客のいうことをしっかりと傾聴するということ。
そして、彼らの意見を尊重するということ。

もちろん、全部言いなりになれとは言いません。
けど、まずは受け入れ、しっかりと大事にすることが必要なのです。

たとえば、社員から後継者に何かの提案があったとします。
仮に会社のマネジメントについて、課長の権限についての提案があったとしましょう。
後継者からすると、課長にそこまでの権限を与えるのは危険だと感じたとしましょう。
きっと後継者の今までのパターンなら、「そうはいっても、こういう問題があるから、むりかな」なんて言う風に即座に断っていたかもしれません。

けど、このように変えてみます。
まずは、その社員の提案についてしっかり聞きます。
そういう思いに至った経緯、キッカケ、それを採用した時にどうなるか、などですね。
責める口調ではなく、ちゃんと検討するような前向きな印象を与えることが大事です。
そのうえで、その提案へのお礼と、提案内容について自分としてよいと思う部分、
そして後継者としての危惧があるならその内容、そして、それを解決する方法があるかないか、などといったことです。
シンプルに言えば、「その意見は採用できない」という前提ではなく、「細かな問題が解決できて、良い効果が期待るなら検討するよ」という姿勢を見せます。

後継者としては、色んなリスクを考えるから、きっとその社員は驚くことでしょう。
けど、そのことをきっかけとして、ああでもない、こうでもない、という議論をおこなうことで、社員は「対等に扱ってもらえた」という喜びを感じます。
その時点で、彼は後継者の同士です。
そういったコミュニケーションをどんどん広げていきます。
もちろんこれはテクニックの話ではなく、本心からそういう前向きな姿勢を持ってくださいね、ということです。

後継者がそういった姿勢を持つと、相手も真摯に対応してくれます。
そういった関係構築を一つ一つ積み重ねていってください。
そうすることで、衝突はゼロにはなりませんが、衝突しても話し合える関係ができます。

いかがですか?
後継者の悩みや不安は、複雑に絡み合った状況から生まれます。
しかし、本質的にはシンプルな人間としての心理に基づいています。
コツコツと地道な努力で、次第に「問題が問題とは感じない」自分の器ができてきて、いつしか、自分にとってさほど気にならなくなるはずです。

信じて意識して見てください。

 

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