事業承継で、後継者が親の会社を継ぐとき、大きなテーマになるのが「自信」です。
後継者・跡継ぎの多くが、「会社を経営していく自信がない」と口にされます。
しかし、ここにきて思うのは、自信には持つべきものと、持っていると邪魔な自信があると思うのです。
今日はそんなお話を。
私の著書です。
私が30歳代の頃、ある意味経営に関する学びについては結構な自信を持っていました。
実践できているかどうかはともかくとして、経営理論に関して、少なくとも車内には右に出るものはいない、と感じていたのです。
ジャンルも、セールス、マーケティング、組織マネジメント、などなど。
とにかく自分の考えは間違いなく正しい。
つまり、自分の言う通り社員が動けば、会社は良くなる。
そんな風に思っていました。
そんな前提で社員と接すると何が起こるのでしょうか。
「自分の思い通りに動かない社員の馬鹿さ加減に嫌気がさす」
というのが当時の私の偽らざる思いでした。
俺が正しいんだから、俺の言う通り動け。
意見なんてさしはさまなくてもいいから、言われたとおり働け。。
それさえもできないくせに偉そうな顔をするな。
当時、口には出さないものの、心の中でつぶやき続けた言葉です。
こういった状態になると、社員はむしろ心が離れていきます。
何も知らされず、計画や企画に参加できず、ただ目の前のやることだけが指示され、機械のように働くことを求められる。
そんな職場で頑張ろうと思う人は多分いないでしょう。
とにかく、お金だけのつながりとなり、しまいには、できるだけ働かずに済まそう、という思いが社員の頭の中を支配し始めます。
ここで起こるのは、クーデターだったり、大量退職。
社員の定着率悪化。
そんな状態です。
一般的な後継者・跡継ぎは、経営に関する自信を持ちたいと思いがちです。
けど実は、それは劇薬。
むしろ、経営に関しては不安を持ちながらやったほうがいいくらいかもしれません。
そうすることで、社員一人一人の声を聴くことができるようになるからです。
自分は間違っているかもしれないから、たくさんの人の意見を聞く。
そして素直に実行する。
これができるようになると、そんなに悪いことは起こらないと思います。
一方で、私たちが持つべき自信は他にあります。
それは、
何があっても、きっと大丈夫
という自信。
これ、まさに自分の能力を信じる、本当の自信です。
前者の自信って、勉強したことに対する自負で、自信じゃないんです。
本当の自信は、他者と比べてすごいとか、良いとか考えませんから。
大事な心構えは、自分が一番わかってるとか、
自分が一番会社の事を考えているとか、
そういうことではないんです。
どんなことがあっても、大丈夫。
そういう自信なんですね。
だから、社員の意見を取り入れてみるし、
間違いかも知れないことも試してみるし、
失敗するかもしれないこともやってみる。
その結果がどんな風になるかに対して自信を持つんじゃなくて、
どんな結果も受け入れることが自身なんじゃないかな、と思うんです。
その自信を手にできると、
社員のミスも、
先代の介入も、
社会の色んな圧も、
受入れられるようになるんだと思います。
ある人の言葉を借りると、人の器を大きくすれば、
今まで「問題」だったことが問題でなくなります。
後継者が最も大事にすべきは、人の器を大きくすることです。
そして、人の器を大きくするということは、どんな現実も受け入れることができるようになるということではないでしょうか。