現在、ビッグモーター問題が日本を揺るがしています。
実は私、父の仕事が損害保険の代理店だったものですから、かなりこの事件を身近なところで見ています。
こういった問題は、業界の中の人は少なからず
「あるかもしれないな」とおもいつつ、
「まさかそこまでひどいとは」と感じている人が多いように思います。
業界の中に立ち込める澱のようなものは、その業界が伸びているうちは業界のリーダーカンパニーが中心に秘密に守られているものです。
しかし、その業界全体が力を失い始めると、だんだんと秘密が守られなくなってきます。
これは、保険業界や中古車業界に限ったことではなく、ジャニーズ事務所のようなエンタメ業界だったりでも同時多発的に起こっています。
そんな中、ある修理工場の社長とお話した事で感じた感想を少しお話したいと思います。
私の著書です。
損害保険はもともと、地元の世話人みたいな人が、ボランティア感覚で代理店というのを始めたのがルーツだと認識しています。
ビジネスというより人助けで始まったわけです。
ただそれも、だんだんと時代の流れの中で、自動車が一気に普及を始めたとき、同じように自動車保険が普及を始めました。
この辺りになると、保険というのはビッグビジネス。
どんどん拡大する経済の中で、一世を風靡したと言っても過言ではないと思います。
それが長い間続いて、バブルが崩壊したのち、いくつかの問題が浮上してきました。
保険金不払い問題や、超過保険問題。
簡単に言うと、本来ルール化されていた保険の秩序が、リアル世界では誰も守っていなかったという状態が長く続いていました。
ルールを正しく運用する事より、商売が優先された時代です。
この時に、「これはおかしい」といい始めた人も業界内にいました。
けど、その言葉は、巨大な保険会社資本をベースにする世論の中にかき消されました。
そして、マスコミなどにも、莫大な額の広告を投下する保険業界について、敵対するような記事はかけない、という雰囲気も出来て来たのではないでしょうか。
保険といえば公平性が大事ですが、その公平性が守られていない現場は随分ありました。
それでも業界に力があった時は、ネガティブ情報は出にくかったのですが、先に話した不払い問題や超過保険問題では、一気に保険業界の課題が浮き彫りになりました。
まだまだ業界は強い力を持っていましたが、業界にケチをつけるくらいの記事が出始めるというのは、衰退の序章といえるかもしれません。
その後しばらくは特に大きな事件もなく過ごしてきましたが、ここにきての保険会社と中古車業界を巻き込んでのビッグニュース。
これは保険業界が力を失ったとは言いませんが、影響力に陰りが出てきた証ではないかと思います。
業界の隠し事が暴かれ始めると、だんだんとその業界というのは大きく変化するタイミングがおとずれる、というのが私の考え方です。
さて、みなさんの業界は今、どんな状況でしょうか?
それぞれの業界には、あまり表ざたになっていない慣習や風土があるのではないでしょうか。
これまでは、がっちり固められた業界の壁で、外に漏れなかったのに最近漏れ始めている…そんな状況になっているとしたら、業界は大きく変わるタイミングだと思います。
この時に、その末端で生きる中小企業は非常に大きな波を受けることになります。
その波を、自分達にとって良いものであるためには、やはりしっかりと状況を見つめたうえでの決断と行動が必要になります。
そんな矢先、ある自動車修理工場の社長から電話がありました。
今は、自動車事故の修理の入庫がめっきり減ってしまったと言います。
自動ブレーキのおかげなんだそうです。
その工場は、地域でネットワークを組み、先進的な取り組みをしていたグループ。
それでも、すっかり仕事がないということ。
もはや、自動車修理工場というカテゴリーそのものの仕事の在り方が根本的に変わっているタイミングなのかもしれません。
こういったときに、「自動車修理工場」というセルフイメージから、まずは抜け出すことが大事なのかもしれません。
後継者の方にお伝えしたいのは、業界の不祥事から、これまで隠されてきた業界のあるあるが公になるときは、業界そのものが大きく変わるタイミング。
ぜひ、セルフイメージを変えることを含めて、会社を大きく修正していくことが必要になってくるのではないかと思います。
この時には、あるいはタブーに切り込むことが必要な場合もある。
そんな覚悟が必要なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。