先日あるお客様からご相談を賜りました。
化学系の工場なのですが、近隣住民からのクレームがひどい、と。
親の代には、この界隈、同業の工場がたくさんあったのですが、次々と宅地化されて、
以前からここにいるのに肩身がせまい、と。
私の著書です。
親の会社を継いだ後継者がよく耳にする言葉があります。
「お父さんの時は、そんなこと言わなかった」
「おかあさんの代では、もっと融通利かせてくれた」
私も経験があります。
当時はコンプライアンス(法令順守)なんて言葉ありませんでした。
法律よりも顧客の利便性。
ルールを逸脱しても、顧客がメリットを感じてもらうということが一番大事な事でした。
しかし、ちょうど親世代から私たち世代にバトンタッチされる中で、
・個人情報保護
・各業界の法律
・広告などへの規制
・ISOなどのマネジメント基準の導入
・内部統制の強化
・労働環境の整備(労働訴訟の一般化)
などなど。
とにかく、法律やルールが何よりも優先される世の中になりました。
それは当たり前と言えば当たり前だし、法律やルールはだいたい消費者や労働者を守るためにできてますから、みんなハッピーな方向に行っているはずなのに、なぜかそこから文句が出てくる。
そしてやり玉に挙げられるのが、後継者自身です。
みなさん、時代が変わったとは考えず、「息子の代になって冷たくなった」「四角四面な後継者」なんて評価になりがち。
そんな時代の中で、今までは工業団地的な地域だった場所も、だんだんと宅地に変わっていったりしています。
気が付けば、周囲はすっかり住宅街で、自分の工場だけがぽつんと取り残されてる状態。
そこでずっと頑張ってきて、誰よりも早くこの地にいるのに。
たとえば、化学工場だとクサいとか、火事や爆発が怖いとかでクレームが入る。
金属加工の工場なら、騒音とか、金属くずとかが困ると言ったクレームが入る。
そのほか、仕入れや搬出のトラックが危ないなどとクレームが入る。
始めからいた人たちがむしろ肩身が狭くなっていきます。
こういう時、後継社長はどうすればいいのでしょうか。
1つ頼れるのは、自治体では工場移転などの補助金を出しているケースもあるので、そんな事を調べてみるのもいいかもしれません。
あるいは、そういった事業の必要性について、もう一度考え直してみる必要もあるかもしれません。
もちろん、そこにい続けて、住民の方と如何にコミュニケーションを取るかということを考えるのもアリです。
で、何が言いたいのかというと、幸か不幸か、私たちは親と同じようにビジネスをやり続けることはできない、ということです。
親のやってきたことをなぞれば上手くいく、という部分も確かにあるかもしれません。
しかし、それではうまくいかない事の方が多いわけです。
それでも切羽詰まるまでは気付きにくいことなのですが、常にそういった視点は必要かな、と思います。
クレームにどう対処すればいいか?という小さな視点では見えないことがたくさん出てきます。
ぜひ、少し引いた視点で日々起こる事を眺めてみてください。
そういったクレームの中には、逆に、未来につながるヒントがあるはずです。