後継者

後継者が学ぶべきビジネス知識 必須科目が多い後継者は何を優先させるべきか?

多くの後継者は、不安を感じています。
学ぶことが、あまりにも沢山あるからです。
自社の扱う商品やサービス、その背景について、
会社や業界の歴史やしきたりについて、
顧客について、
資金繰りなどの財務について、
各種マネジメントについて。

これらは多くの場合、必要に駆られて学ぶ機会が訪れるのではないかと思います。
誰かが提案しなくても、きっとその必要性を現場でひしひしと感じる類の知識です。
しかし、普通に仕事をこなす中で、学ぶことなく過ぎ去るものもあります。
その中の一つについて、少し考えてみて頂きたいと思います。


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親の会社を継ぐ技術

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後継者の目の前には、必須科目が山積みにされているようなものです。
先代が、20年、30年かけて現場で学んできたことを、後継者は短期間で一定程度習熟することが求められます。
最初の5年程度は現場を学び、その後、しかるべき立場に立って経営やマネジメントを学ぶ。
飛び級のごとくスピードで、身に着けていくべきものをクリアしていかなければなりません。

しかし、そこに抜け落ちている可能性のあるものが一つあります。
それが、マーケティングだと私は考えています。
なぜこれが抜け落ちるかというと、中小企業における社員教育のほとんどがOJTです。
そうなると、先代や古参社員が習得していない技術や、知識は学ぶことができません。
そういった可能性のある分野の一つが、マーケティングです。

実は、中小企業においてマーケティングという言葉を使うと、

  • それって市場調査の事でしょ?そんなの中小企業にはそぐわないよ。
  • 営業の事でしょ?営業会議なんて毎週やってるから大丈夫。
  • 広告宣伝のことじゃないの?
  • ブランド化するってこと?

なんていう話が出てきたりします。
ビジネスの現場では、非常によく使われる言葉である割には、語られる内容は人によって捉え方があまりに違います。

 

マーケティングの定義は、様々な団体などが行っていますが、フィリップ・コトラーの定義によると、

マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセス

となっています。まだ少しわかりにくいですね。
著名な経営学者である、P.F.ドラッカーは、

マーティングの目的は、セールスの必要をなくすことだ

と言っています。

この言葉を見る限り、単なる販売スキルのようにも思えることですが、これがなぜ後継者として必要になるのでしょうか?
順を追って考えてみたいと思います。

 

ドラッカーの言う「セールスの必要をなくす」という言葉を少しかみ砕いてみます。
私なりの解釈としては、シンプルに表現すると、顧客に人(営業担当)が売り込みをかけなくても、顧客から問い合わせがある状態ではないかと思っています。
近年のベンチャー企業は、これをうまく実現しているように思います。
では、どういう過程を踏めば、そのような状態を実現できるでしょうか。

多くの中小企業は、目の前の商品にたいして、より良くしようと一生懸命です。
それは、開発者の想いでもあり、開発者の視点で「こうあるべき」という考えがベースにあるのだと思います。
きっと、こんな商品を出したら、お客さんは喜ぶだろう、と。
しかし、現実はそううまくいかないことがよくあります。

なぜならば、提供する側が「これが良い」と考えるものと、顧客がそう感じるものとは、必ずしも一致しないからです。
これを一致させるには、視点の転換が必要になります。
顧客が本当に望んでいるもの、
欲しくてほしくてしょうがないもの、
もしくは、何が何でも解決したい問題をクリアにできるのか。
こういった事にフォーカスする必要がありそうです。
繰り返しになりますが、顧客の目で見たときに、という前提でです。

 

例えば、私自身が長くかかわる保険という商品においては、誰もが、
「必要だとは思うけど、出来れば買わずに済ませたいもの」
といった位置づけではないかと思います。
しかも、顧客の多くは1年のうちに、保険の事を頭に浮かべるのはまぁ1回か2回。
その商品は、いつ役に立つかもわからないし、役に立つことなく終えるかもしれない。
今まさに困っていることや、今まさにほしいもの、といった商品ではないんですね。
一方、販売する私たちの感覚としては、保険を使うような事故がなくてよかったですね、
という話になるのですが、そもそも「ほしくて契約しているわけではない」という保険の性質からすると、納得しづらい話でしょう。
しかし、プロから見ると保険なしの生活や経営など危なっかしくてしょうがないわけです。
そんな中でよいものが出来たとすれば、きっとお客さんは喜んで買ってくれるだろう、と。
だから、こんなにいい商品ができました!なんて案内をするわけですが、
残念ながらほとんどの人は見向きもしてくれないのです。

今持っている商品ありきではなく、顧客の視点にたって再度考え直すことなく販売活動を行う限りは、結局、営業社員が一生懸命1件1件説得しなければ売れていかないことになります。

どうしても、私たちは自分たちの専門知識をベースに商品の良し悪しを語る傾向があります。
それは大事なことではあるのでしょうが、その価値を顧客が評価しない、もしくは顧客に伝わらなければ全く意味をなしません。
そのことはつまり、商品起点の考え方を、顧客起点の考え方に改めなければ、マーケティングは成功しないという事になります。
大事なことなので、繰り返しお伝えします。
「こんな素晴らしい商品だから、お客様は買ってくれるはずだ。」という発想から、
「お客様が求めている状況を実現するために、私たちがいる。」という発想への転換が必要になります。

 

さらには、ほとんどの商品やサービスは、類似のものを扱う競合他社がいるはずです。
そうすると、顧客は、数ある競合の中から、あなたを選んでくれる理由が必要になります。
その理由を明確に答えられる人は、意外と少ないのではないでしょうか。

このように、マーケティングを突き詰めていくと、商品をどう開発し、どう販促活動を行っていくか?というレベルではなく、戦略レベルでの会社そのもののあり方にまで行きつく問いが出てきます。

今、「モノ」を売ることが難しい時代に入っている、といいます。
多くの人が求めるのは、物を持つ喜びではなく、悦びを作り出してくれる物を買う傾向にあるそうです。
この時代の変化をとらえ、自社を改革していくことこそ、後継者の持つ大きな役割ではないでしょうか。


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