創業者と二代目社長。
表向きはそれなりに仲がいいように繕っていても、内実はけっこう激しいバトルが繰り広げられていることが多いと思います。
そのただなかにいる二代目社長にとっては、人には理解できない苦しみがあろうかと思います。
けっか、会社を辞めたいであるとか、創業者をなんとか会社を追い出せないかとかいう事を考え始めたりもすると思います。
ただ、ちょっと待ってください。
私の経験上、そういった親子の確執のような経験がとてもプラスになった一面もあるのです。
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Contents
二代目社長が身につけたい「人間力」
私が経験から感じた最も大事なもの
二代目経営者が、経営者として生きていく中で大事なものって、何でしょうか?
業務知識であるとか、経営に関する知識。
マネジメント・組織についてとか、法律についてとか。
いろんなことを学ばなければならないことは間違いないと思います。
しかし、よくよく考えてみれば、たとえば小さな工場の職人社長のように、さほどビジネススキルについて学んだ経験がなくとも、会社が会社として成立していることはあるかと思います。
経営者として学ぶべきこと、やるべきことは沢山あるのですが、案外それを知らなくてもできてしまう部分もあるのが経営の幅広さです。
むしろ、何から何まで全方位で目を行き届かせられている会社など中小企業ではあまり存在しないのではないかと思います。
一方で、こういった「知識」については、少し集中して時間をとれば学ぶことは可能です。
実際にはそれを実践しながら体になじませていく、という事が必要ではありますが、知識プラスアルファの内容なので習得にさほど時間はかからないと思います。
学ぶ本人の変化が必要というわけではないからです。
会社がうまくいかなくなる理由
たとえば社員が会社を訴訟したとします。
これが何の問題かと考えてみると、多くの場合は、法的な対処と考えがちです。
もちろんそういったことも多分にあるのですが、そもそも、しっかりと社員とコミュニケーションが取れていないという前提があるから、話がそこまで大きくなるのではないでしょうか。
訴訟といえば戦闘状態です。
その前に話し合いの余地はなかったか、と考えると、社員とのコミュニケーションの取り方に問題があったと考えられなくもないのではないでしょうか。
人の問題のみならず、実はスキルや知識でカバーできそうに見えて、カバーできない問題がたくさんあります。
表面的には、スキルや知識の問題に見えても、その奥底にはちがった奥深い問題が存在することがあります。
二代目経営者が望んでもすぐには身につかないもの
こういった、知識、スキルといったことを二代目経営者は求めがちです。
しかし実は、二代目経営者である私たちが目をあわようとしないところにある問題が、けっこう大きいことがあります。
それが、人間力というものではないか、と私は考えています。
この「人間力」という言葉、なんとなく使うことはありますが、正式な意味はなかなか理解してない人のほうが多いと思います。
その定義は、すべての日本人で固定されているわけではなさそうでもあります。
だからふわふわとしてとらえどころがないため、なんとなく「魅力」といった印象を抱く人が多いように思います。
たしかに「魅力」といえば、そうかも、と思えますが魅力的になれと言われても、意味が解りません。
次のセクションでは、その人間力の正体について考えてみたいと思います。
「人間力」の正体
人が魅力を発するために必要な三つの要素
人間力は、魅力と関係がありそうだ、という話をしました。
その魅力を発するために、私たちはどんな努力をすればいいのでしょうか。
それを紐解くのに参考になるのが、内閣府の人間力戦略研究会(2003年)で発表された資料です。
そこでは、人間力をこう定義しています。
1.「基礎学力(主に学校教育を通じて修得される基礎的な知的能力)」、「専門的な知識・ノウハウ」を持ち、自らそれを継続的に高めていく力。また、それらの上に応用力として構築される「論理的思考力」、「創造力」などの知的能力的要素
2.「コミュニケーションスキル」、「リーダーシップ」、「公共心」、「規範意識」や「他者を尊重し切磋琢磨しながらお互いを高め合う力」などの社会・対人関係力的要素
3.「知的能力的要素」および「社会・対人関係力的要素」を十分に発揮するための「意欲」、「忍耐力」や「自分らしい生き方や成功を追求する力」などの自己制御的要素
一つ目は、知識を蓄え、それを応用し、クリエイティブに活用していくという能力、と読めそうです。
二つ目はまさに、社会人としての教科書的な内容ですね。
三つ目は、社会の中で前に進んでいく能力といえそうです。
私なりにこれらを超訳すると・・・
知的能力
乗り越える知恵対人関係力
人をまとめて力にする力自己制御力
忍耐・意欲を行動に変える力
といった感じに解釈できるような気がします。
二代目経営者として苦しんだ背景
個人的な体験になりますが、例えば私は親との確執がきつかったころ、非常に自分の殻にどんどん閉じこもっていった時期がありました。
自分が責任を負わされている以上、自分のいう事を周囲の人間はすべて聞くべきだ。
そんな思いで社内のリーダーシップをとろうとしていました。
さらに言うと、自分以外はすべて誤りで、その誤りをおこさないように、社内を徹底的にコントロールしようとしていました。
これが裏目に出て、社員から総スカンを食らったわけなのです。
しかしこの時私は「違う方法」を試そうという発想にも至りませんでしたし、人をまとめることもできませんでした。
そして人が常に自分の期待通りに動くわけではない、というところへの忍耐(というか受容)もできず、仕事への意欲をどんどん失っていきました。
これってまさに、前述の、知的能力(違う方法を探る)、対人関係力(社員と心を合わせる)、自己制御力(自分の内面をコントロールする)のすべてが足りない状態だったように思います。
二代目経営者のトレーニング
親子の確執は二代目経営者の人間力を育てる?
ところで、親子経営では必ずといっていいほど起こる問題が、親子の確執です。
誰もが知る有名な企業から、小さな零細企業まで、親子で経営すればそこには多かれ少なかれ確執があります。
しかし、よくよく考えると、私たち二代目経営者は、これを乗り越えることで人間力が育まれる、という考え方はできないでしょうか?
逆に、「何の問題もなく二代目経営者の椅子に座った」という自分を想像してみてください。
少なくとも私に関して言えば、そんな事が出来ていれば、ちょっとしたトラブルや不測の事態に対応できないだろうな、と思います。
逆に言うと、親子の確執を経験し、そこでいろんなことを考える機会があったからこそ、今の自分があるんじゃないか、と思うのです。
苦難があるから人は成長する
たとえば、何かを成し遂げたいという目標を掲げたとしましょう。
仮にそれを「会社の売上を対前年比24%アップ」としたとしましょう。
実際にそれが1年間で達成できる前提であったとして、1か月2%ずつプラスするなんて言うことはできるのでしょうか?
それができるとすれば、上のグラフのように右肩上がりの直線になっていくことでしょう。
しかし、現実はそんなにうまくはいかないものです。
かりに、1年で24%アップするとしても、ある月は10%アップだったり、ある月は3%アップだったり。
下手をするとある月は前年度マイナスの月もあるのではないかと思います。
これは売り上げに限らず、私たちの人生も同じだと思います。
二代目経営者がしっかりと先代の跡を継ぐという事をゴールとしたとして、その間、計画通り着々と進むなんて言うことはほぼ100%ありえないと思います。
やっぱり、やり始めたけど、停滞することもあり、予想以上に早く進む時期もあり、そうやって紆余曲折を経験してゴールに近づいていきます。
常に、ちいさなアップダウンを経験しながら、です。
そこで上のように、直線の上昇グラフの中で私たちが生きているとしたら、たぶんそこに向上心というものは芽生えないと思います。
今の自分のまま、経営者の椅子に落ち着いてしまう。
それはスムーズで良さげに見えますが、経営者として手腕を発揮してから様々な問題にぶつかり、成長が促されることになります。
逆に、親子の確執を経験し、そこで一見停滞しているように見える時期がある私たちは、そこである程度の成長が促されているので、その後が楽になる可能性もあります。
どの道、経営者としての人間力を育まなければならないであろうと思われますので、今経験するか、あとで経験するかの差、とかんがえれば、今の環境が少し気分的に楽になったりはしないでしょうか?
負荷があるから鍛えられる
筋トレについて私は詳しくはありませんが、きっと、相応の負荷がなければ筋肉は成長しないんじゃないかと思います。
人間も同じで、そこそこ負荷をかけなければ成長は難しい。
そこにきて、親子の確執というドロドロの課題は、かなり精神的にきついものではあるのですが、これを乗り越えることでかなりのレベルアップが見込まれるのではないでしょうか。
その証拠に、おそらく親子の確執を経験されている方は、小手先のことを考えるというより、自分の人生そのもの、自分の存在そのものについて考えている方が多いのではないでしょうか?
そうやって、課題意識を持ち、考え、少しずつ進んでいくことで確実に人間力が育まれるはずです。
目の前の機会をしっかり使うことができればいいな、と思うのですがいかがでしょうか。
今回のコラムの内容の一部を動画で解説しています。
よろしければどうぞ。
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