後継者

少しだけいつもより気持ちを入れて働いてみる ~後継者の家業との付き合い方

家業があるうちに生まれた子供は、後継者となる運命である。
そんな事が世間の常識的な感じで今も有効化されているように思います。
とはいっても、家業の仕事そのものが好きになれないとか、得意ではないとか、そんなアンマッチを感じる人は少なからずいらっしゃると思います。
私は最終的に、家業そのものをそのまま継ぐかどうかは、後継者が自己責任で決めるものだと思っています。
ただ、辞めたいと思っているとしたら、その前にちょっとだけ試してみてほしいことがあります。

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例えば、皆さんは直近に食べたごはん、どれくらい味わって食べたでしょうか?
私なんて早食いで、あまり噛まないので、ほとんど餌です。
しっかり、一回一回、噛んで、含んで、その味や触感を楽しんだ食事って、最後にしたのはいつでしょうか?
人生に置いて結構大事な「食べる」という習慣においても、上の空でやっているケースって結構あるんじゃないでしょうか。

それが仕事となると、もっとおざなりかもしれません。
いえ、きっとちゃんとやってることと思います。
ちゃんとやってるのだけど、それはどちらかというと、
・生活のために稼がなければならない
・ちゃんとやらないと叱られる
・自分が力をつけなければ周囲から何を言われるかわからない
といった困った事態を避けるための動機でやっていたりするのではないでしょうか。

子どもを使った有名な心理実験があります。
子どもたちに絵を描いてもらうのですが、ただ描いてもらった場合と、描くことでご褒美のお菓子をもらえる場合とを比較してみました。
すると、ご褒美をもらった子供たちは、こんどは自主的にではなく、ご褒美がないと描かない傾向が現われたと言います。
つまり、やったことの対価を受け取るという流れは、自主的な行動を制止してしまう傾向があるようです。

後継者にとって、親の会社を継ぐというのは「やらなければならない」仕事であることが多い。
褒美は、親から認められるという事。
子どもの頃に、とてもレアだけど親に認めてもらった経験をわずかでもしたので、やっぱり仕事でも親に認められたいと思いがち。
ここが一般企業の就職と違うところで、一般企業であれば人間関係が変わるのでリセットされることが、親の会社に入るというのはこのリセットが効かず、子どもの頃からの関係が継続されていくのです。

そうして「やらねばならぬ」という義務を負うと、そもそも面白くなくなります。
その結果、今の仕事が楽しくない、という状態になっている可能性もあるのではないかと思います。

これをリセットする方法の一つとして、「丁寧に、心を入れてやってみる」という事が挙げられます。
何だか精神論に見えるかもしれませんが、これは動機を変える作業なのです。

食べるというところで少し触れましたが、私たちは食べるという事をお腹が減らないようにするための作業にしがちです。
しかし、食べるという事に集中してみると、食べることそのものがどんなものかを知ることができるようになります。
仕事も同じで、仕事を「生活の糧」「叱られないため」「世間的な評価のため」「親に認められるため」という動機でやりがちなところを、「仕事そのものに集中する」という事で見方、動機を変える意図をもってやってみるのです。

仕事の準備、作業そのもの、お客様とのやり取りやその表情、そして手にした売上。
そういったもの一つひとつに気持ちを集中させて感じ取ることで、いつもと同じ仕事がまったく違ったものに見えることもあります。
そのうえで、その仕事がやっぱり好きになれないなら、きっとそうなのでしょう。
逆に、新たな魅力を発見できたとしたら、それはとても大事な一歩かもしれません。

気持ちを入れてやる。
ちょっと気を付けてみてはいかがでしょうか。

 

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