親の会社を事業承継するにあたって、後継者としては何かと新しいことをやりたくなります。
それ自体は悪いことではないと思うのですが、やりすぎると社内で何かとハレーションを起こしたりします。
ところで、伝統芸能の世界では、専門的な技術やしきたりを引き継いでいくにあたって「守破離」という考え方を大事にしているようです。
事業を引き継ぐ私たちにとっても、それは大事なものと言えるのかもしれません。
守破離の考え方を簡単に説明すると、
守:教えや型を守りそれを習得するステップ
破:受け継いだものを基礎として発展させるステップ
離:受け継いだ経験から新たなものを生み出すステップ
といった感じになるかと思います。
私自身そうだったのですが、あらためて振り返ってみた時「守」をしっかりやり切らず、いきなり「破」や「離」に行こうとしたことは否めません。
焦りがあったり、親とは違う個性を打ち出したかったり、いろんな思いの中で「守」をおざなりにしがちではないでしょうか。
多分当時の私は、「守」が大事と言っても納得できなかったと思うのですが、今は一周廻ってやっぱり「守」って大事だな、と思います。
なぜかというと、やっぱり長年やってきたビジネスのやり方というのは、それなりの理由があるやり方なのです。
もちろん時代に合わなくなっているものもあれば、そもそも意味のないことも含まれていることもあります。
伝統的な芸能や技術とは違い、あまり磨かれていない部分は少なからずあるのが中小企業ビジネスです。
ただそんなことも含めて、それを真摯に学ぶことで、先代であったり古参社員へのリスペクトをあらわすことが可能になります。
後継者がつまずくポイントの中で代表的なものが、人間関係の問題です。
これは、「今までのやり方」をないがしろにすることで、「今までの社員の頑張り」を否定していることになるからです。
そういった意味でも一旦は、今のやり方になじむ(つまり社員になじむ)というステップを経たうえで次の手を出していくのがいいと思います。
「破」のステップもまた、今までのことへのリスペクトがあるから、発展させるけど否定はしないという姿勢が求められます。
私たち後継者は無意識に、過去を否定してこれからを作ろうとしがちです。
しかし、過去をしっかり認めたうえで未来をつくるほうが、よほど安定感のある発展を経験できるのではないでしょうか。