事業承継

後継者の悩みは後継者固有の悩みではない

親の会社を継ぐ後継者という立場はとても特殊というイメージがあるかもしれません。
それでも経営者のコミュニティに入ると、40歳代前後の方のかなりの割合は親の会社を継ぐ後継者であったりもします。
恐らく彼らは、大なり小なり皆さんと同じような悩みを持っておられるはずです。
そして実は、親が商売をやっていない人も、やっぱり親子の確執を持っている人は少なからずいるものです。
私たち固有の問題ではないのです。

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ある知人の父親は、早くに奥様と離婚し、60歳過ぎからずっと一人暮らしをされていました。
75歳を過ぎるころから、だんだんと一人で置いとくのが心配ではあるものの、自分の家に迎え入れるような状況でもない。
そこで、介護の必要のない高齢者が暮らせる軽費老人ホームに親を入れることにしました。
親は、「誰にも迷惑はかけない」と言いつつ独り暮らしを続けようとしましたが、娘に強く言われてしぶしぶその軽費老人ホームに入ることを承諾しました。
そこに入るまでには随分と娘を罵倒したようですが。

実際に入ってみると、普段の生活は個室で、三食きちんとご飯が出てくる。
介護が必要な人向けの施設ではないので、外出も自由です。
費用も年金で支払って、少し自由にできるおこずかいが残ります。
なんだかんだ言って快適だったようです。

ただそこから年を追うごとに体調不良があちこちに出始めると、何かと問題を起こすようになりました。
施設の人とのトラブル、透析に通う病院とのトラブル、はたまた外出先でのけがなど。
どうやら本人は、娘や息子に会いに来てもらえないイライラが募っていたようですが、娘にしてみれば「そもそもそういう生き方をしてるのだから仕方がない」と言います。
なにしろ、施設に入れと言った娘に人でなし!と叫んだ男。
外面ばかり取り繕って、自分は文無しになり借金を作って金を無心に繰る親。
もううんざりだと言います。

顔も見たくないし、そもそも「誰にも迷惑かけずに死ぬ」なんて言ってたくせに、全部おぜん立てしないと動けない父親にほとほと嫌気がさしていたようです。

 

親が我を張り、自分の思いどおりにしようとする。
しかしそれはあまりうまく行く方法ではなくて、視野の狭い自分本位な考えであったりする。
けっか、子と上手くいかないなんて言う話は世間にごまんとあります。

この舞台が会社になった時、私たちのような「先代と後継者問題」になるわけです。
舞台がかわり、登場人物が家族だけではなく一般の従業員を交えて複雑化するので特殊な問題に見えますが、基本的な構造は同じです。
先代世代の頑固さが、他人(特に後継者)のアドバイスをはねのけてしまって、後継者はそれに憤慨するという構図です。
先ほど挙げた「施設入居にかんする親子の確執」問題と何ら基本構造は変わりません。

もちろん、常に後継者が正しいというつもりはありません。
先代の正しさも否定できないことも多いのですが、いずれにせよ、先代の頑固さを受け継ぎ、後継者もガンコさを発揮しているような状況が生まれることが多いと思います。

 

例えば「親の施設入居問題」は、親の死とともに解消されるのでしょうか?
たぶんそうとは言えないと思います。
ずっと気持ちの中で後を引く問題になることが多いのです。それは、「せいせいした」なんて言う状態なのかもしれないし、「ちゃんと仲直りしたほうが良かったかも」という後悔かもしれません。
どちらにせよ、あまり気持ちの良くない後味を残すことの方が多い。

だからやっぱり生きてる間に解消しておく方がいいのです。

じゃあどう解消すればいいかというと、相手が変わることは期待できません。
だから、自分が変わるのです。
どのように変わればいいかというと、簡単に言えば「相手の振る舞いを全く気にかけない自分」になれば万事オッケーなのです。
そんなことできるわけがない、と思われるかもしれませんが、実はそれは可能です。

なぜか親の言うことに腹が立つという人は多いと思います。
それには理由があります。
「親は何も知らないくせに、上から目線で口を出す」
という印象があり、そこにイラっとするんじゃないですか?

だとすると、親にライバル心を持っているという事です。
ライバル心は悪くないですが、そこが意固地になりすぎるからややこしくなるのです。
そこをもっとフラットにとらえられるような訓練が必要となります。
これは心の癖なので、その癖を治すことを考えてみるといいかもしれません。

  

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