後継者

同族企業で親子関係に疲れた後継者が、自分らしさを取り戻すための行動

後継者・二代目経営者が現状に不満を持っているとき、たいていまずは周囲を変えようとします。
私の経験をお話しすると、まずは、自分と意見の合わない親に、自分が思った通り動いてほしい、自分の後押しをしてほしいと考えます。
それはたいていかないませんので次に、自分のやることを邪魔しないでほしい、干渉しないでほしい、と思うようになります。
そしてそれもたいてい叶いません。

すると、親を会社から追い出すとか、自分がこの会社に居る以上は自分の能力を発揮できないとか考え始めます。
とはいえ、追い出すこともできないし、辞めることもできない。
そういう閉じた思考回路が回っているので、こんどは振出しに戻り同じ思考を辿ります。
このループを抜け出すには、違った次元で物事を考える必要があります。

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後継者・二代目経営者の最大の悩みは人間関係

Bob DmytによるPixabayからの画像

親との確執

後継者・二代目経営者において、最も大きな悩みは親と子の確執でしょう。多くの場合、同族経営とは言え、企業である以上はもっとドライな経営理論の問題が起こると考えがちです。しかし、実際のところは会社なんてところはウェットな問題だらけです。

例えば話で恐縮ですが、社員が会社を辞める理由は仕事があわないとか、報酬などの条件が合わないとかではなく、上司との人間関係というのがぶっちぎりのトップとのこと。そういう意味では、後継者・二代目経営者にとって親子の確執というのはまさに上司との人間関係です。

という事はつまり、経営理論といったロジカルなものではなく、非常にウェットな問題であるわけです。

従業員との溝

さらに、後継者・二代目経営者は、従業員とも大きな溝ができてしまうこともあります。
そもそも、社員たちは「社長の息子(娘)」という目で後継者・二代目を見ます。(そうでなくとも、後継者自身が妙に意識することもあるでしょう)
そういった、良くも悪くも特別な視線の中で、後継者・二代目経営者は自分の能力を示そうと自分の強さを示そうとしがちです。
たとえば、社員に対して強い姿勢で接するとか、弱音を吐くことなく常に前進の指令を出すとか、なんだか体育会系の厳しさを社員に強いるケースがけっこう見受けられます。

一方で、従業員の方々にとっては、親である創業社長には従いますが、後継者・二代目経営者には拒絶反応を示すことがあります。
もともと後継者・二代目経営者より先にいた先輩たちにもプライドはありますし、将来的に自分たちの脅威になりそうな存在ですから、排除しようと動くこともあるでしょう。

そんな事もあり、後継者・二代目経営者が頑張れば頑張るほど、会社の中で孤立する傾向が強くなっていきます。

人間関係の問題は自分の問題

Alexas_FotosによるPixabayからの画像

周りを変えようとする後継者・二代目経営者

賢明なみなさんはそうではないかもしれませんが、私は親と意見が合わず、社員とも心が離れたとき、とても不自由を感じていました。
その中で、自分が自分らしく生きるためにとった行動は、「相手の行動を自分に合わせよう」としたことです。
まず、先代をコントロールしようとしました。
自分の考えを伝え、説得し、自分に有利な方法で会社を経営したいと伝えました。
親は頭ではそのことを理解してくれたようですが、繰り出す言動は何一つ変わりません。おそらく、長年染みついた行動のクセ、言葉のクセはすぐには治るものではありません。
また、私の考えを理解したとはいえ、それが自分の信念になるほどには強固なものではなかったのでしょう。
結局、私の期待通りに親が変化してくれることはありませんでした。

ならば、と考えたのは親の排除です。
会議などには参加させず、そういった時間を親である創業者抜きの時間を会社の社員と多く過ごすことで、社員の注目を自分に集めようとしました。
しかしそれもあまりうまくいきません。
社員は、時折私と親とどちらの言葉に従っていいのか右往左往しているようにも見えました。

その状況を見て私は、やはり親は黙らせないと・・・と強く思ったことを記憶しています。

しかしそれから数年後、わかったことは、「自分は正しい」とばかり考えて、自分を変えることを全く考えていなかった、という事です。
これが親子関係、社内の人間関係が行かない最大の原因だと知ったのです。

パズルの隙間にムリヤリ自分をはめ込んではいけない

言ってみれば、人と周囲の関係はパズルのようなものです。
たくさんの人というピースで形成される一枚のパズルのなかの、自分もまた一つのピースと言えるでしょう。
そのピースというのは人によって大きさが違うとは思いますが、周囲の形とうまくあわなければパズルが完成しないのは同じです。
そこで私は、「自分はこのピースだ」という主張をし、周りのピースのヘリを壊してまで、自分には合わない隙間に自分というピースを差し込もうとしてきたのかもしれません。
ほんの少し、自分が変化すれば、キレイにハマるはずなのに、周囲のパズルを削って自分がそこに落ち着こうとしていたように思います。

自分が正しいのだから相手が変わればいい。
これは、言ってみればうぬぼれというか、上から目線というか、まあなんとも恥ずかしいお山の大将だな、と気づいたのはずいぶん後になってからです。
自分は自分が正しいことを証明しないと価値がないという思い込みがあった当時は、誰よりも自分が正しいという信念を曲げないように気張っていました。
しかし、人にどう思われようが、自分はそれなりに価値のある存在だと思うように気をつけ始めると、あら不思議。
人の言っていることを受け入れることができ、「じゃあ試してみようか」と彼らの意見に乗ることができるようになってきました。

ビフォーアフターを比較すれば、ただ自分で「自分はこれだけ頑張っているから正しいはず」という思いから、「みんなの良さ・良い意見を活かすことが自分の役割かも」と思い始めただけの話です。
そんな心境の変化一つで、社員との溝は埋まり、先代とも完ぺきとは言えないものの少しずつ歩み寄ることができるようになりました。

やった事はただ一つ。
物事に対して、謙虚に考えるよう気をつけただけなのです。

「なーーんだ」と思った方は・・・

ここまで読んで、がっかりされた方もいらっしゃると思います。
たぶん、困ってた当時の私がこれを読んでも、やっぱり「なーんだ」「精神論かよ」と思ったと思います。
これを信じてほしいといったところで意味がないので、一つ、こんなことを実践していただければと思います。

自分の考えが正しいか間違いかはひとまず置いておいて、その人の思考回路を借りてみましょう。

具体的には、
①他人の意見を一応最後まで聞く
②他人の意見に対し、「自分が知らないところで、この意見は自分の問題を解決する力を持っているのではないか?」という前提で検討してみる。
③可能であれば試してみる。(試してよくなければすぐにやめればいい)という三つのステップを試してみてほしいと思います。
そしてそこで見える、「いつもの思考回路なら見えなかった景色」を良ーく観察してみてください。もしかしたら何か発見するかもしれません。

こういった気づきは、座学では得られないものです。
ぜひ、実践して体感していただければと思います。

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