新たな事業を開始するとき鉄板の方法があります。
それは、一点突破・全面展開と呼ばれるもの。
簡単に言うと、新規参入に際しては、できるだけ狭いターゲット、狭い商品戦略で自社の存在感を市場にアピールし、地位が確立した時点で幅広く業務範囲を広げていくというもの。
たとえば、セルフ讃岐うどんのチェーン店ははじめは本当にうどんが中心でしたが、今やてんぷらや丼もの、その他のお総菜など様々なメニューをそろえて単価アップを目指しています。
会社の事業承継を考える中で、おそらく親の世代は「一点突破」のフェーズを全うしたのではないかと思います。
これが後継者の時代には、全面展開を行うフェーズという考え方もアリかもしれません。
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自分達の会社から業界の垣根を取っ払ってみてみる
多くの業界で垣根が溶け始めている
今月、Apple Watchのアプリが、医療機器の承認を受けたといいます。
振り返ってみれば、Appleという会社は、iPodで音楽との付き合い方を変え、そこに電話やネットという通信機能を融合させたiPhone、iPadをデビューさせ、さらには医療機器への進出。
ただの音楽プレイヤーが、今や医療機器まで発展してきたわけです。
これは、一点突破全面展開の典型的な例だと思いますが、その影響でかつて医療機器といえば特別なルートでしか流通していなかったものが、手近にあるもので代用できるという状況になってしまいました。
恐らく医療機器メーカーやその流通に携わる人にとっては、ちょっとした騒動じゃないかと思います。
逆に考えてみれば、どちらも精密機械で、センサー技術が必要で・・・とそういう分野に詳しくない私でも「技術としてはApple社ももっていた」技術なのかもしれないという想像はつきます。こういったものはつくることができても、同流通させるかが難しいところですが、すでに相応の支持者を持つApple Watchに組み込むことで、プラットフォームビジネス化してしまったのですから恐れ入ります。
こういった例に限らず、今、いろんな業界が、その境界をあいまいにさせているケース、けっこうあるんじゃないでしょうか。
たとえば、自動車に関して言えば、IT企業がつくる自動車テスラがあったり、SONYも電気自動車を開発しているそうですから、かなりの混戦模様です。逆にトヨタは、自動車メーカーという範疇から飛び出そうと頑張っているようです。どの企業も、自分たちがもっているものを活かせる場所を探しているようにも思えます。
ある仕事のために蓄えた技術や情報
規模の大小にかかわらず、どの企業も、自分たちの仕事のために蓄積した技術やノウハウ、情報や資格といったものが何かしらあると思います。私たちはこれまで多くの場合、「同業他社」との競争に生き抜くためにこれらのものを蓄積していたのではないでしょうか。しかし、これからはどうも、同業他社との競争をしていても意味のない時代がやってきたといえそうです。そんな間に、GAFAにやられちゃう、という感じでしょうか。
まあ、そういった企業とガチで戦うというのもゾッとしない話です。
じゃあどうすればいいかというところなのですが、私は、今の会社がもっているものをどこで活かすか?という事が一つのテーマになるのではないかと思っています。たとえば、Apple社は精密機械を設計し、テクノロジーによって解析、共有するといったことにはお手のものなのでしょう。これらの「自ら持てる力」を活かすのはどこか、と考えたときにすでに普及し始めているウェラブルデバイスだったわけです。あるいは医療機器への参入も意図したAppleWatchの開発だったのかもしれませんが、なんにせよ自分たちの持っている力を発揮できる場所を探した結果が現在なのだと思います。
こういった大規模グローバル企業とはまた違った持ち味が、私たち中小企業にはないものでしょうか。
たとえばお客様との関係性一つとってみても、大企業とは違った距離感でビジネスをしているはずです。GoogleもAppleも持っていないのが、顧客と直接つながる営業部隊だったりします。
それ以外でも、小さなものから大きなものまで、何かしらの特徴的なモノがあるのではないでしょうか。
先代(親)のフェーズと後継者(子)のフェーズ
針のように鋭く業界に参入
たとえば、親の世代が会社を創業したとしましょう。この時は、当然誰もあなたの会社を知りません。すると「なんでもできます」というわけにもいかないですから、ある程度商品やターゲットを絞って会社を軌道に乗せようとしたのではないかと思います。少なくとも、業界をまたいだビジネスを同時進行で作っていくような器用な人はそう多くはないと思います。となると、とても狭い分野に針のように鋭く業界に入り込み、そこで一定の地位を作ることが必要となってきます。
冒頭のお話でいけば先代のフェーズはまさに一点突破のフェーズです。
仮に親が創業者でなくとも、会社がたとえば従業員数50名を超えるぐらいの組織になっていなければ、一点突破のフェーズにとどまっている可能性が高いと思います。
であれば、後継者の役割は、ここから「全面展開」へ移していくフェーズに入るのがいいことが多いように思います。
その時に大事なのは、自分たちが何を持っているのかを正しく把握することです。
悲しいかな、経営に携わる人は自分や自分の会社に厳しい人が多いのです。だからどうしても「まだまだ駄目だ」といって、自分の会社の良い部分を認識できていないケースが多いように思います。
自社固有というより、まずは自分の業界の強みから
自分のことに対しては厳しいという話をしましたが、そういった場合まずは「自社」という縛りから抜け出て、そもそも自分たちの業界が他の業界と比べて勝っている点を考えてみるといいかもしれません。
たとえば、私の家業は保険代理店ですが、こういうビジネスをしていると、たぶんあまり口外しない仕事の悩み、身体の悩みなどを相談されることがけっこうあります。
こういった情報を、ほとんど苦労することなく収集できる業種はたぶん他にはあまりないと思っています。
また、事務に関する正確性はけっこうシビアに管理されていることが多かったりする一面もあります。
特に秀逸なのは損害保険の更新の仕組みです。
損害保険は一般的に1年契約が多く、その満期が近づくと1か月前に案内を送付し、連絡を入れ、手続きに至る仕組みが作り上げられていて、95%の方にはリピートしていただく形が出来上がっています。
こういった仕組みは、特徴的といえるかもしれません。
(逆にここをしっかりやっていなければ、クレームや損害賠償問題に発展するので割と注意を割いています)
この仕組みや特性を違うところで使うとすれば・・・と考えていくと、色々アイデアが沸き上がってきます。
全面展開はマストではないけれど
もちろん、ある特定分野に徹底的にこだわり抜く、という考え方もアリだと思います。
そこまでの専門性を求めてくださる顧客がいるなら、それもアリです。
いずれにせよ、自分がどういう方針で会社をかじ取りするかを考え、決めるという作業が、後継者には必要なのではないかと考えています。
ボーーッと生きてんじゃねーよ、と叱られるテレビ番組があるようですが、後継者も、ボーー―としてるわけにはいきません。
社内外を俯瞰して、自分はどっちの道をとるかを決めることが、結構大事な仕事の一つではないかと思うのですがいかがでしょうか。
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