後継者

将来のことを先代とまともに話し合いができない後継者の方へ

「これからどうする?」
会社のことを真剣に先代である親に訊ねてみる。しかし、きっと満足のいくような返答はないのかもしれません。
大事なことだから考えてもらわないと!と思うのですが、親である先代はいっこうに動かない。そんな様子にイライラする後継者・跡継ぎのかたは少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、良く考えてみると、先代である親はきっと即断即決の人ではないでしょうか。そういう人がグズグズ結論を先延ばしするには、相応の理由があるとは考えられないでしょうか。

 

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なぜ親である先代と将来の話ができないのか?

Víťa VálkaによるPixabayからの画像

今ではないいつか

私の家業は保険屋さんです。生命保険なども扱うので、お客様と「相続対策」なんて言う話をすることがありました。しかし、多くの方はのらりくらりとかわそうとします。比較的奥様は「ちゃんと整理してくださいよ」というのにご主人は「そうだな・・・」と言いつつ重い腰が上がりません。このままご主人に何かあったら、血みどろの争族になるのが目に見えているような人でさえ、なかなか対策をし始めない方が多いのです。
この辺りの深い心情はわかりませんが、恐らく、そういったことはできるだけ先延ばししたいのだと思います。相続というのは自分の死後の話。そういったことは元気な今、考えたくはないのです。

会社の経営も同様で、恐らく今はまだまだ先代は元気そのもの。多くの中小企業経営者はさしたる趣味もありませんから、仕事一筋です。暇つぶしに会社に来るような人がほとんどです。こういった人が、自分が会社からいなくなった時のことを考えるなど、苦痛でしかありません。出来る事なら、そんな事は先延ばししたいのです。

しかし、後継者・跡継ぎにも自分のタイミングがあります。だから、今のうちにはっきりさせてくれ、今のうちにある程度計画的な未来を見せてくれ。そんな思いで先代である親に、会社の将来のことを語るのでしょう。また厄介なことに、後継者・跡継ぎは決して親のやってきたことを否定するつもりはないものの、「今までの経営から、新しい経営へ」という主張は親にとっては自分が責められているかのように感じられることが多いのではないでしょうか。「今までの経営」を正しいと思ってやってきた先代にとっては、会社を刷新しようというムーブメントは自己否定に他ならないのです。

そういった意味で、何かと親にとっては都合の悪い話が多い世代交代・事業承継の話は、親にしてみればできる限り先延ばししたい話なのです。

後継者の不安解消か?先代の気持ちか?

親である先代と後継者・跡継ぎが未来の話をするとき、たいてい衝突というかあまりいい感じで終わらないのは、こういった理由があるのです。後継者・跡継ぎにとっては不確定な要素をできるだけ取り除きたいと思うし、先代である親についてはできるだけ不確定にしておきたい。先代である親がなぜ将来を不確定にしたいかと言えば、「早く引退したほうがいいというのはわかるけど、できるだけ先延ばししたい」という思いがあるからです。このシーソーゲームを行う中で、後継者が親を責めるという形態ももちろんありますが、それはそもそも逆のプレッシャーが前提になることも多いと思います。親が後継者に対して、「早く一人前になれ」という圧をかけるわけです。そういった圧を受けて後継者・跡継ぎは、自分が一人前になるには親がちゃんと物事を整理して引退すべきである、という反撃に出ます。反撃をのらりくらりとかわそうとする親は、だんだんと苦しくなるとさらに後継者に圧をかけます。自分が引退できないのはお前が半人前だからだ、と。

つまり、自分のふるまいは相手のせいであるとお互いが罪の擦り付け合いを起こしています。

相手がこうだから、自分はこうせざるを得ない。
双方がこういい続ければ、お互い解りあえるはずもありません。こうやって親子の確執が深まっていくのです。

大事なことなので、違う言葉でもう一度表現します。

親子の確執は、双方が相手に責任を押し付けあうことで起こるのです。

相手に期待しないということ

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 

 

相手に求めるという依存

後継者・跡継ぎの立場としては、会社の未来を託されたのだから、そもそも自分がこの会社にいるのは

会社の未来のためだから、自分のいうことが優先されるべき、と考えるのだと思います。親には親の事情があるかもしれないけど、ちゃんと後継者・跡継ぎである自分を尊重すべき、というのが後継者・跡継ぎの立場の考えだと思います。これは決して間違いではないと思います。
しかし、現実問題として、そういった風に会社から手を離せない親がいる、自分と会社の未来の関係についてを考えることが苦痛でふんぎりがつかない親がいるわけです。今まではそれを「早く踏ん切りをつけてくれ」と求める自分がいて、そうなることを期待している自分がいるわけです。

この期待値が実は厄介なもので、自分は親がそうなってくれると期待していますが、親は恐らくなんとか踏ん切りをつけないで行けるところまで行きたいと深層心理では考えているのではないでしょうか。私たち後継者の期待と、先代の理想はまったく相いれないところにあるわけです。すると、双方の期待は裏切られ、裏切られた期待は「自分を尊重しない振る舞い」という憎悪にも似た感情を燃え上がらせます。

ここで冷静に考えてみてください。そもそも、相手が自分の期待通りに動いてくれることを願うことそのものが、どこかムチャがないでしょうか。大胆な比喩をするなら、自分に振り向いてくれない異性を指さして、「あいつ、俺のことを好きにならないなんておかしい」と言っているのと変わりがないように思います。実際にはナンパではそんなことがあるようですね。勝手に声をかけておいて、無視されたら相手を罵倒して走り去るような人間が。相手が思い通りにならないことでイラつくのは、冷静に考えてみればちょっと子供じみた話かもしれません。
そして自分が言えば言う通りしてくれるはず、というのは悲しいかな相手への依存ともとれそうです。

相手に期待しない

だから、相手が「自分の思い通り動いてくれる」という期待は手放すべきだと私は考えています。「しかし、自分が正しいはずなのに」という方もいるかもしれません。しかし、物事の正誤なんてその時点ではわからないものです。太陽が地球の周りをまわっていることが当たり前だった時代もあるわけです。私たちが「正しい」と信じることにどの程度の意味があるのかと思うと、かなり危ういものだと思います。自分の正しさ、他人の誤りを意識し、主張するよりむしろ、今目の前にある事実に一つ一つ対処していくことが現実的な対処ではないでしょうか。

そこで、考えてみれば、未来が見えなくて困っているのは私たち後継者・跡継ぎです。先代はむしろ未来が見えないこと、不確定であることを望んでいるようですから。だとすると、困っている私たちが何かしらの対応を考えて行く必要があります。

しかし、自分が見ようとする未来へ向かうには、いろんな人の協力が必要です。この協力を取り付けるために私たちは、親に「あたりまえのことなんだから、将来のことをちゃんと決めてくれ」と迫っていました。ここであれ・・・と思います。どうやら、協力というより、親に強制してきてはいないでしょうか。もしそうだとすれば、そりゃあ反発されますよね。強制と反発は仲がいいのです。

また、利害関係においては、私達後継者・跡継ぎと、先代である親は反対の場所にいます。だから普通に、自分の言う通り動いてほしいと思っても、先代は動く動機(モチベーション)がないのです。建前上、会社を継がせるには、自分があれこれ干渉すべきでないことはわかっていると思うのですが、理屈でなく感情が会社を手放そうとしないのです。だから会社を引っ張り愛するのです。そもそも逆のベクトルに向かって動いている親に、自分がやりたいことをサポートしてもらうことを期待するのは辞めたほうがいいのではないでしょうか。こうするとあきらめムードに見えるかもしれませんがそうではありあせん。誰かの意志に依存せず、自分の意志を貫く方法を考えよう、と言っているのです。

自分はどうしたいか?

Ron PorterによるPixabayからの画像

親の意向に振り回されない

ここまで見てきたとおり、本音レベルで後継者・跡継ぎと、親である先代は違うベクトルに進んでいる可能性があります。さらにいうと、実は後継者・跡継ぎもまた「自分の思い通り動いてくれない親」という状況を隠れ蓑にして、一歩踏み出すことを躊躇していることもある場合があります。実は親がどうだったとしても、信じる道をすすめばいいのに、という後継者・跡継ぎの方は意外と多いです。今から20年前を振り返ると、私もそんな一人でした。自分で独り立ちすることが怖いのだけど、その怖さを表に出したくない。そんな時、親と自分の考えはずいぶん違ったので、親が自分と考えが違うことを理由に、会社での経営責任を回避しようとしていたのです。非常に巧妙な戦略なので、それをやってるときには自分でも気づかなかったのですが、今から振り返ると自分がビビってることを親のせいにしてたよなぁと思います。

今、何かしらの親との葛藤を抱えているとしたら、ちょっと考えてみてください。親と考えがあわないことで自分が何か得をしているとか、嫌なことをやらずに済んでいるとか、責任を逃れていることがないかを。もし、思い当たるものがあるとすれば、私たちは自分の弱さをカバーするために親との意見の不一致をスケープゴートにしている可能もあるかもしれません。

だから、否定されようが親が何を考えていようが、そんな親の意向を優先するのではなく、まずは自分の考えを優先させてみてください。そしてそれを実行に移す。そして、先代が自分よりも声が大きくて、社員が自分ではなく親についていくようなら、自分の人望のなさを問題視したほうが問題解決はしやすいはずです。親を黙らせることはかなり難しいですが、自分がリーダーシップを発揮するのはさほど難しいことではありません。誰かを変えて自分の居心地のいい環境を作るのではなく、自分が動いて居心地のいい環境を作るという原則をもつと、意外と親との意見の不一致も気にならなくなるものです。

親との話し合いは「理解を求めない」

親子の確執が出来上がってしまったら、あえて親とは一旦距離を取り、お互いが頭を冷やすことをお勧めしています。ただ、関係がそこまで悪くないとかいう状況で、何かしらの話し合いを行うとしたら、この事を肝に銘じておいたほうがいいと思います。「相手が理解する、という状態を求めない」ということです。相手がわかるというのは、相手の行動です。これをコントロールしようと思っても無理です。たいてい、話し合ってわかってもらったと思ったのに、実はわかってもらえていなかったということで話し合いの旅にガッカリするのです。だから、理解してもらえるとは思わないほうがいいです。ただ自分の考えを伝えるだけ。それを理解するかどうかは相手の選択です。ここに注意していれば、なんとなく親子の関係を俯瞰できるようになってくることもあるでしょう。
相手に求め、求めたとおりに相手が動かないから関係が悪化するのです。

今回のお話し全体に関して言えることをここで一言にまとめます。

相手が自分の期待に沿った振る舞いをしてくれると思ってはいけない。

とても大事なことだと思います。

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