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後継者・跡継ぎの成長とティール組織

ここ数年話題の「ティール組織」ってご存知でしょうか。
すごく簡単に言うと、組織の在り方は非常にフラットで、会社における重要な決定も現場で決めることができる組織です。その際に、一応相談はしなければならないけど、その相談に耳を貸す欠かさないかは本人の自由。そういう社員の一人一人が全てのことに対して自由でいて、責任を持ち、そのかわりノルマや規律によって強制されることのない組織。

良く経営者は「社員一人が経営者意識を持つべき」という言葉を発しますが、まさにそのことが現実化した組織といえます。だから、理想の組織という印象をビジネス界に与えていますが、どうも話はそう簡単でもなさそうです。

 

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リーダーの人間的成長以上の組織はつくれない

Trang LeによるPixabayからの画像

ティール組織の必須要件

『ティール組織』の著者である、フレデリック・ラル―氏は過去のリーダーシップを研究し、こんな風に組織形態を分類しました。

●レッド(衝動型)組織
もっとも古くからある組織も出る。恐怖で相手を服従させる形態。現代においてはマフィアなどで見られます。「今」を生きる組織のため、未来の長期的視野を見つめるのは苦手と言われています。

●アンバー(順応型)組織
権力や階級(役職)、官僚制、制度、秩序、統制などの概念を組織モデルに組み込むことによって生まれました。リーダーは、 家父長的な権威主義として組織の中に存在 します。また、承認欲求が芽生えたメンバーたちは、集団からはじき出されないようにするため、組織の設けた基準やルールを守り、秩序ある行動を取るように心掛けます。長期的視野を持てるようになった一方で、変化への柔軟な対応は難しい組織形態です。

●オレンジ(達成型)組織
組織や自身が社会的成功を収めるためにどのような行動を取るべきかを考え、実行に移せる組織形態。オレンジ組織のリーダーは経営を工学的な視点から眺め、 組織目標の達成と株主の利益 を何よりも重視します。人材を「組織という名の機械を最も効率よく動かすために、綿密な計画を練って配置するパーツ(経営資源)」として捉えるなど、 個々の従業員の想いや組織内の人間関係を軽視してしまう一面も。

●グリーン(多元型)組織
性別や人種、宗教、思想などに対する あらゆる制限を撤廃し、全ての人間が平等に機会を得られるように努めます 。リーダーは、オレンジ組織でよく見られる牽引型のリーダーシップではではなく、 縁の下の力持ちとして従業員や社員をサポートするサーバント・リーダーシップを発揮するよう心掛けます。さまざまなことを合意ですすめようとする良さがありますが、その反面、決断の素早さという意味では少し遅れを取る可能性があります。

●ティール(進化型)組織
管理者(マネジャー)やリーダーなどの役職が存在せず、上司や部下といった概念もありません。出世競争や派閥争いの原因となるヒエラルキーが存在せず、権限と責任がセットになっているため、他の発達段階に属するメンバーによる 暴走や権利の乱用といった問題はほとんど発生しません 。

参考資料 BIZ HINT記事『ティール組織』より抜粋

シンプルに表現すると、多くの欧米型の合理主義的企業は、「オレンジ(達成型)」組織と言えます。株価を最大化するため、あるいは売上を最大化するため、といった目標に向かうため、そこにいる個人に対する配慮は薄い。結果として、うつ病が続出する企業も多いと思います。

さてこういった組織形態に関して言うと、実は、絶対に欠かせない要素があると言います。それは、リーダー自身の発達段階を超えて上位の組織ができることはない、ということです。たとえば、自分がアンバー(達成型)の人間であるのに、グリーン(多元型)組織やましてやティール(進化型)組織に移行することは不可能だというのです。

経営者によくあるのは、他人をコントロールしたがるコントロール欲求がある人が、グリーンやティール組織を目指したい、という発言をするケースです。自身では「牽引型」のリーダーシップでグイグイ人を引っ張っておきながら、自主性をめざそう!なんていうわけですね。このダブルバインドがメンバーを混乱させているケースはよく見かけます。だから、経営者は「コントロール欲求」を消して、従業員のすべてを受容する器の大きさが重要になってくるのですが、自分のことは棚に上げておきたい方はけっこう多いように思います。ティール組織を目指したい、という経営者はけっこういますが、そのためにはまず自分を進化させなくてはなりませんよ、ということになります。

後継者の進化の方向とフレデリック・ラル―の進化の方向は一致する!?

後継者・跡継ぎ向けにこの「ティール組織」の話を持ち出したのは、皆さんに「そういう組織を作りましょう」という提案をするつもりなのではありません。もちろん、それを目指したいという方は、ぜひ勉強していただくと面白いジャンルだと思います。しかし、どっちにしても、ティール組織を提唱するフレデリック・ラル―氏はハッキリと、「リーダーの進化を組織は越えられない」と書いています。だからどっちにしても、後継者・跡継ぎとしては何かしらの進化・発展が必要となります。そして、私の考えでは、後継者・跡継ぎ自身が進化・発展を遂げると、目の前の悩みや苦しいことが消えてしまうと思っています。

もし「そんなことはない」と思われるのなら、少し思い起こしてほしいと思います。今、後継者・跡継ぎのみなさんが直面している問題のほとんどは、「自分の思った通り人や物事が動かない」ということに対するいら立ちではないでしょうか。従業員はあなたのいうことを聞かず、好き勝手する印象を持たれているかもしれません。なにより親である先代は、あなたのいうことは何一つ聞いてくれないでしょうし、そもそもあなたの意見を尊重しようともしないかもしれません。そしてあなたは、そこにイラついているのではないでしょうか。

きっと、皆さんの会社はここでいうアンバーからオレンジあたりではないかと思います。このステージにおいては、リーダーはメンバーをコントロールすることで組織を維持しようとしています。しかし、その次のステップは、どちらかと言えばリーダーが周囲に指示を出すのではなく、メンバー1人1人が自分事として会社のことを考え始めるフェーズだと思います。多くの経営者が望むこのステージに至るには、リーダーは極論、「表立っては何もしない」ということが重要になるのではないでしょうか。コントロール欲求などもってのほかです。

組織はコントロールしなくてもいい。こういう考えが体に染みついていくと、後継者・跡継ぎの持ちがちな問題は、かなりの部分解消されるのではないでしょうか。

そこへ向かうコツを元SONYの役員でAIBOなどの開発にも携わった、天外伺朗氏はこういいます。「毎週、社員に会社の問題点を発表させる。リーダーはそれに何も口を挟まず、提案せず、強制せずただ聴くだけ」これを続けていくと、だんだんと社員が自主性を発揮し始め、問題点への対処を考え始める。ティール組織の入り口はこの時に初めて開くのだそうです。そこで出現した未来に適宜対応するというちょっとした胆力が必要となります。

不安と闘うリーダー

272447によるPixabayからの画像

人がやることへの不安

このようにリーダーが何もしないと、何が起こるでしょう。まず、リーダーである私たちは、きっと「周囲の人にバカにされるかもしれない」「何もできない奴だと思われるかもしれない」などという感情をいだくかもしれません。逆に言うと、私達は多くの場合、自分がそうしたほうがいいと感じることではなく、周囲がこうすべきと考えている行動をやりがちなことに気付きます。そういった周囲の眼というプレッシャーから自分を独立させる、という一つの鍛錬と言えるかもしれません。後継者・跡継ぎ特有の悩みの一つとして、実際に「親の七光り」とか「ボンボン」「バカ息子」といった周囲の風評を気にするがゆえに、それを否定するかの如くストイックな生活をしてみたり、社員に強く何かを強制したりしているケースも多いと思います。まずはこういった「世間の眼」に負けない自分を獲得することが大事と言えるかもしれません。

また一方で、口出しせずに社員に任せるという行為、これは非常に不安を感じるかもしれません。自分なら気付くああいうポイントに気付くだろうか、自分なら対処できるけどあの社員に対処できるだろうか。こういった不安から、社員の自主性の芽を摘んできたのがおそらく過去の多くのリーダーです。これを完全に任せることで、その結果も含めてリーダーが責任を取るという覚悟を持つことはリーダーの器と言えるかもしれません。任せたら口を出さない。これができるリーダーがそもそもほとんどいません。だから、逆に言うと、グリーンやティールの組織がほとんど出てこないわけなのでしょう。

ここでお話しした「周囲の風評を気にしない」ことと、「メンバーを信頼して任せる」ことができれば、実は社内における親子の確執さえもきっと解消しているはずです。なぜかというと、まずは私達は先代社長の息子であるということから生まれる偏見を気にすることがなくなります。そして、親が何をやっても信頼して任せることができます。自分への干渉は少し厄介なところもありますが、私達がオレンジ組織的な「達成にコミットする」というメンタリティから抜け出すことができれば、意外と気にならなくなるのではないかと思うのです。

はじめのうちは不安しかないのですが、その不安と闘うことで、実はリーダーとしての胆力がつくように思います。そしてその結果、より大きな範囲で社員や状況を受容できる器ができれば、一歩進んだリーダーとしてその強さを発揮できるようになるかもしれません。

人を信用するという不安

たとえば子育てにおいて、見ていない時に子供が何をやっているか不安、という親はけっこういると思います。これは結局、子どもを信用していないということになってしまいます。心配は呪い、などと言われますが、こういった心配が大事な子供に与える影響を意識している親は意外と少ないかもしれません。
こんな心理実験があります。
ある教師に、1組は優秀な子供がそろったクラス、2組はそうでもないクラスと伝えて受け持たせます。実際は、1組も2組も同じ程度の学力なのですが、この結果どうなったかというと、教師が「優秀なクラス」と信じて授業した1組は本当に成績が大きく上がったそうです。人は扱ったように育つ、ということを証明したわけですが、「うちの子は何もできない」と思って育てると、何もできない子が育つ可能性があるわけです。

これは大人における組織でも同様で、リーダーが「ウチの社員は何をやらかすかわからない」と思っていると、何をやらかすかわからない社員になっていく可能性が高いわけです。けど、うちの社員は任せていれば安心という風に扱えば、その期待に応えようと高い能力を示すようになる可能性が高いと考えられます。しかし、リーダーとしては不安です。なにしろ、彼らが思った通りのパフォーマンスを出さなければ、痛い思いをするのはリーダーである私達です。それを恐怖で強制するのがレッド、権威で従わせるのがアンバー、外部の目標に向かわせるのがオレンジ。ここまでは、リーダーが責任回避のために強い権威を発揮するリーダーシップです。一方、グリーン以降の組織形態は、リーダーが責任を自分でもつ覚悟が必須になります。そうすると人を信用できず、またオレンジに戻るわけです。そこを超えるためには、まさにリーダーの成長が必要となります。ここで人を信頼し、その責任を引き受け、コントロールを手放せるかが進化のカギと言えそうです。

そして、コントロールを手放せば、後継者・跡継ぎ特有の悩みのほとんどは消えてしまいます。

かなり大きなチャレンジとなりますが、ティール組織を目指さなくとも、その手前のグリーン組織のリーダーシップが取れる自分を作っていくことを一つの目標にしていくと、後継者・跡継ぎの生き方としてはいい感じになっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

もう少し初歩的な話ですが、コントロールできる問題とそうでない問題についてお話ししてる動画です。
もしよろしければどうぞ。

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