後継者

次世代の後継者が大事にしたい3つの心構え

後継者・跡継ぎの方は、とても熱心な方が多いので、きっと「後継者 心構え」なんていうキーワードでネット検索をしたことがあるのではないでしょうか。

そうやって出てくるのは、
・先代である親を立てよ
・分をわきまえろ
・努力を怠らない
・謙虚であれ
・経営理念を大切にせよ
などなど。

ほかにもきっといろいろあると思うんですが、私なんかはこれ見てこう思います。
「仙人修行か!?」

いくつかにコメントさせていただくなら、先代を立てよというなら、先代が引退するまで自分はいつまでたっても従者であれ、ということです。そして、たいてい先代は「生涯現役」です。後継者が、経営者としての役割を果たすのは60歳を過ぎてからなのでしょうか。これでは大したことはできません。

経営理念に関しては、それを大事にしようとするときっと先代ともめます。先代は理念では飯は食えない、と思っている人が多いのではないでしょうか。

現場の実態から考えると、昭和の心構えは、ちょっぴり現代とはずれがありそうです。
そろそろきれいごとで話をするのはやめにしませんか?

では今の時代の後継者の心構えについてはどうあればいいのでしょうか。

私は次の3つのキーワードを提案したいと思います。
①ファシリテーション型リーダーシップ
②柔軟思考
③未来へフォーカス
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ファシリテーション型リーダーシップ

rawpixelによるPixabayからの画像

昭和時代、社員は部品だった

産業革命以降、仕事は細分化され、分業化されていきました。これは自分の隣で働く人が、何をやっているのかを知らないし、そこに関心も持たなせないようにしました。自分は自分のエリアだけを守り、責任を持たせる。一定のルールや取り決めの中で仕事をし、それを逸脱することはすべて問題行動でした。頭を使うのはマネジャー層で、現場の人間は手だけ動かせ、という考え方です。

高度に分業化された結果、マニュアルが整備され、個々の仕事は人の取り換えが容易になりました。つまり、会社を一つの機械としたときに、社員はその部品の一つ。だから、いつでも取り換えられるようにしておけばいい、という考え方だったのでしょう。結果このマネジメントスタイルは、製造業を効率化し、より安く大量に作る、という使命を帯びた企業の一つの形態として定着していきました。

社員部品化マネジメントの小型版がワンマン経営

中小企業においては、社長を中心としたワンマン経営が多いと思います。これは意思決定が速いのが最大の特徴。誰に相談することもなく、社長がすべてを決め、それを社員に卸していく。情報も、指示命令も、すべてトップの社長から下々の社員にあまねく伝えられるわけです。意志決定から情報伝達の仕組みとしては非常に効率的です。ただし、頭は一つです。この頭であるトップが判断を誤ると、その誤りに気付く仕組みがありません。その結果、会社があらぬ方向へ行ってしまうことも時にはあったように思います。

ただ、昭和の年代においては実は経営方針の大きな変更は必要がなかったことが多いように思います。今まで作ったり、扱ったり、売ったりしてきた商品サービスを、若干の改善は行ったとしても同じビジネスモデルで普及させ、収益を得る。こういった企業としての基本動作は変更がなかったため、頭が一つでOKでした。

社内を見回すと、社員全員が「ルーチンワーク」を延々とやっており、何か新しいものを生み出すような仕事をほとんど積極的にはしていない、というのがほとんどの中小企業ではないでしょうか。

「維持・継続」から「創造」の時代へ

昭和・平成を生き抜いてきた先代経営者は、いわば、創業時に起こした「創造」を言うフェーズから「維持・継続」を行ってきたのではないでしょうか。この時期には、目の前の仕事をうまく進めればそれで会社が成り立っていました。しかし、ほとんどの中小企業においては、新たな「創造」のフェーズに入っています。この段階では、知恵を絞る必要があります。そろそろ賞味期限が近付いた今までのビジネスから、ちょっと飛躍した新しい発想が必要となってきます。

会社がそういったフェーズに差し掛かった時、一人で考えるのもいいのですが、創業時と違うのはこれまでで蓄積されたものが社内にある、ということです。顧客リスト、人脈、技術、物理的資産、資格、ノウハウ、など。何かしら新しい展開をイメージしたときに、これらのリソース(資源)はできることなら十二分に活用したいところです。頭だって一つよりたくさんあるほうが、アイデアがたくさん出ます。

ブレーン・ストーミングってやったことはありますか?何人かで集まり、一つのテーマでばかげたものでもいいのでとにかく素早く思い付きをどんどん上げていきます。面白いことに、自分一人で考えていると詰まってしまうものが、人のアイデアを聞いて連想ゲームのように新たなアイデアが生まれる瞬間を経験すると、アイデア出しにおいて複数の人間がかかわることの価値はよくわかると思います。

会社のことを分かったメンバーとアイデア出しをするのはとても有意義な時間です。今までは社長の頭の中で考えてその結論だけが支持として飛んできていた組織を、そんな「成長過程を共に体験する」組織に変えていけたら素晴らしいな、と私は考えています。

メンバーのことを知っているからこそできること

ところで、2020年5月現在、世界中が新型コロナウィルスの影響で自粛状態です。こういう状況において、一気に進んだのがテレワーク・在宅ワークです。このことで明らかになったのは、会社と社員の関係性ではないでしょうか。たとえば、単に仕事の一部を切り分けて家でやるならば、雇用という関係は必要ありません。委託でいいのです。その結果、将来的には雇用ではなく委託で収めようという検討をする企業も耳にします。たとえば、私の友人の経営者は何社かが電話の対応を、そういった電話対応代行会社に委託しました。様々な業務を外注化していったときに、じゃあ、うちの会社には何が残るのか。ほとんどの業務を外注化する中で、残った社員とはどんな関係性を結ぶのか。こういった今までにはない問題が露呈してきています。

となると、後継者としては、今のメンバーでなければできないことは何か?という問いを持つことが必要になってくるのではないかと思うのです。従来は、トップが考え、それを実現する手足として社員がいたかのような構図があったように思います。これからは、考える動作から社員が入り、トップはどちらかといえばそういった社員の個性をうまく引き出し、活用するような立ち位置になるのではないかと思うのです。

そういう前提で考えるなら、私たちは「人間」というものをもっと知るべきだし、社員一人一人の個性や長所を知るべきだし、彼らの心に火をつける方法を学ぶべきではないかと思うのです。社員というのは、おそらく会社にとっての非常に重要な資産です。その資産を最大限活用できるよう、私たちは社員の活躍を促すことこそが重要な使命である、ととらえる必要があるのではないかと考えています。

柔軟思考

同じことの繰り返しになっていないか?

あるとき、社内の仕事をぼんやり見ていて、愕然としたことがあります。それは、去年と今年、やっている仕事の内容がほとんど変わっていなかったことです。5年さかのぼってみたり、10年さかのぼってみたりしても、使う道具は変わったかもしれませんが、本質的な部分は全く変わっていません。これは、かなり危ない状態じゃないか、と感じたのです。

自分自身の仕事も、朝から夕方まで、ほとんどすべてがいつもと同じように計画された日々です。ここに何の新しさもない。これでいいのだろうか?と心配になりました。

たとえば、Googleは、検索エンジンがあり、Gmailがあり、そのほかにも様々な使いやすいツールがあります。そこまでの先進企業じゃなくとも、自動車メーカーは常に新しい製品開発を行っていますし、カップラーメンだって時々マイナーチェンジを行ったりしますし、新製品をちょくちょく導入しています。

一方、自分の会社を見てみれば、会議はやるけど営業の数字の詰めくらい。社内の仕事の進め方の改善なんかは多少議論することもあるけど、小さな改善です。しかし、新しい価値を世に問うてるかというと、親が創業してから現在まで、ほとんどそういうことがなかったことに愕然とします。もちろんその際に取扱商品が変わったとか、ちょっとしたサービスの提供の仕方を変えたとか、小さな変化はありますが、さほど大きな進歩がないのです。

競合他社と顔を見合わせてほっとする!?

その原因は、中小企業がやっているビジネスというのは、たいてい歴史が古いものも多く、それなりに〇〇業界という区切りがしっかりしているケースがあるのではないでしょうか。近年は弱体化しているかもしれませんが、一応業界団体みたいなのがあって、かつてはその団体も結構な力を持っていましたね、という感じではないですか。

こういう業界になると、基本的にベンチマーク先は同業他社です。競合社がなにかをやれば、自分も真似をする。同業他社からは遅れたくはないけど、自分からは大胆なことは始めない。それは業界ルールのような暗黙のルールがあって、この業界の人間はこういうことをしてはいけない、というムードがあったりします。たとえば、私の家業である保険代理店の世界では、何か違うビジネスを始めるなんて言うと、村八分にされそうな冷たい視線を浴びたものです。なかには「邪道だ!」なんて怒り出す人もいるくらいでした。

私の知る業界以外にもきっと似たような業界がたくさんあると思います。そういった時、その業界常識の中に埋もれていると、そもそもその業界の人たちとは違うことをやろう、という意識さえ芽生えないことがほとんどです。そんな談合めいた業界の常識を飛び越えてお客様から見てどうか、という基準で物事を考える心構えが必要です。

会社には出社しなければいけないの?

さらに言うなら、日本の常識さえも疑うことが必要なこともあるのではないか、と思うのです。その一つが、会社への出社が仕事として当たり前である、という考え方ですね。これはすでに崩壊しつつありますが、結構あるのがコロナ禍がさればまた出社しよう、という考え方に流れがちです。

それが必要なことであればそれもありですが、せっかく価値を感じたテレワーク、せっかくだから元に戻さず続けていく、というこだわりがあってもいいようにも思います。

週休三日の導入をするとか、本社をなくしてしまうとか、いろんな従来の非常識が、未来の常識となる芽が次々と出てきているように思います。なんにせよ、後継者・跡継ぎとして、何かの問いかけが会った時、脊髄反射的に「NO」という前に、その問いかけを真摯に受け止め、可能性を検討し、判断することが大事なのではないかと思います。

未来へフォーカスする

Víťa VálkaによるPixabayからの画像

どうやってきたかではなく、どうしたいか?

大企業病という言葉を聞いたことがあると思います。
Wikipediaで大企業病を調べると、こんな風に書かれています。

組織が大きくなることにより経営者と従業員の意思疎通が不十分となり、結果として、組織内部に官僚主義、セクショナリズム、責任転嫁、縦割り主義などが蔓延し、組織の非活性をもたらす。社員は不要な仕事を作り出し、細分化された仕事をこなすようになる傾向がある。

私は大企業病を一つの言葉に集約するとしたら、責任転嫁というものが中心にあるんじゃないかと思っています。何かが起こった時に、自分が責任を負わないための意思決定プロセスが基本です。だから、何か起こった時の言い訳が出来ないことはやらない、ということになります。最も重要なのが「前例」でしょう。前例があれば、「前例があるからやりました」と言えるわけです。けど前例がないとできない。これでは進歩はなかなか望めませんよね。

じゃあこれは大企業だけの問題か、というとどうもそうでもないようです。中小企業においても、割と上下関係のはっきりした会社、ヒエラルキーの構造がガチガチに出来上がっている会社は規模が小さくても同じようなことがおこります。まあ、大企業は多少のゆとりも、ブランドもあるから、そんな事でもたもたしてても、何とかなっているのが実情です。しかし、中小企業において、小回りが悪ければ何をもって大企業と差別化できるのでしょうか。

そういった実務レベルの話ももちろんそうですが、もっと大事なのは会社の未来です。リーダーという言葉を定義するのはいろんな言葉がありますが、ざっくりいうと到達すべき未来を指し示し、そこへの生き方を示唆するあるいはそこへ行くよう組織を動かす人のことを言うのではないでしょうか。もしそれが正しいとすれば、指し示すべき未来が必要になります。そしてその未来は、「対前年比〇%アップ」という従業員のモチベーションにつながらないものではなく、自分たちの企業が社会にどんなインパクトを与えるか、という部分が結構大事なのではないでしょうか。

昭和時代の起業家が、木箱の上にのぼって「世界に通用する企業にするぞ」とのたまった話は一つや二つではなかったかと思います。そういった思いを持つ。そういった思いを語る。これが後継者としての心構えの一つではないかと思うのです。とかく、会社を継ぐ、という文脈の中で考えると、私達は会社の形をあまり変えず、外からの圧力に合わせて調整していくイメージが強いと思います。しかし、会社は守りに入ると守れないのではないかと思います。攻めに転ずれば、ダメになることもあるけど、うまくいくこともある。そこにかける思いは必要じゃないかと思います。親の会社を継ぐ、という言葉と矛盾するかもしれませんが、会社をつぶしてでも実現したいこと、を心に生み出すことが大事なのではないでしょうか。

過去やってきたことを意識しすぎることなく、やりたいことを実現していくパワーが大事なのではないでしょうか。

未来予測

そうすると、どうしても一定程度の未来予測は必要です。何しろ、船を出して向かう先が、熱帯雨林なのか、寒冷地なのかで準備ややること、期待できる成果も変わってくるでしょう。この先に何があるかをある程度予測し、その予測に従って会社を作り替えていくことが必要になってきます。多くの帝王学のなかには、必ずと言っていいほど占いめいたものが伝えられているのは、それほどまでにリーダーが未来の社会の変化を気にしたからでしょう。

そういった占いに頼る頼らないは別として、私たち後継者は自分なりの未来予測をする必要があります。これはごく簡単に考えるなら、今の状況から何が起こるかを辿っていく、ということを習慣にしてはいかがでしょうか。たとえば、今、コロナ禍でテレワークが広まったわけです。これがじゃあある程度落ち着いたらどうなるでしょうか?多くの企業では「ああ、終わった」とホッとしてテレワーク終了となるのでしょうか。それとも、一定程度のテレワークは当たり前のように残すのでしょうか。そういった方向性を予測するだけで、その次の社会がまた一段と変わってきます。じゃあ、テレワークが当たり前になった世の中だと、社員の気持ちはどんな風に変わるだろうか、会社との関係性はどうなるだろうか。

まあ、この辺りは当たる時もあれば、外れるときもあります。ただ、常にそういった予測をし、答え合わせを日々することで、その精度は少しは上がってくるのではないでしょうか。何事も練習です。そうやって、世界がどっちに動くかアタリをつければ、それに合わせて会社をどうかじを切るかがわかるわけです。冷たい南極がこの先にある、とわかれば、砕氷船と防寒具を手に入れる必要がある、ということがわかるわけです。

後継者の成功の秘策はない!?

会社の跡継ぎともなれば、あれもこれも、とやることはいっぱいです。そういったものをすべて総括して、「これさえやれば大丈夫」「〇〇さえ学べば、明日から最高の後継者ライフが待っている」なんて言うことは恐らくありません。となると、何かしらのゴールを自分で決めて(そのゴールは会社を引き継ぎ、安定飛行することではない、と私は思っています)、自分の道を歩むことです。だから、何と何を検討すべき、という話はできても、こうすれば絶対OKなんていうことはそうそう言えるものではありません。

私は後継者・跡継ぎの個人的なゴールとしては、会社を引退するとき「ああ、やりきったな」と思える状態だと思っています。それは、思い浮かんだことをすべてできた、という意味ではなくてかぎられた時間の中で自分は自分ができる最大限を一生懸命やり切った、という意味です。そういう感覚を得られることが後継者・跡継ぎの個人的なゴールだと思っています。そこに至るには、今回提示した三つの心構えというものは、結構大事になってくるんじゃないかと思います。社会や会社に自分を合わせるのではなく、自分の個性を活かすために社会や会社とのかかわり方を探るのが、その裏にある意味です。

この文章はあくまでキッカケであって、答えは用意していませんが、何かの参考になれば幸いです。

 

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