後継者

親を会社から追い出したい、と考えている後継者が考えておきたいこと

家業を継ぐ跡継ぎとして、親の会社を継ぐ後継者として会社に入ったもののいろんなことがうまくいかない。
やりたいことはやれず、誰も自分についてこず、結局一人孤立してしまう。

そういった時、ふと頭をよぎることがあります。
親が会社からいなくなれば良くなるのでは・・・。
そして、どうすれば親を会社から追い出せるのだろう?なんてネット検索してみる。
まあどこまで本気かはともかくとして、方法を知っておきたいのでしょうね。

私も検索した時期がありました・・・。

で、たまに本当に親を会社から追い出す人もいるのですが、その前にちょっとだけお付き合いいただけると幸いです。
確かに、会社に親がいるとやりにくいことがあるのは事実かもしれませんが、親を排除したからと言って上手くいくことばかりではないことも多いように思うのです。

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親を追放して、会社はよくなるか?

社内の風紀を乱し始めたある先代経営者の事例

社員数30名程度の製造業において、三代目経営者からお話を伺う機会がありました。
その三代目経営者の年齢は45歳。二代目である先代経営者である親は70歳を少し過ぎたくらいの年齢です。
後継者(三代目)は言います。
「最近、先代の発言がちょっとおかしな方向に行ってるんです。たとえば、自分に都合の悪いことが起こると、お客様のせいにするんです。会社としてこれを放置するわけもいかず、先代には会社にはフルタイムで来ないようにお願いしました」

年齢の問題なのでしょうか。経営者も年を追うごとに、だんだんと視野が狭くなり、一般的な判断が難しくなってきたり、意固地になったりすることもあるようです。自分に問題がある事をお客様のせいにしたりしてしまう様子が他の社員に与える影響を考えると、放置するわけにはいきません。とはいえ、長年会社の発展に寄与してきた親を無下にすることもできず、会社に来てもいいけど、できるだけ時短でお願いします、というところで折り合いがついたようです。
その時から先代(会長)は、午後からの数時間の出勤。社員さんとは少し離した席(ついたてを立てた“会長ブース”)に座っておられたので、だんだんと寂しくなられたのか、会社に来る頻度も少なくなってきたようです。

三代目(後継者)は後にこんなことを言っていました。
「たしかに、先代が変なことを言い出さないかとハラハラすることはなくなりましたが、だからといって会社が目に見えてよくなったわけでもない。とりあえず今回は、時短出社ということで折り合いがつきましたけど、強引に辞めさせたとしたら、社内外にあまりいい影響はなかったかもしれません」

はっきり言って、辞めさせる、辞めさせない、どっちがいいかはケース・バイ・ケースだと思います。ただ、後継者が思ったほどの効果があるとは限らないようです。

親が会社を辞めて劇的によくなった事例は意外と少ない!?

これは私の耳に入る情報に限定した話です。まず、親との折り合いが悪く、確執をおこしてます、という話が前提にあった時、自分が辞めるなり、親を辞めさせるといったことまで突き進むケースはそんなには多くないように思います。たいていは、その手前で思いとどまります。
親を辞めさせるというのはともかくとして、自分が辞めるなら比較的ハードルは低いと思うのですが、それでも実行に移す人は意外と少ないと思います。

どうやらそこまで思いきれない事情があるのでしょう。

さらに言うと、どうしても親が気に入らない、と親を辞めさせたケース、あるいは、何らかの理由で親が会社を辞めざるを得なくなったケースをいくつか知っていますが、じゃあそれで会社が劇的に良くなったか?というと、実はそうでもないことがほとんどです。
もちろん、細かい部分で様々な変化はあると思うのですが、数か月もすると、妙な形で落ち着いてしまうのです。
親がいる間は、改革だとか、変化だ、とか言っていた後継者も、親がいなくなるとおとなしくなってしまうことが結構多いのです。改革するなら今でしょう、というところにいるにもかかわらず、逆に保守派に入ってしまうのです。

それは、今まで意識しなかった「守るべきもの」の重圧かもしれませんし、逆に親が会社にいた時期には、親への反発心だったり、親を意識してそれを超えなきゃ、と焦る自分がいたのかもしれません。なんにせよ、念願の「自由」を得た途端、何をやっていいかわからなくなる後継者を何人か見ています。

mhougeによるPixabayからの画像

つねに「問題社員」はついて回る

問題社員の存在は自分の問題

経営者仲間の中では気付いている人も多いのですが、会社の中に問題社員がいるとします。一定程度の指導をしても改善されないと、何とか解雇したいと思う気持ちがふつふつとわいてきます。そう思っていると不思議なことに、そういう社員はやめていくことも多いのですが、さらに不思議なことにその後、別の社員が問題化したり、新たに雇用した社員がさらに大きな問題を持ち込んでくることはよくある話です。

社員の問題は、実は会社のシステムや社風の問題であったり、中小企業の場合は経営者自身の問題が投影されたものであることが結構あります。

私の場合、いくら社員を入れ替えても、形を変えて彼らは私が困るような事態をどこかから持ってくることがありました。そして、人によってはやめていただいたり、自分から辞めていったりしたケースもあるのですが、それで問題は終わらないのです。必ず別の人が、違う形で困りごとを持ち込んできました。

これを不思議に思って、その「困りごと」の共通点を探っていくと、私と社員のコミュニケーションにあることがわかりました。不思議なことに、私がコミュニケーションを改めると、そういった問題は影をひそめるようになりました。

心理学においては「投影」という言葉があります。これは、自分の内にある問題を他人に見ることを言います。
具体的に言えば、例えば私はきれいごとを言う人があまり好きではありません。
だから自分では、裏も表も隠し事なく言葉にしようとするわけですが、そうするといろんな誤解を受けることもあります。そんな葛藤が自分の中にあるのに、あいつはなぜあれだけきれいごとを平気でいうのか、というちょっとした嫉妬心的なものが自分の中にあるんですね。
だから、歯の浮くようなきれいごとを言う人をみるとちょっと気持ちがざわつくのです。

ほかにわかりやすい話をすると、「ぶりっこは嫌い」という人に限って、実は自分の中にはぶりっ子でありたいけどそうはできないという葛藤があったりします。
自分の本当の望みを相手に見るから、イラっと来るわけです。

また、どんくさい人を小ばかにする人に限って、自分はどんくささを隠すためにいつも気が張っているとかいうこともあったりします。

だから、問題な人がいるというよりも、私自身が彼らの中の問題に敏感になってしまう、という現実があるんだと思うのです。つまり、そういったことを知り、自分を克服する方向へ動かなければ、同じ問題が人や形をかえてやってくる、ということなのです。

親が嫌いな理由

親子経営で、何かと親に対してむかつく、ということは結構あると思います。だんだんと、何をやってもうざい、となります。
それは親子であるが故、上から目線的なアドバイスだったり、過干渉だったり、いろんな理由があるんじゃないかとは思います。しかしその根底に、親子は似ている、というのがあるのではないでしょうか。

そりゃあ、親の価値観をもとに育てられた子供が、似てないはずがありません。
そうすると、自分がやりたくてもやれずに隠していることを、親は平気でやる。
これがむかついて仕方がないのです。

親はいつも、言うことがころころ変わる、という後継者に限って、家では自分の言うことがころころ変わったりしていないでしょうか。
親はいつも自分に干渉する、という後継者に限って、うちでは配偶者や子供に結構干渉していないでしょうか。
ほかに色々見ていくと、似ている部分は結構見つかるんじゃないかと思います。

とすると、例えば今、親を会社から追い出したとしても、また何かしら違う形で後継者にとっての不都合は必ず起こります。
それはこれまでお話ししたとおり、トラブルは自分の内面が現実に現れている姿だからです。
これは別にスピリチュアルな話でも何でもなく、ほかの人なら問題にならない、あるいは簡単に処理できる問題でも、それを大きくとらえてしまう自分がいる、ということなのです。
気にしない人もいるであろう出来事を、強く意識する自分がいるといえばわかりやすいでしょうか。

だから、後継者としては、「先代である親」という刺激物を自分から遠ざけることが最適な解ではないといえないでしょうか。
その刺激を、刺激ではないというくらいに慣れてしまうというハードルを越える必要に接しているように思うのです。
克服できないまま次へ進もうとするから、会社だってなかなか思うようにはうまくいかないことが多いのではないか、と私は考えています。
自分の活動に制限を加える親を追い出しても、目の覚めるような成功事例は多くはないからです。

つまり、自分が克服すべき内面の部分を、親の中に見ている、ということなのです。

もちろん、そういったことも含んだうえで、それでも追い出したい、というなら法的な手続きを踏めばいいと思います。私は道徳的に「親を追い出してはいけない」といってるつもりはありません。それで何のわだかまりもなければ、やってみればいいと思っています。

ただ、親を遠ざけたとしても、必ずこういった問題は形や登場人物を変えてやってきます。それは仕事とは違うシーンで出てくるのかもしれませんが、それなりに向き合う必要がある形で出てくるはずです。あえて言うなら、親が問題なのではなく、親のことを問題視して、スルー出来ない自分の問題なのです。

判断しない癖

では、そういった私的な「感情」をどう乗り越えていくか。これに関して、さまざまな方法論が明らかにされていますが、内面的なことだけにすぐに効果が表れるとはいいがたいようです。最近目にしたものの中では、天外伺朗氏の本に紹介されていた、「物事を判断しない」トレーニングがよさそうでした。

具体的には、物事の善悪、良しあしといった判断を一切しないように気を付けます。たとえば、親である先代が自分の意見を社員の前で完全否定したとします。普通なら、即座にカッとなるところでしょうが、ちょっとまてよ、といったん止まります。まず、親が社員の前で自分の意見を否定したという事実を受け入れます。普通なら、「なんでそんなに自分の立場を悪化させるようなことをするのか」みたいな思いが沸き上がってくると思います。しかし、それを制止して、「ああ、先代はみんなの前で自分の意見を否定したな」と確認するにとどめます。良いも悪いもなく、恥をかかされたとかそういうことを一切考えず、ただ、事実としてとらえます。
これは何をしているかというと、事実と感情を切り離すことにつながります。たとえば、誰かが大声を出すとムカつく、という一連の反応を私たちはしがちです。しかし、無意識のところでは、誰かが大声をだしたという事実に対して自分が一瞬恐怖を感じ、その恐怖をカバーするために怒りが表面に出てくる、というような反応をほぼ反射していることになります。だから意識としては、大声を聞いた→ムカついたとなりますが、その間をつなぐ「恐怖」という感情があるわけです。じゃあ、その恐怖はどこからやってくるのかというと、大きな声に関して言えば野生で生きていた時代の人としての本能かもしれませんし、かつて経験した「大声で叱られた」という経験が思い起こされて出てきた反応かもしれません。

そういったシステムが自分のなかにある事に気付くには、まずは、事実を事実としてとらえ、感情は感情としてとらえる必要があるのです。

これは例えば、テレビでインタビューに答える政治家を無能だと思い、無性に腹が立ったとしましょう。何が腹が立つって、あの政治家の言っていることはどう考えても間違っている、と思うのでしょう。しかし、政治家の言葉→怒りという反応の間には、何か自分のなかでの化学反応めいたことが起こっているわけです。だから、ああ、あの政治家はあんなことを言っているんだね。以上、なのです。それを良し悪しで判断しないようにするのです。そもそも「良いか悪いか」なんて言うのはあくまでもその人の思い込みです。身体が不自由な人が「かわいそう」というのは、周囲の人間の思い込みであって、本人にしてみたら、「だからこそ幸せで濃厚な人生を送ることができている」と考えているかもしれません。

そういった、過敏な反応をまずはやめてください。

これを親とのやり取りの中でも実践します。自分がやろうとしたことに否定的な意見を言っていたことに気付いたら、「親は否定的な意見を言っているな」と確認します。これ、けっこう大変ですね。なにしろ、否定的な意見を言われた瞬間、私達はアドレナリンが出て、逃走あるいは闘争モードに入っているはずです。それを感じたらそのモードを解除して、親の言葉を受け止めてみてください。

そうすると、

自分の外で起きる出来事という刺激 → 自分の内面に構築されたシステム → 自分の行動や感情

といったところの、真ん中の部分、「自分の内面に構築されたシステム」がどういうものかわかり始めます。
日頃の私たちは、外で起きる刺激から一足飛びに、行動や感情を呼び起こしていますが、実際にはその間でどんな反応を起こすかを決めているシステムがあるのです。ここに多くの問題が隠れているから、社員が入れ替わっても問題は消えないし、先代を追い出しても会社は良くなりにくいのです。
まずはこの自分の内面にあるシステム、どういう刺激を与えたら、どういう行動を超すかというプログラムの存在に気付き、そこがどう動いているかを知っておくと、一見自分の外で起こっていると思える問題が、自分の内面のプログラムに依存していたということがよくわかるようになります。

はじめのうちは難しいかもしれませんが、天外さんはこれを6か月続けなさいといいます。騙されたと思ってやってみると、自分が世界をどうとらえているかという認知システムの概要が明らかになるので、経営のみならず人生そのものの在り方にインパクトを及ぼすかもしれない気づきを得られるかもしれません。

 

 

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