引退しない親と引退させたい後継者

親はいつになったら会社を引退するのだろう?
そんな事をずっと気にしていた時期がありました。
親の会社を引き継ぐつもりで会社に入社した跡継ぎとして、私は自分なりに「こうしよう」という思いがありました。
しかし、それはあまり思うように進まないのです。

一方、親は時折「わしは〇歳になったら引退するから、そのつもりで」と何度も念押しする。
自分なりに頑張ってみるけど、その年齢になっても親は引退しない。
なぜかというと私はまだまだ頼りないらしい。

そんな中、いつまでも未熟な自分に日々頭を抱えていましたが、ほんのわずかなキッカケで私はそんな状態から抜け出すことができました。
それはどんなきっかけだったのか。
少しお話しさせてください。

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〇歳になったら引退する、と言い続けた親

「引退する」は伸び続ける

親の会社の跡継ぎとして私は親の会社に入社しました。
現場の実務も非常に複雑で専門的であるため、何年たっても自信らしきものを得ることはできません。
さらには会社を束ねていくなど、とてもではないけどできそうにない。
そんな自分でしたが、親は当初65歳で引退する、と公言していました。
ですから、私は何とかそこまでに一人前にならなければ、と必死でした。

しかし、思うように成長できるかと言えば、なかなかうまくはいきません。

それでも親は引退するというのだから、少しでもやれることをやろうとは思っていました。
どんなことでも初めてのことは失敗がつきものです。
なんとかやれる範囲でやりながら覚えていこう。
そう思っていました。
8割は不安でしたが、2割くらいはちょっと楽しみな部分もありました。

なにしろ、今までは新しいことをやろうとすると、いつも親の顔色を窺っていました。
しかも、会社に行く時点で親の視界に入るのがイヤでしょうがなかったのです。
だから不安の方が大きいにもかかわらず、親の視界から離れる事は楽しみでもありました。

そして父が65歳になった時、いつになったら引退するのだろう?と思っていたらこう言われました。
「まだまだお前には任せられないから、もう少し続ける。70歳になるころまでにはしっかりしておけ」。
ああ、そうか。
確かに自分は半人前。
そういわれても仕方ない。
当時はそんな風に思っていました。

今度こそはと努力をすると・・・

65歳の時に私は半人前でした。
ちゃんとしなきゃならないと思うので、いろんなことを考え始めました。
主要なお客さんのことを知ろうと、親に聞くわけですが面倒くさそうに「そんなことはそのうち教える」と言われます。
会社のもろもろの手続きについても、何一つ教えてくれる様子もない。
たまに教えてもらっても、なんだかダメ出しばかりでテンパってしまう。
まあ、自己嫌悪しかありません。

そんな状況でどんどん自信を失うのですが、なんとか気を取り直してやってみるわけです。
そして親が70歳になった時、こういわれるのです。
「そろそろ引退するつもりでいたけど、まだまだだから75歳までは・・・」
はあ。
またテストに合格できなかった。
私はそんな心境でした。

けどだんだんと、反発したくなる思いも出てきます。
何事も「ある日突然できる」なんて言うことはありません。
だからこそ少しずつ「試してみる」ことが必要じゃないのか。
何でもかんでもある日突然やれと言われたってできるものでもないんじゃないか。
そもそも、そういう計画も打合せもなしに、思い付きで言われたって困るんだよ。

で、できなきゃ自分のせい?
それっておかしくないか?と思い始めたのです。

もう信用しない

親が70歳を過ぎるころ、私は親の「辞める」という言葉を信用しなくなりました。
一時期、「せめて自社株は、自分に集中するように」とか、税理士を通じて遺言を作っておくようにとか、色々言いました。
しかし私が行ったとこで、親は言う通りに動くとも思えません。
また、ちょっと体調を崩すと「辞める」といい、元気になると「生涯現役」なんて言う風に言いだす親のいう事はいちいち反応するだけで無駄だという風に思うようになりました。
だから私はいつもそんな話を聴くと、「ふーん」と聞き流すだけ。
いちいちその言葉に振り回されることに疲れたというのもあるかもしれません。

自分のなかに見つけた「裏の目標」

「辞める辞める詐欺」の中に見つけた自分の本心

親は辞めるというものの、本当にやめるような行動をしない。
私が印象として持っていたのは「早く辞めればいいのに」という自分の感情。
なぜなら、そうすることで、自分の居場所を会社に作ることができると感じたからです。
しかし一方で、冷静に考えてみると、辞めないでいてほしい、という思いもある事に気付きます。
なにしろ、色々と面倒くさいことを親はやってくれているからです。

例えば、資金繰りとかいう前進する話ではないけど大事な仕事は正直やりたくない。
お金に関する責任なんて持ちたくないのです。
しかし、お金の使い方に関しては、自分の考え通りに進めたいのです。
なにしろこれは将来にわたって大事なことだから(と自分で自分を納得させています)。
そうやってうまい具合に自分を正当化していることにふと気づいたのです。

そういったことを考えると、責任はもちたくないけど、自由にやりたいという、ちょっとした甘えを自分のなかに見つけるのです。
ああ、そりゃあ、親は辞めないよね。
そう思いました。
親は本音レベルでは、会社を辞めたくありません。
だけど年齢には勝てないから、渋々引退を考えます。
後継者は(少なくとも私に関して言えば)親の会社の責任を一手に引き受けたくありません。
だけど立場上しかたがないから、責任を持とうと頑張ります。

つまり本音レベルで言うと、会社を譲りたくもないし、譲られたくもない。
私はこれを、親子の承継の「裏の目標」と呼んでいます。
この裏の目標があるから、親子の事業承継は難しくなるのです。
そこを必要に駆られてやっているんだ、というなかで体裁を保っているという感じではないでしょうか。

裏の目標を知ってはじめて対処できる

実はこの「裏の目標」の存在に気付いている人は意外と少ないと思います。
どうしても表面的な言葉として、
「会社を譲りたい」という親の主張、
「速く譲ってほしい」という子の主張
が発せられます。
だからこの言葉に惑わされやすいのですが、本音で言えば譲りたくないし、譲られたくもない、と感じているという前提に立つと親子経営で確執がおこるカラクリが理解しやすいと思います。
このカラクリがわかると、今まで見えなかったことが見えるようになります。
多くの場合、この本音レベルの感情を無視して対処しようとするから、うまくいかないのではないでしょうか。

顕在化した問題に対処する

後継者はなぜ会社を継ぎたくないのか?

すでに親の会社に入った人も、そうでない人も、親の会社を継ぐことに抵抗がある人はけっこういると思います。
前述の私の例のように、そろそろ代替わり直前、という状態にあってまだじたばたする人もいます(苦笑)
なぜこんなに人気がないかというと、私は二つの問題があると思います。

一つは、「徐々に成長することができない」という事です。
経営とは何ぞや、社長の仕事とは何をするのか、といったことを教えられることなくその立場に立つというのはけっこう大変です。
一般社員と比べて、あまりにも多くのことを学び、実践しなければならない立場です。
なのにその研修システムはどこを探してもあまり見当たりません。
親がしっかり伝授するかというと、大抵はそんなこともない。
ある日突然ぽっかりとあいた「社長」の椅子に放り込まれるわけです。

起業家であれば、会社の成長とともに自分も成長することができます。
会社を子どもに例えるなら、自分で起業した会社は0歳児から育てた子供です。
親の後を引き継ぐ会社は、思春期を終えた子供を預かるようなもの。
たんなる友達関係ならいざ知らず、その子供の人生に責任を持てというのだからなかなか大変です。

未熟な後継者が、ある程度完成形の会社を受け継ぐのだからプレッシャーは並大抵のものではありません。
しかもそれが、「渋々やっている事」だとしたら何をやっているのだかわからない話です。

一つ一つ紐解いていく

ではどうすればいいのでしょうか。
私は考えました。
まず、親は「辞める」と言います。
これは世間体があるとか、実際にしんどいという事でそこそこペースを落としたいとか、いろんな思惑はあると思います。
しかし、実際には一定程度のつながりを残したいのだと思います。

であれば、その通りにすればいいのではないかと思うのです。
もし話し合いの余地があるなら、たとえば午前だけ出社するとか、午後だけ出社するとか、週に3日の出社にするとか、そんな感じにしてしまえばいいと思います。
「無理にフルタイムでいなくてもいいんじゃない?」と気遣えば年齢によっては「そうだな」となることも多いかもしれません。(キレる親もいるかもしれませんが・・・)

私のケースで言うと、辞めると言えば、そうですか、と答えます。
自分の思う通りやってください、というつもりですが、もしかしたら親からすると物足りない返事かもしれません。
実際にいてくれると助かる部分はあるので、いるなら働いてもらうし、
会社に来ないならそれなりに考えるし。

ある時期からそんな風に考えるようにしました。
何かを人に期待してもしんどいだけですから、自分がどうするかを大事にしています。

次に自分についてですが、さっきも書いたとおり、いると面倒ですが、いないと困る。
都合のいい時だけいてほしいというのは難しいので、いてもらう一方で、やるべきことをやってもらうという交換条件的な感じでやっています。
辞める気がないなら、こことここはやっといてください、と。

この時大事なのは、「何でも自分でやらなければ」となりがちな長男長女気質が出ないよう気を付ける点でしょうか。
やりたくないこととか、他の人がやったほうがいいことは、素直に頼めばいいのです。
それを恥ずかしく感じる必要もありません。

こうやって整理していくと、それなりに「裏の目標」を双方が満たしながらできることもあるような気がしたのです。
結果として、危ういバランスの部分はあるものの、それなりに会社は持ちこたえています。
なによりも、私の精神的なストレスは今やほとんどなくなっています。

物の見方が変わると世界が変わる

虹は幸福の予兆?それとも不幸の予兆?

少し話はそれますが、皆さんは虹を見るとどう感じるでしょうか?
イマドキの多くの日本人は、虹を見ると「なんかいいことあるかも」なんて言う風に思うんじゃないでしょうか。
しかし、地域や文化によっては虹を不吉な予兆とする人たちもいるようです。
これは何を意味するのかというと、同じものを見ても人によって解釈が違う、という事です。

では、親が会社を辞めると言いながら辞めないという事実。
これを一般的に後継者は「自分の能力の欠如」が原因と思ったりします。
もうその時点で、親が会社に残り続ける以上、自分は能力的に劣っていると感じているのではないでしょうか。
もしそうだとすると、親が会社に居座れば居座っただけ、後継者にとっては「能力がない」と攻め続けられているような気になるのかもしれません。
そりゃあ、嫌ですよね。
だから早くやめろというわけです。

しかし、実はそうでもなくて、親は口ではああ言ってるものの、残りたいから残ってるだけで、自分を言い訳に使っている、という事を知ればずいぶん心理的負担は軽くなるものです。
私はその仮説が正しいかどうかを試すため、いろんなことを親に頼み込みました。
あれもやって、これもやって、と(笑)
するとぶつぶつ言いながら、やってくれたりするのです。
本音を知ったうえで、それを活用するという感じでしょうか。
或いはこれも、リーダーとしての能力なのかもしれません。

大抵のことは自分のなかで起こっていることが問題

これをきっかけに私は、何か気に障ることがおこった時に、それが自分のどんな思い込みと紐づいているかを考える癖をつけるようにしています。
辞めると言って辞めない親の行動は、自分の劣等感と結びついていることがわかりました。
じゃあ、親が言うことを聞かないという思いでイライラしてるとしたら、それは自分のどんな思い込みを紐づいているのでしょうか。
従業員が自分のことを尊重しないとカリカリするときは、
兄弟経営者がやたらと目障りに感じるときは、
などなど。

そうやって考えると、多くのことは自分の心の中で起こっている問題です。
これをリアルな世界を変えることで、自分の心情に合わせようとすると、たいていうまくいかないし、うまくいかないから余計にイライラします。
こういった「起こったこと」を受け入れるようにさえすれば、さほど大きく心を動かされることもなくなっていくのではないでしょか。
それは不干渉という事ではなく、自分の劣等感を均していく作業のように思えます。

親が辞めようが辞めまいが、
自分を尊重しようがしまいが、
周囲に支援されようがされまいが、
自分は大丈夫、という風に思うことができれば、大抵のことは何とかなるのではないか、と最近は思うのです。

これを読んでくださった皆さんは、今まで見えなかった裏の目標が見えるようになったと思います。
それはつまり、今自分が置かれているシチュエーションの配線図のようなものが見えている状態です。
どこの線を差し替えればいいのかを知るのは、そんなに難しいことではないと思います。

 

 

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