後継者

後継者が創業社長を操るための7つの戦略

後継者から見たとき、創業者はドンっと立ちはだかる門番。
それは、よく言えば頼りになる存在。
しかし、意見が対立する場合は、本当に手ごわい相手です。
なにしろ、60歳代~70歳代の創業社長が、息子の話を素直に聞くという話はあまり耳にしません。

言ってみれば頑固で、人の話を聞かず、猪突猛進。

後継者の声はどこに消えてしまうのか、創業社長には届いていないような思いを抱くことも多い。
それがきっかけで、親子の確執が生まれ、家業を継ぐのが嫌になったと飛び出す後継者も少なからずいるようです。
逆に、創業社長を追い出すパターンもありますね。
そうなる前に、一度試してみたいことがあります。
押してもだめなら引いてみろ・・・ではありませんが、直球勝負がダメなら変化球。
そんな戦略を練ってみましょう。

 


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創業社長にありがちなパターン

時代背景から見た創業社長

今、事業承継の中で悩まれている後継者が30歳代~40歳代とすると、先代である創業社長は60歳代~70歳代がボリュームゾーンではないかと思います。
その世代が生まれたのは、1940年代~1950年代。
この時代というのは、ご承知の通り戦中から戦後、そして高度成長期の時代に当たります。

戦後の焼け野原の中で、日本経済はゼロに近い状態で、そもそも食べるものさえ満足な状態ではなかったと聞きます。
そんな時代ですから、食への欲求、モノへの欲求を満たすべく働いたのでしょう。
苦労、忍耐、努力、勤勉といったことが美徳とされた時代であったと、考えられます。

さて、このような時代に成功を求めて起業したのが、今の中小企業の創業社長です。

創業社長の価値観

この時代に起業した創業社長は、子供のころから親から言い聞かせられた言葉を価値観の中心においている可能性が高いようです。
そもそも、この時代は親の意見は絶対であったでしょうから、そこに疑いを持つことなく前の時代の価値観を引き継いでいると考えられます。
苦労、忍耐、努力、勤勉といったもので、それらしい座右の銘を持っておられる方も多いのではないでしょうか。
私の父も、「人の三倍働いて、肩を並べる」という言葉を好んで使っているようです。
私などは、「人の半分の労働で、上をいく」ほうが合理的で良いと思うのですが・・・笑

創業社長が持つ20の特徴

さて、こういった時代に起業した創業社長の特徴を、挙げてみましょう。

  1. 気が短い
    創業社長は、ほぼ例外なく気が短いようです。じっくり結果を待つというより、今すぐ結果が出なければ気が済まない。短期的に業務を改善する際は、良く作用しますが、長期的な戦略を検討する事や、コツコツと継続する事は苦手です。
  2. 人の話を聞かない(頑固)
    他人の話に真剣に耳を傾けるのは苦手なことが多いようです。話半分で理解したつもりになったり、頭では理解したつもりでもいざとなったらその内容とは全く違った行動をすることもあります。
  3. 論理的な判断より感性を重視する
    合理的に考えたとき、もっといい方法があるはずなのに、そこに思考は向かず、目に見える部分だけを最適化しようとしたりすることがあるようです。
  4. 先のことはあまり考えない
    「現在」だけに価値を置き、未来のことについてはあまり真剣に検討しない、もしくは先送りにしようとする傾向があります。
  5. 最新情報に疎い
    年齢の関係もありますが、情報源は限定されています。例えば、今や新聞やテレビニュースが真実を伝えていると思う若者は少ないのに反し、新聞やテレビ、雑誌のような部数の多い媒体の内容を素直に信じ、疑わない。
  6. 権威に弱い
    5.と重なる部分もありますが、権威ある人間の言動や、権威ある新聞・雑誌の内容は鵜呑みにする傾向があります。
  7. 自分の考えを言葉にすることが苦手
    口下手な人が多く、自分の考えを言葉にして発信することはあまり得意でない人が多いようです。どちらかといえば、不満に関しては言葉ではなく態度で示すことが多く、社内がびくついていることも・・・
  8. 狭いジャンルの職人
    オールラウンドプレイヤーというより、狭いジャンルでのプロフェッショナルであることが多い。例えば、販売業の場合、商品を売ることこそが経営そのもの、と考えていることが多い。
  9. 数字には厳しい
    現時点での売上数字には、自分に対しても周囲に対しても厳しい。このこだわりがあったからこそ、企業が存続しているといえそうです。
  10. 遵法精神は低い
    現場の利便性や効率を重視するあまり、コンプライアンス意識は低い傾向があります。「あれこれ考える前にやってしまえ!」的な感性を持っていることが多く、知らず知らずのうちに法を犯していることもあり、周囲はひやひやすることが多い。
  11. 現場重視
    戦略であるとか、マネジメントであるとか、こういったことはほとんど関心がなく、現場レベルで「頑張っている」事が重要と考える傾向がある。
  12. 頼られるのが好き
    自らの存在意義を会社に求めているケースが多く、社員やお客様から頼られるのが好き。口では「しょうがないな」といいつつ、頼られたことにはこたえようとする。
  13. 叱られるのが好き
    意外かもしれませんが、この世代の創業社長は、自分が認めた相手から叱られるのは結構好きです。
  14. 反抗的な態度をとる若者が好き
    自分に対して反抗的な若者も、最低限のマナーさえ守っていれば、「骨のあるやつ」と評価する傾向があります。
  15. 周囲の空気を読むのが苦手
    自分の外に対する関心が希薄であるのと、長年の社長生活で、周囲に対する気遣いや空気を読むことは苦手なケースが多いようです。社外では非常に「よく気が付く人」という評価を受けていても、社内ではその限りではないことのほうが多いようです。
  16. 自慢話が好き
    自らの存在を誇示することを好み、自己愛の強い人が多い。そのため、社外でも社内でも自分の武勇伝や、自分が業界の参考になるべき人間などと評されるのを非常に好みます。
  17. 素直
    頑固な一面はあるものの、いったん受け入れた価値観にかんしては、素直に実践しようとする。
  18. 情に厚い
    人情味のある方が多い。
  19. 自分の言動の矛盾に気付かない
    言っていることと、やっていることが一致しないことも多い。しかも、その事実に自分で気づかない事が多いようです。どちらかといえば、内省するタイプではない人が多いようです。
  20. プレッシャーがかかると俄然やる気が出る
    外からプレッシャーをかけられるのが好きで、苦境に陥れば陥るほど力が湧いてくるタイプが多い。他人から与えられた目標も、素直に受け入れる傾向があります。

さて、貴社の創業社長、いくつ当てはまりましたか?
こういった特徴を踏まえて、創業社長を操る工夫を考えてみましょう。

創業社長をコントロールする方法

「抵抗勢力」を「味方」に

どの会社でも、創業社長の影響力は絶大です。
正直、後継者がどんなに頑張っても、その影響力を無効化することは難しいでしょう。
であれば、少し工夫して、そういった創業社長のパワーを上手く使いたいところです。
もちろん、簡単に操れます!とは言いません。
しかし、試してみる価値はあるものばかりです。
実際に私も使ったテクニック(?)ですので、参考にしてみてください。

創業社長を操る7つの方法

その① 短い言葉で繰り返し伝える

創業社長は、気が短いのです。
あなたの主張を長々と話をしても、おそらくほとんど頭に入っていません。
もちろん、1度くらいはあなたの考えを根拠を含めて説明する機会は必要でしょうが、
その時に創業者は頭では理解しても腹落ちはしてません。
だから、短い言葉で、繰り返し繰り返し伝えます。
毎日でも、一日何回でも。
そうすることで、先代の思い込みを書き換えてみてください。

エレベーターピッチというのをご存知ですか?
大きな企業で、普段なかなか会えない人にたまたまエレベーターで乗り合わせたとき、その30秒で自分の主張をプレゼンすることを言います。
しかし、1階から2階にエレベーターが動くのは30秒もかかりません。約17秒です。
ここでいう短い言葉というのは、17秒より短い事を意識してください。

その② 権威の力を利用する。

創業社長にとってのヒーロー(例えば、松下幸之助や稲盛和夫、スポーツ界の人でも何でも結構)の言葉を引用する。
また、同業者の先輩や、コンサルタント、ジャーナリストなど、創業社長が自分より物知りと感じている人の言葉や記事を利用して、
後継者であるあなたの主張を伝える。
言ってみれば、あなたの言葉を著名人に代弁してもらう、という方法です。
もちろん、直接お願いできる人なら、語ってもらえばいいのですが、そんなことできないことがほとんどでしょう。
その時は、その人が語った言葉をメモっておいて、「○○先生は、こんなふうに言ってた」と伝えればそれでも効果はあると思います。
あなたの言葉ではなく、○○先生の言葉である、ということでその言葉に権威付けができます。

その③ 時には頼る

頼られることに喜びを感じる創業社長。
時には積極的に頼ってください。
例えば、後継者のあなたが実務を卒業して経営やマネジメントに専念する、と決めたとします。
そういったときに、やむを得ず実務に引き戻されるようなことがあったときには、ぜひその仕事を創業者にお願いしてください。
それは、経営の本質的な部分から逃げるという意味ではありません。
自分のやるべき仕事と、誰かに任せるべき仕事を分類し、任せるべき仕事の一部を渡すというイメージです。
先代は「しょうがないな」とブツブツ言いながら、喜々として現場に戻ると思います。

その④ 任務を与える

少し高飛車な言い方になりますが、仕事を積極的に与えてください。
後継者の多くは、創業者から仕事を取り上げようとします。
そこに創業社長は抵抗します。
なぜなら、仕事一つの創業社長から仕事を取り上げてしまえば、何もすることがなくなってしまうからです。
だから、戦略的に後継者としてあまりこだわりのない分野、会社の機能の狭い一部分を先代に任せてください。
それが生きがいにもなり、他への干渉を防止する一つの手段となります。
気を付けないといけないのは、コンプライアンス意識は低いことが多いので、その影響を受けにくい分野であることが良いでしょう。

その⑤ 自慢話ができる場所を用意する

自己愛の強い創業社長は、常に人の注目を集めようと行動しがちです。
これを抑えようとすると、フラストレーションをためて、それを社内で爆発させることにもなります。
ですから、外とのコミュニケーションの機会はできる限り減らさないように配慮すべきです。
例えば、同業者団体などは多くの場合、どの業界も高齢化が進んでいます。
そういったコミュニティで好き勝手話をできる機会を残しても、後継者にとってはなんら影響もなく、デメリットといえば自分の陰口を言われる程度です。
様々なコミュニティの活動などは、ぜひ推奨してください。
また、社内でも、労をねぎらう機会があるといいかもしれません。
ただし、そういった場で後継者の思いとは違った「わが社の経営戦略」的なことをペラペラ話す可能性があります。
それをされては困る場所への参加は、少し慎重に検討したほうが良いでしょう。
当社では、毎週1回「今週のこだわり大賞」を設定しており、今週頑張った人をねぎらう仕掛けを作っています。

その⑥ 反抗する

先代が、こうあるべきだ、ともっともらしい話をするときには、激しく反抗するのも一考です。
ただ「はい、わかりました。」と素直に対応するより、「何を言ってるんですか!?」と反抗することも、場合によっては効果的なことがあります。
そのためには、後継者には反抗すべき根拠が必要です。
筋の通った反論に対しては、二つの反応が予想されます。
一つは、「何をわけのわからないことを言ってるんだ」と一蹴されるか、
「ならやってみろよ」と素直に認めるか。
前者の場合、多くの場合はさらに説得を試みても、不毛なことが多いようです。
①や②を使って先代の心の中にあなたの考えを植え付ける努力を少しずつしていく必要があるでしょう。

その⑦ みんなもうやってるよ

この時代の人たちは、競争意識は非常に強い世代だと思います。
競争意識をうまくくすぐる言葉として、「みんなすでにやっている」というのはそれなりに響く言葉です。
実際にやっているかどうかを検証することはありませんので、「そんなことぐらい、同業他社は当たり前のようにやってるのに」といわれると、
ちょっと取り残された感を感じて、OKが出やすくなる可能性があります。

自分のやるべき仕事とは?

こうやって、上手く先代が動いてくれると、強力な戦力になるでしょう。
先代は、「働けるうちは、可能な範囲で働く」と主張しているかもしれませんが、「そんなぬるいこと言ってないで、馬車馬のように働いてもらいますよ。」とでも言ってあげてください。
きっと喜ばれると思います。

とはいえ、好き勝手に動かれると、会社にとっての統制感はとりづらくなります。
だからある一定の範囲内で仕事をお願いしなくてはならないわけですが、そのためには後継者が今やるべき仕事は何か?というところが明確になっている必要があります。
無為に目の前の仕事をこなしているだけでは、その区別はできません。
そういったところを明確にしたうえで、先代が活躍すべき場所はどこだろうか?という問いへの答えを導き出してみてください。

 

本文の内容の一部を動画で解説しております。よろしければご覧ください。

 


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