創業者

中小企業において経営者の高齢化がもたらす問題点

帝国データバンクによる「全国社長分析(2014年)」によると、2013年時点で、社長の年齢は過去最高齢を更新し、58.9歳となっているようです。
もちろん、社長が高齢であることが、必ずしも即、企業にとってデメリットというわけではありません。
では、社長が高齢であることが、どんな形で企業経営に影を落とすのかを見ていきましょう。


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親の会社を継ぐ技術

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卓越した技術

社長が高齢である事は、イコール熟練の卓越した技術を持っている、と考えられます。
特に、製造業においては、非常に大きなアドバンテージであるといえるでしょう。
例えば、宇宙技術などにおいては、機械では測定できない小さな誤差を熟練の職人による五感で仕上げていく、という話も耳にします。

新幹線の形状も、こういった熟練の技術者による仕上げが欠かせないとも伺います。

 

製造業以外においても、例えば販売の現場。
私共のような保険代理店の場合、様々な顧客サービスの前に営業の技術が問われます。
営業に関しては、まだまだノウハウが体系化されているわけではなく、「職人芸」によるところが大きい。

驚かれるかもしれませんが、卓越した販売技術をもつセールスパースンは、商品の説明をほとんどしなくても、顧客から契約の意思表示をいただくことも少なくありません。

 

さて、こういった熟練の技術。
本来なら、もっとクローズアップされるべき美点だといえます。
しかし、近年は、こういったことよりむしろデメリットの方が強調されます。
それはなぜなのでしょう。

 

私は、ほとんどの商品・製品が「一般化」してしまったという事が原因だと考えています。

 

今、世の中で出回っている商品・製品のほとんどは、一定の規格で統一されています。
しかも、それらはオートメーション化され、大量生産されています。
産業革命以降、その精度を増してきたオートメーション化の中で、
「技術を持たない素人でも、一定水準の製品を作るには、どうすればよいか?」
が考え抜かれてきたのです。

 

つまり、産業用ロボットが加工を行い、人は、それを監視したり、単純作業を繰り返すといった工程に組み込まれてしまっている現状があります。

そこに、熟練の技術は必要ありません。
金型などの製造技術に、熟練の技術が必要になりそうでもありますが、期間短縮・コスト削減という「効率化」の社会の中で、それらはコンピューターにとってかわられました。

ごく一部の、機械では処理できない領域にのみ、熟練の技術の生存価値が認められている状態なのかもしれません。

 

サービス業においても、マニュアル化が進みました。
一定以上のサービスを目指すこと以上に、一定レベルの水準を目指して仕事がマニュアルに記されてきたのです。

 

このことは、大量生産・大量消費という社会の必然の中で生まれてきたように思います。

マニュアル化され、オートメーション化された工程は、だれでも作業できるように設計されています。
つまり、システム・機械を海外に持ち出せば、どの国でも作れるわけで、より固定費の低い国で作ることで、より安く生産可能となります。

自分たちの力量を生かす場所を探す事ができるのか?

ビジネスの現場で、「競争」の局面に入った時、基本的に考えられる対策は

●品質
●価格

といったところでしょう。

 

製造業などの中小企業であれば、下請けをされていることも多いでしょう。
すると、品質は、一定水準を満たせばよい。
だから、価格をもっと下げてくれ。
そんな要望が、取引先からあるかもしれません。

 

また、ある時を機に
「海外で作った方が、安くできるから」
「内製化したから」
といった理由で、契約がなくなってしまうかもしれません。

 

そういったときに、自分たちの技術を欲しいという取引先とどうつながれるのか。
また、自分たちの技術を生かせる新しい商品開発をできるのか。
こういった発想をするのは、数十年、技術の練度を磨き続けることに集中した人には難しいのではないでしょうか。

言ってみれば、ベテランサッカー選手に「時代が変わったから、明日からテニスプレイヤーになりなさい」というようなものです。

 

長い間同じ仕事を繰り返せば繰り返すほど、人はその発想から抜け出しにくくなります。
なぜなら、経験が新しい発想を否定するからです。

 

そうすると、そこに新しい風が必要となってきます。
卓越した技術を存分に生かせるフィールドを準備する人間。
これは、「今」を知る若い世代の人間が最適です。

命は永遠ではないが、経験は永遠に伝承できる

残念ながら、人の命は限りがあります。

 

しかし、経営者が培った技術や経験は、伝承することができます。
そして、それは半永久的に生き続けます。

 

かけがえのない、経営者の経験をそこでとだえさせてしまうのは、社会の損失といえるのではないでしょうか。
その経験を引き継ぎ、育み、後世に伝えていく。
そういった役割を持つ人間が、必要です。

 

だから、創業社長が元気なうちに、後継者を育てて頂きたいのです。
あなたの経験と技術を永遠のものにするために。

まとめ

ここで言いたいことは、結論として
経営者の高齢化が問題なのではなく、技術や経験の継承ができない事が問題
であると私は考えています。

 

結果として、方法論としては、早い段階で後継者に経営を譲り、経験を積んでいただく、という世間一般で言われることと同じ結論となるのかもしれません。
しかし、目的は違います。

先にみたとおり、世の中の普及品の多くは、熟練の技術を必要としないことが多くなりました。
それは、技術が不要なのではなく、技術を上手くアピールできていない状況もあるように思います。

現状は、
「あの国で作る製品より、ウチで作る方が、品質は勝っている」
とお考えでしょう。

 

その価値を、顧客が認識できなければ、市場では認められません。
貴社の技術・経験を顧客に伝え、また、そこに価値を見出す顧客を作り出す。
ここを考え抜くと、そもそもビジネスモデルの転換が起こる可能性があります。
コアな価値観を保持し、新たな価値観を取り入れる。

この仕事を、後継者に託すには、後継者もまた、創業者とは違った経験が必要となります。

 

経験は、量。

ぜひ、後継者に量稽古を積ませるチャンスを与えてあげてください。

 


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  1. 2014年 3月 28日