後継者

会社内で親子関係を改善したければ直接話し合いをしてはいけない!?

事業承継で親子が社内にいるとき、かなり高い確率で親子の関係は良いとは言えない状態になりがちです。
その理由については、たいてい一つで、そのことは本ブログの中ではいろんな形で書かせていただいています。
一方一旦崩れた親子関係を修復するにはどうすればいいのでしょうか。
親子関係レベルを設定し、一つづつ考えてみたいと思います。

この記事の内容をもう少し詳しく書いたのが以下の本です。

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事業承継で親子関係が崩れる理由

さかのぼれば「親のコンプレックス」が原因

一応簡単に、親子関係が崩れる理由をご説明します。
ほとんどの親子の事業承継指南書は、ここを誤ります。
そもそも親子で意見が食い違うのは、「経営方針の違いだ」と考えている人が多いと思います。
しかしそれは、ほとんどの場合、誤りです。

考えても見てください。
経営の方針が違うだけで、親子が憎しみあい、双方弁護士を引き連れて戦争するなんておかしいと思いませんか?
単純な方針の違いだけなら、どちらかが会社を去って終了です。
誰も骨肉の争いなど望みません。

親子関係が崩れるのは、親がもっていたコンプレックスが原因で、子どもがコンプレックスをもって成長する。
そのコンプレックスを双方癒すことなく現在に至っているので、マウンティングをやりあっているのです。
え?何のことやらわからないですか?
もう少し丁寧に説明しましょう。

起業する人は、「性格の偏りを持った人」

世の中の社長は、必ず「性格が偏っている」と言った人がいます。
元横浜国立大学准教授、堀之内高久先生です。
その偏りが原動力となり、起業を成功させる反面、それが会社の引退を遅らせます。

もう少し丁寧に説明すると、起業家は何かしらのコンプレックスを抱えています。
そのコンプレックスをカバーするために、社会的地位やお金と言ったことで周囲に認められたいという強い願望を満たそうとします。
また、経営者という立場は、顧客や社員に「自分に頼らせる」という状況を作ることができる環境です。
そうやって自分が「重要な存在である」という実感を得ることに強い満足を感じる状況を作ります。

大げさでなく、生きている実感を感じるために起業し、生きている証が会社とそこに集まる人との関係となります。

Einfach-EveによるPixabayからの画像

偏りの持った人に育てられた子供は偏りを持ちやすい

そういった親が子どもを育てる場合、ある傾向が出てきます。
それは、子どもを服従させ、支配しようという傾向です。
たとえば、子どもが何かを考え、決める前に親が答えを出したり、
子供が自由にふるまうことを「しつけ」と称して厳しく禁止したり、
子どもが希望を言葉にする前に、親が「こうあるべき」と言った価値観を押し付けたり。

服従とか、支配というと、きつい言葉になるので「ウチはそんなことはない」と否定したくなりますが、
子供に「どっちがいい?」と聞いて、答えを待たずに「こっちにする?」と決めることも、子どもの自主性を尊重しないふるまいです。
何かをやめたいという子供はやめたいということを言いだせない雰囲気を作るとか、形式は様々です。
しかし、気が付けば親が決めたとおりに子どもは動いていた、という結果があるとその傾向があると考えるべきです。

そもそも、子どもが会社に入っている時点で、子どもは「自分の意志より、家業をもつの親の子であることを優先している」可能性があります。
そういった環境の中で、後継者もまた「自分は十分ではない人間」という偏りを持っている可能性が高いのです。

周囲から認められることへの執着

こういったどこか似た二人(親子)は、双方ともに「周囲から認められること」がとても重要です。
親は親で、世間や従業員、顧客に賞賛されるのが大好きです。
一見地味ですが、後継者も実は同じような性格の基盤を持っています。
しかし、親は表立って自分の欲求を満たすべく振る舞いますが、後継者はそれがやりにくい状況に追い込まれます。
社内では、親に否定されるとか、社員に受け入れられないとか、いわゆるボッチになりがち。

後継者が社員に認められ、受け入れられるような振る舞いを始めると、親は無意識にそれをつぶそうとするのです。
その理由は、「後継者は力不足だから」というものです。
しかし一方、後継者はだれよりも、本当は親に認めてもらいたいのです。
なのに親は自分のことで精いっぱいで、子供の成長を素直には喜べません。
なぜなら、子供が成長すれば、自分は会社に居場所がなくなるからです。

親に認めてもらいたい子どもと、
子供の成長を認めたくない親。
そこに確執が生まれます。

ここで結論を言ってしまうと、
「親も子も、誰かの評価を期待するな。自分で自分を認めてやれよ」
ということになります。
そうほうが、自分で自分を認めることができれば、実は万事解決なのです。
しかし、それができない、そもそもその問題の特定ができてないから、親子の確執につける薬がわからないのです。

後継者としてアプローチするならば

本来は両者が気づくべきだけど

事業承継の親子の確執の責任者探しはあまり意味がありません。
結局、どっちも悪いのです。
どっちも悪いから、両方が改めよ、という話です。

しかし、親にしてみれば今までうまくやってきたし、子どものことは気にはなるけど自分はなんだかんだ言って安定している。
だから差し当たって、何かを変える必要はないのです。
一方そういったシチュエーションに困り果てて疲弊しているのは、後継者でしょう。
だから、後継者が変化を作る必要があります。

じゃあ、どんな変化を作るのでしょうか。
その問いに対するヒントは意外とシンプルで、「安全な居場所を作りましょう」ということです。
安全基地があることで人は安定します。
何かがあってもここに帰ってくれば、自分は安心である、という場所です。

それを会社の中に作るのです。

組織はどちらの味方にもなりたくない

ここで考えたいのは、会社という組織です。
親子経営でありがちなのは、そこにいる社員を「どちらが服従させるか」競争をすることです。
親は長年の経験で社員を動かしますし、後継者は自分の故権をかけて社員を動かそうとします。
双方の指示がコンフリクトしたときに、どっちの指示に従うかで親子は自分の価値を測っている一面があるのではないでしょうか。

そこをまず見直してみましょう。
彼らを従わせよう、という思いから、ついていきたくなる関係性を作ります。
それって難しいんじゃないの?と思うかもしれませんが、さほど難しいことではありません。
彼らの話をしっかり聞き、尊重するだけでOKです。

早ければ、2~3週間で関係性はガラッと変わります。
表向きは親に従っても、心は後継者とともにある、ということもけっこうおこり始めます。
そんなときの後継者の安心感は、他には代えがたいものがあります。
そうやって私たちは、社内に「安全基地」をもてるようになるのです。

社員はあえてどちらかの軍勢に着くのではありません。
彼らが〇〇派的振る舞いをするとすれば、それは自分の身を護るためです。

まず彼らの安全を提供してあげれば、そういった分断を避けることは思った以上に簡単にできる事さえあるのです。

Free-PhotosによるPixabayからの画像

直接の親子対決をするか?しないか?

ここまで見てきてわかるのは、早い段階での親子の話し合いは「相手を打ち負かす時間」となりがちです。
一見、人道的に見える「説得」という言葉は、とどのつまり、相手を服従させることです。
これをやろうとするから確執はますます深まります。
勢力争いで、「オレにひざまづけ」と言ってるようなものですから。

だから、安易に「話し合え」というアドバイザーがいたとしたら、それは親子関係の素人と考えてみる必要さえありそうです。

いかにも耳障りのいいアドバイスが最適とは限らないのです。

もう少し詳しく知りたい方はこちらの本をご覧ください。

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