後継者

中小企業の後継者が会社の方向性を考えるヒント(2) 

前回の記事、中小企業の後継者が会社の方向性を考えるヒントの中で、ポジショニングという話をしました。
市場の中で、自分たちの強みを活かしたビジネスを今後どう展開するかを考える中で、ちょっとしたヒントをつかめる考え方です。
そんな考え方と並行して、中小企業独自の戦略の基本パターンも知っておくとよいかもしれません。
——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック

ガチでAmazonと勝負しますか?

ある中小企業専門のマーケティングコンサルタントの言葉

以前参加したセミナーの中で、マーケティングコンサルタントであり、博士号をもつ小阪裕司氏がこんな言葉を語っていました。
「中小企業である皆さんが、ガチでAmazonと勝負しますか?」
この言葉、割と印象に残っていて、私もパクらせてもらってます。

文脈を含めてお話しすると、小阪氏の主張はこんな感じになるかと思います。
Amazonは世界に名だたる巨大企業です。億単位の商品点数、ユーザー数を持ち、小売業の最大勢力の1つでしょう。
その気になれば、品ぞろえはもちろん、安さや利便性、すべてにおいて中小企業に勝ち目はありません。
それでもなお、ガチでAmazonと勝負するんですか?というわけです。

ドン・キホーテでもあるまいし、さすがにそれを望んでいる人は多くはないでしょう。

それでもわしたちはドン・キホーテを演じている?

こうやって聞かれれば、「Amazonに量や便利さで勝つのは無理でしょう」と多くの方がおっしゃると思います。
しかし一方で、私たちは自分の会社のことを考え始めると、こんな風に思うのではないでしょうか。
・安さで勝てないからダメなのかもしれない
・品ぞろえの問題なのかもしれない
・利便性の問題なのだろうか
大資本ならこれらの差を埋める方策はあるでしょうが、中小企業でこれをやるには厄介なことが起こります。
ブラック企業化です。

安い賃金で長時間の労働をさせることで、大企業との差を穴埋めしなければとてもではないけどやっていくことはできません。
そしてそれは、長くは続かないでしょう。

それでも、安くしなければ、品ぞろえを増やすか変えなければ、利便性を高めなければ、と考えてしまいます。
気が付けば、Amazonとガチで勝負する方向に経営を振っているのです。

中小企業には中小企業にふさわしい戦略を

ランチェスターが見出した弱者の戦略

誰もかれもが同じ戦略を取り始めれば、体力のある人が勝ちます。
そこでリソースが限られている中小企業は、本来、大企業とは違う戦略をとる必要があります。
しかし、あまりそういったことが一般的な会話の中で語られることは少なく、結局売り上げが下がると「値下げ」をすれば・・・と考えがちです。

そんな中小企業の戦略構築に一つの光をもたらしたのが、ランチェスターです。
この人は、もともと実際の戦争において、単に武器の物量だけで勝負がつくわけではない、ということに関心を持ち戦略に関する研究を勧めました。
その結果、いくつかの法則を見出し、近年では経営戦略においてもそれが有効であることが認められています。

そのランチェスター戦略においては、弱者がとるべき戦略が教示されています。
まさに中小企業には非常に参考になるものだと思います。

中小企業は一点集中

このランチェスター戦略も、しっかり学ぼうとすれば非常に奥深いものです。
しかし、その中からわかりやすい1つを取り出すとすれば、「一点集中主義」と言えるかもしれません。
具体的には例えば、顧客や、商品や、商圏など、なにかしら、一点に集中して全リソースをとうかする、という考え方です。

たとえば、こんな事例がありました。
「パン屋さん専門の税理士」
税理士はたくさんいますが、さすがにパン屋さん専門というのは効いたことがありません。
すると、パン屋さんがその看板を目にすると、たぶん普通の税理士ではなくこの専門の税理士に問い合わせするのではないかと思います。
さらに、顧客層がパン屋さんばかりになると、パン屋さん特有の悩みや経営のコツを知りうる立場になります。
当然、その能力も、パン屋さん相手に限って言えば、非常に強いものになると言えるでしょう。

総合的な税理士事務所とは違った立ち位置を確保することができるようになります。

故船井幸雄氏の長所伸展法

どこに集中すればいいか、ということを考えるときに意識したいのは自分の会社の強みを伸ばす、という視点を持つことです。
たとえば、日本で初めてコンサルティング会社を上場へ導いた故船井幸雄氏は「長所伸展法」として強みを集中して伸ばすことを勧めています。

もし何かに一点集中するとすれば、今の顧客層や顧客の分布、自分たちの持つ技術や流通、ラインナップなど、自分たちの強みを活かせる分野を意識するのが重要でしょう。

後継者の場合ここで、まったく畑違いのことを始めたり、自社の強みとは関連しないところで勝負しようとする傾向があります。
・・・というか私自身がそうでした(苦笑)
そんな経験から考えると、今の会社が長年培ってきた強みを活かすことを意識しておいたほうがよさそうです。

困った時は顧客の心情に立ち返る

こういった「戦略」と言ったことを考え始めると、ついつい顧客が見えなくなってしまうことがあります。
というのも、自分たちが何をするのか?ということにフォーカスするあまり、それを顧客が求めているかどうかを考えることが抜け落ちてしまいがちです。
戦略というのはどちらかと言えば、ライバル企業を意識しがち。
そういう思考で考え続けていて、やってみたことが成果が出なかったりしたときはもう一度顧客は本当は何を望んでいるか?という思考に立ち返るのが良いかと思います。
どうしても、思考があっちに行ったり、こっちに行ったりしますが、さまよいながらもいずれ自分なりに納得できる答えに行き着くと思います。

また、これまでお話ししたような戦略のセオリーに沿って考えていても、ふっとそこから外れたことを思いつくこともあります。
それがワクワクできそうなものであるとすれば、そこをじっくり検討してみるのもアリです。
こういった戦略のフレームワークは、あくまでガイドのようなものです。
問題を具体化し、方向性を決めるヒントを得るためのものですので、四角四面に考えず、浮かぶアイデアを大事にしてください。
そして往々にして、「大」の付く成功は、突飛な思い付きから始まります。

——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック

関連記事

  1. 安定を求めても安定は続かないという現実

  2. 後継者は、「事業承継」にとらわれすぎていないか?

  3. 先代が「あと〇年で代を譲る」といっても後継者は信用しすぎないほうがいい…

  4. 後継者・跡継ぎ・二代目社長が体調を崩すとき

  5. 後継者の役割:中小企業におけるイノベーション基本の「キ」

  6. 家業を継いで後悔している二代目経営者は、自分の首を絞めているという現実…

  7. 二代目社長になぜか「右腕」が育ちにくい理由

  8. 自分が一番うまくできるというジレンマとどう付き合うか?