「経営戦略」という言葉、当たり前のように使われていますが、具体的に理解されているのはまれだと思います。
後継者が家業を引き継ぐときに、それなりに戦略のようなものを考えると思います。
新たな戦略を打ち出したいというときに、ヒントになりそうなことを考えてみようと思います。
——————————————
■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック
Contents
今までの会社は戦略がなかった!?
会社の方向性は〇〇任せ
家業を後継者が継ぐとき、まずは意識したいのは家業がどう発展してきたか?です。
過去の歴史とはまったく違う次元の未来をイメージしても、なかなか賛同を得にくいものです。
過去とのつながりを意識するうえで、歴史を知ることは割と大事なんじゃないかと思います。
そうやって、会社の歴史を振り返ってみたとき気づくことはなにか?といえば、実は主体的な戦略がなかった、という衝撃的な事実に突き当たることはけっこうあるのではないでしょうか。
自分達でこの商圏を開拓するとか、この分野で生きていくとかいう主体性が見当たらなかったりします。
今の会社はどちらかと言えば、既存客の要請だったり、メーカーや元請けの要請にフィットさせることで成長してきた、というケースが多いのではないかと思います。
なぜかというと、日本の経済は右肩上がりでしたので、難しいことを考えなくても勢いとやる気で会社は成長したのです。
頭ではなく、肉体的な努力で会社が成長してきた、というところが多いのではないでしょうか。
戦略不在の会社は社会の変わり目に弱い
戦略不在ということは、考える習慣がない可能性があります。
脳科学の世界では、use-it-or-lose-itの原則というものがあるそうです。
使わないものは失われていく。
経営者もまた、会社の将来への戦略を考える癖を持たなければ、そういった回路は失われていきます。
そして、考えないまま考えた気になってしまうのです。
たとえば、メーカーが販売店や下請けはこうあるべき、というメッセージを出したとします。
そこに合わせて動くことが、自分の会社の戦略だと思い込んでしまいます。
それは実は戦略でも何もない。
なぜなら、顧客という最も大事なステークホルダーのことを直接見ていないからです。
顧客のことをメーカーが知っているという前提に立っているわけですが、顧客から遠い位置にいる彼らが顧客の品質を知っていると考えるのは少し危険と言えそうです。
メーカーばかりでなく、税理士や、金融機関など様々な人たちが、経営者にアドバイスをしたがります。
それを無視せよ、とは言いませんがその言葉を真に受けるのは危険です。
彼らが果たして何を知っているのでしょうか。
5年後、10年後が見えている人はほとんどいない
社会は常に変化しています。ここ数年の変化は特に目を見張るもののように感じられます。
その先にあるものをさも知っているかのように語る人は(私を含め)たくさんいます。
しかし、それは正しいと言い切れるものでもなく、小さな一つの要素が変わるだけで全体としては大きな変化になる事もあります。
エラそうな未来予測はほとんど意味がありません。
他人の言ったことを真に受けるのではなく、ここでも「自分自身が想定する未来像」をしっかりと考える必要があります。
こういう事件が起こったということは、将来こういうことになるかもしれない。
そういった予測と検証を行う癖をつけることで、未来を描く能力は高まると思います。
しかし、常に他人の意見に振り回されていれば、その感覚はどんどんさび付いてしまいます。
だれでも未来を感じ取る能力は持っています。後継者は、それを磨くよう意識したほうがいいと思います。
他人が言う未来は参考として聞いておくのはアリですが、自分なりの予測を立ててみてください。
ゲームのような感覚でOKです。
それを「やってみる」ことを繰り返し続けることが重要です。
恐らく、親はそういったことはしていない人が多いと思います。
過去、そんなことを考えなくてもうまくいったからです。
市場の中で家業をどの位置に立たせるかを考えてみる
数年後、自分の会社がどの位置に立つかを考える
実は、戦略を策定する方法は星の数ほどあります。
コンサルティング会社は、そういったものを図表で作り上げることで多額の報酬を受け取るので、次々と新しい考え方を生み出します。
しかし残念ながら、もっともらしいフレームワークも、あまり有効とは言えそうもないものも少なからずあるようです。
また中小企業においては、戦略企画部だとか経営企画部なんていう部署は持てないことが多いでしょう。
みんな、経営者(後継者)が鉛筆舐め舐め考えるのが一般的だと思います。
出来る限りシンプルで、わかりやすい者である必要があります。
私の中では2つの方法が、比較的再現性も高そうで、わかりやすいのではないかと思っている方法があります。
一つはポジショニング戦略、もう一つはランチェスター戦略における弱者の戦略と呼ばれるもの。
今回は、前者のポジショニング戦略について考えてみたいと思います。
ポジショニングマップを作ってみる
ポジショニングというのは、市場での立ち位置をきめるということと言えるかもしれません。
たとえば、高級化なのか安売りなのかとか、男性向けなのか女性向けなのかとか。
商品によって切り口はたくさんあると思いますが、とりあえず思い付きでいいので自分たちの業界を縦横二つの軸で記してみます。
私の親が始めた家業は保険の販売店なので、例えばこんな図ができるかもしれません。
たまたまここでは、横軸を「個人か法人か」、縦軸を「(値段が)高いか安いか」で取りました。
図自体も精密さを欠きますが、ざっくりしたイメージをとらえることができればOKです。
この縦軸と横軸は、いろんな組み合わせができると思います。
たとえば、飲食店なら、顧客の滞在時間の長さだったり、製造業なら納期の重要度と品質の高さとか、精度とか。
この時にできれば、同じ機能を提供する異業種もマップの中に取り込んでおきたいところです。
たとえば、カフェの機能は「おいしい飲み物を提供する」という機能と「落ち着いた場所を提供する」という機能があります。
すると、想定する競合は、コンビニカフェや缶コーヒーから、勉強部屋のレンタルや図書館までもが想定されます。
完ぺきなマップを作るのは難しいのですが、まずは考えて、整理する、というつもりで取り組んでみるとよいかと思います。
競合の少ない場所を見つける
さて、保険の販売を考えたとき、いくつか空白の場所があります。
以下のマップの右下です。
(右上にも空白がありますが、これは思考の過程で空白とは考えられなく、説明は割愛します。)
考えてみれば、個人向けに「比較サイト」や「保険を安く加入しよう」というメッセージはよく見かけますが、法人向けにはあまりそういったプロモーションがなされているのを見かけません。
リアルな現実とも一致しそうです。
ところで、こういった空白地帯は、「ブルーオーシャン」である一方、参入が難しい場所であることもよくあります。
あえてその難しい場所で勝負する、というのも一つの決断ですが、ニーズがない場合もありますので注意が必要です。
ビジネスモデルとして組み立ててみる
一般の個人と違い、企業向けの保険というのは、業種や業態によって多岐にわたります。
簡単に比較して安いものを提供する、というのはシステマチックには難しそうな気もします。
そこで考えたのが、一定程度の企業であれば、総務部や経理部が、保険の更新に際して毎回数社の保険会社に見積もりを依頼し、最善の内容で契約する、という流れがある状況です。
この手間を代行することで、手数料を頂くことはできないだろうか。
自分で保険を受けてもいいのですが、そうすると公平性が保てないので、総務の手間を代行することそのものをビジネスにできないか、と思ったわけです。
一方で、厄介なのは保険の説明をするに際しては、その保険会社との代理店委託契約が必要となります。
この辺りで、現在の委託契約の保険会社が「NO」をいってきてこのプランはとん挫しました。
が、このマップを描くだけで、会社の新しいあり方のヒントを得たのは、良い経験でした。
方法論よりまずは整理し、考えること
ポジショニングマップはキッカケに過ぎない
このポジショニングマップは、自分の会社の市場での立ち位置を知るには割とシンプルにできて、良い方法だと思います。
たった1時間、こもって作業するだけで、たくさんのヒントを得ることができます。
どうすればいいだろう?と悩んでいても、答えが天から降ってくることはまれです。
このポジショニングマップは、そういった思考を辿るきっかけとしてお勧めできるものですが、そこで見えたキッカケから先を考えるのは自分の頭です。
日頃あまり考えることのないものなので、はじめは少し苦労するかもしれませんが、これも練習です。
たとえば、何かを無料で提供された時、それは明らかに経営の世界ではバランスを欠いたもののはずです。
じゃあ、その「無料」(つまり企業にとってはコスト)は、どこにつながっているのだろう?
いったい誰が得をするのだろう?
そういったことを常に考えてみることが、戦略脳を鍛える習慣と言えるのかもしれません。
そこがなければ、いくら「空白」を見つけても、そこにアプローチするための具体的な方法が浮かばないのですから。
とはいえ、そんなアイデアを刺激する、ポジショニングマップ、いちど落書きする感覚で書いてみてはいかがでしょうか。
何か発見があれば、儲けものです。
——————————————
■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。
■時々読書会をやっています。開催情報はこちらをクリック