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事業承継の流れで現れる代表的な4つのパターン

親子の事業承継の中で、何かしら問題を感じている場合、その形態の多くは4つのパターンに大別できるのではないかと思います。
もちろん、例外もあるでしょうし、パターン化されたとはいえ完璧に同じとは言い切れないものもあります。
とはいえ、大きなくくりでとらえていくことで、問題が明確化しやすくなることもありますし、似た事例を探しやすくなります。
今回は、著者の目で見た事業承継のパターンと、その状況が生み出す結果を見てみたいと思います。

事業承継の中途にみられる4つのパターン

力関係が表す社内の状況

事業承継において、後継者の方にお話を伺っていると、ほんの少し状況を伺っただけで、意外と的確に会社の状況をイメージできるようになってきました。
なぜならば、事業承継中に社内に噴出する問題は、どこも同じ。つまり、パターン化できる可能性があるように思います。
私自身、これまではそのパターン化をしようとさえ思いませんでしたが、少し自身の頭の中にあるパターンをここで整理してみたいと思います。

例えば、あるタイミングで社員が同時に何人もやめていくケースがあります。
辞めていく社員は、その理由を給与などの待遇として語ることが多いようです。
であるなら、特段の条件の変更を行っていないのに、同時多発的にそのタイミングで退職者が続出するというのは、理にかなっていないのです。

その原因をたどっていくと、社内の力学に行き着くことが多いように思います。

4つの権力パターン

ここで、具体的にそのパターンを見てまいりましょう。

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Case1.先代の影響力が内外から消えるケース

これは、イメージとしては、ある日突然先代が体調不良や、死亡で会社への影響力を一切なくしてしまったケースです。
この場合、実務上は、社内は大混乱に陥るのは想像に難くありません。
後継者は、仕方なく会社の経営者に収まるといったケースが非常に多いように伺います。
すでに入社されている後継者である場合のみならず、もともとよそでサラリーマンをしていた息子が呼び戻されることも多く、全くその業界を知らない状態で社長に収まることも少なからずあります。

こういった状態で会社を引き継ぐと、まずは混乱の中、後継者はその会社のこと、商品のこと、業界のことをとんでもないスピードで学ぶ必要があります。
その様子を、少し離れたところで番頭クラスの人間が静観していることも多いようです。
特に製造業の場合、工場長クラスの人にしてみれば「商品を知らない若造」が何を言い出すか、という不信から関係がスタートしますから、一筋縄ではいきません。
しかし、後継者が地を這いつくばるように努力していると、次第に社内の雰囲気は後継者を盛り立てようと団結を始めます。

そうなってくると、その様子を見ていた番頭も、後継者を信頼し始め、協力的になり始めます。
その危機を脱しさえすれば、その後の社員とのコミュニケーションも比較的円滑で、会社の改革もスムーズに行えることが多いようです。

Case2.役職が変わっても実態が変わらないケース

後継者を社長にし、先代は会長に。時の要請を経てこのような見かけ上の代替わりを果たしても、権限も責任も一切譲渡されていない状態、ということもよくあるケースです。
この場合、後継者が先代に遠慮して発言を控えているケースと、後継者が先代と同じスタイルを継承しようとしているケース(もしくは後継者が独自のビジョンを持っていないケース)に大別できると思われます。

前者の場合、後継者は、先代の影響力が低くなるのをひたすら待っているのかもしれませんが、こういう後継者はそもそもそのことを誰かに相談することは少なそうです。逆に言えば、思ったほどストレスを抱えていない状態です。言い換えれば、波風の立たない状態ともいえるでしょう。
また、後者の場合は、後継者は先代のやり方をそのまま継承しようとしているので、さしあたって大きな問題は起こりません。

しかし、問題はこの状態のまま先代がいなくなった時のことでしょう。会社は方向性を見失い、業績はじりじり悪化する可能性が高いと思われます。また、ビジョンが明確にならないことから、社内からクーデターが起こる可能性が高まります。

 

Case3.責任と権利で立場が変わるケース

比較的多いケースが、営業数字などの責任は後継者に移譲し、お金の管理や決定については先代が握っているケースです。この場合、後継者が何か新しいことを始めたい場合、金銭面において自分でコントロールすることができず、不自由な状態が起こり、速やかな実行ができない状態であることが多いようです。先代と後継者の対立が、他人から見ても見える可能性があり、どことなく不安定な印象が見え隠れします。

ぼんやりした形ではあるが、社員の中でも先代派、後継者派という派閥ができ始めます。

実務を進める後継者と、最終決定権者である先代の意見の不一致が散見されるようになり、社員(特に事務担当やパート・アルバイトといった作業を担当する部署)がどうふるまうべきかで迷いを感じるようになる。結果、一斉退職などが起こりやすいタイミング。

先代の考えと、後継者の考えが綱引き状態で、社内の各所に軋轢を生み、進んでは後戻りを繰り返す状態がみられやすい。

 

Case4.先代が会社に影響力を残すケース

名実ともに、先代は引退を宣言するが、圧倒的な存在感をなおも社内外に残しているケースがあります。この場合、先代が全く発言の口を閉ざすのではなく、時折社内外で発する言葉が、後継者の方針と違っているといった事態が起こる可能性があります。状態は、Case3.とかなり近い状態ではあるものの、かかわり方が少し薄くなっている状態といえるでしょう。

この状態では、先代はもはや実務は限定的になっているものの、定期的に会社を訪れている状態であることが多いようです。すると、会社でこれまでのように用意された仕事がない分、新たな仕事を作り出すことが多いようです。これを自分で行っている分にはよいのですが、社員を使って行ったりするので、そこから問題が発生することも多い。

 

これらをざっくり一覧化したのが以下の表です。

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パターン化することで見えてくること

自分がどのステージにいるのか?

これらのパターンは、順次ステップしていくというたぐいのものではありませんが、傾向として、Case2から順にCase4までを経験することはよくある話です。
こういった状況を知ることで、情報を共有すべき相手を特定しやすくなります。

例えば、Case3の時期を経験したが、今は解消した、という人がいれば、今、Case3.で困っている人にとっては、「なぜその問題を解決できたか?」を聞きやすくなります。
さらに、次に何が起こるかがわかれば、そこへの対処もやりやすくなるでしょうし、問題の原因を明確化する助けにはなるでしょう。
ぜひうまく生かしていただければと思います。

現時点では、取り急ぎパターン化してみましたが、兄弟が絡むとより複雑になりますし、今後、パターン別対応などをまとめられないかチャレンジしていきたいと思っていますので、今後の本ホームページにご期待ください。

 

 

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