後継者

後継者が仕事で充実感を得るためのロードマップ

後継者の方に、将来の夢はありますか?と尋ねると、回答は大きく三つのパターンに分かれます。
一つ目は、親から引き継いだ(引き継ぐであろう)会社を大きくしたい、というもの。
二つ目は、とにかく自由に会社を運営していきたい、というもの。
そしてもう一つは、特に思いつくものがない、というもの。

圧倒的に多いのは・・・

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後継者を動かす原動力

危機的状況から逃げ出そうという本能

人の特性を見ていくと、最も強い衝動は危機的状況から逃げ出そうという意志のようです。
やけどをしそうな熱いストーブに手をかざせば、自然とその手を引っ込めます。
もはやこれは無意識の行動で「熱いから手を離さなければ」と考えて行動するものではありません。
反射的に人は、手を引っ込めます。

これは熱いとか、痛いとか直接的な刺激もそうですが、精神的な刺激に対しても同じような反応があるようです。
例えば苦手な人と接しているとき、少し体に意識を向けてみてください。
足は横や斜めを向いていたり、目を合わせられなかったり、他の人と話すより距離をとったりします。
これはもしかしたら、無意識に「逃げ」の体制を作っているのかもしれません。

生き物としての本能として、自分の安全を確保することに対して、非常に感度が高いということがわかるのではないかと思い案す。

「夢」は?と聞かれて答えに窮する

私が20歳代、30歳代のころ、勉強会などでこんなことを聞かれたりすると、いつも答えに窮していました。
「経営者になるにあたっての夢は?」
当時は、「何もありません」と答えるわけにもいかず、もっともらしい夢を語ったように記憶しています。
売上を何倍にするとか、社員を何人に増やすとか。
そうそう、アメリカ西海岸に支店を出すとかも言ってましたっけ。

クソまじめでありがちな答えと、なかなか当時の会社の規模では考えられない現実味のない話を交えることで、面白みのない男という評価を受けないよう気を使ったのではないかと思います。
正直、どちらにもワクワクするような感情はわきませんでした。

当時の私に、さしたる夢などなかったのです。
そんな事を考える暇があるなら、今目の前の問題をいち早く解決することこそが急務だったわけです。

「周囲の人間を自由に操りたい」という夢

ある後継者の方は、こんな夢を語っていました。
「周囲の人間が自分の思うように動くようになってほしい」と。
それだけ自由にならないことが多いのかもしれません。

ここまで直接的な表現をされる方は少ないですが、
・せめて自分の裁量で〇〇できるようになれば・・・
・自分が考えたことをスムーズに実行できる体制ができれば・・・
・やろうと思ったことをさえぎられない環境があれば・・・
というのを夢として語る方は少なくありません。

マイナスの状況をプラスにできるのか?

ワクワクしない「夢」

本来なら、「夢」を聞かれれば、目を輝かせてワクワクする話をするものです。
しかし、後継者の多くは、せめてこうなれば・・・という思いを語る。
状況をより良くする、というより、マイナスの状況をとにかくフラット(ゼロ)の状況にしたいというものが多いように思います。
実はこれでは動けないことも多いのではないでしょうか。

以前にも書いたことがありますが、ハーズバーグという心理学者による衛生理論というものがあります。

参考記事:跡継ぎである後継者が本来の自信を取り戻す方法

これは、マイナスの状況に対する不満の解消は、満足感を生まない。
満足感を感じるのは、ヤリタイことをしっかりとやることによって生まれるものだと言う考え方です。

つまり、私たち後継者は、不満を和らげることにばかりフォーカスして、満足感・充実感につながる目標を持てないでいる可能性があります。

私が経験したどん底の時期

実は私自身、この問題の中にどっぷりとつかっていたことがあります。
「やらなければならないこと」を目の前に積み上げてみるものの、何一つ前に動かない。
「こうすればいいかも」と思って動き始めれば、周囲からの妨害が入る。
「妨害に対処しよう」とおもうと、感情的にそのことで頭の中がいっぱいになる。
けっきょく、もう何もする気が起きない。
どうせ自分なんてダメなんだ。
そんな風に思っていたことがありました。

しかし、ある時にこのことに気づいたんです。
ああ、自分は、不満の解消ばかりやってたな、と。
じゃあ自分のやりたいことって何だろう?
初めは大それたことばかり考えてました。

楽して儲けて、ポルシェに乗って、大きな家を買って・・・みたいな(苦笑)
それでも今一つ動き出せないでいる自分が、どうしよもない奴に見えてこともありました。
けど、そこから抜け出すのは、意外と難しくはありませんでした。
気づけば簡単、って感じです。

仕事と関係づける必要はない

どちらかといえば得意なこと、好きなことは?

それまで私は、自分への問いかけに限定していたことに気づいたんです。
「今の仕事という範疇で、やりたいことは?」と言う感じです。
だとすれば、会社を大きくしたいとか、誰でも言える「夢」しか語れません。

もう一つの限定は、お金持ちになるとしても、「今の仕事を手段として」お金持ちになる、という制限をしていました。
そりゃあ、楽しくもないわけです。

そういうことを取っ払って、まずは自分の好きなこと、得意なことは何か?を考えてみました。
私の場合、こうやって書くことであったり、自分の考えを伝えることだったりします。
じゃあ、ということでブログを始めてみました。
営業がキライな私は、会社の営業をなくす努力として、「書く」ことで集客する方法を考えました。
そこそこ好きなことなので、そんなに無理しなくてもできてしまいます。
それが少しずつ蓄積し、商業出版まで決まるところまで来ました。

で、会社はどうするのかって?
すっかり忘れてたんですが、私、小学生のころから人の心理を推察するのが好きだったのを思い出しました。
たぶん、長男なので、親の顔色をうかがう癖がついていたのでしょう。
それをちょっと勉強してみるわけです。
関心があるから、どんどん興味の対象は広がります。

気が付けば、人のマネジメントや、リーダーシップについて、そこそこ知識がついています。
そのアドバイスが正しいかどうかは別として、たいていの経営者の「人」に対する悩みに、何かしらの提案を複数用意するぐらいのことはできるぐらいになりました。
社内での実践はボチボチですが、これは一つの武器になるかもしれません。

どっぷりはまるとキッカケが訪れる

また、面白いな、と思うのは、当初の意図の通りにはいかない、ということ。
たとえば、私が「書くのが好きだから文筆家になろう」と思ったとします。
けどたぶん、そうはならないと思います。
もともと「何になりたい」という希望があったわけではないので、目標に一直線ではないんです。
けど、やってるうちに、付き合う人が変わってきたりします。
これ、ビジネスにおいては、人脈の広がりと言えるかもしれません。

すると思いもかけないところから、思いもかけない話がやってくるものです。
そういう中で、「ああ、本当はこうしたかったんだ」という思いに至るんじゃないかと思います。

そして、私が夢中にやってるものですから、親はあまり干渉しなくなってきました(笑)
なにをやってるのか?という思いはあるのでしょうが、口を出せない雰囲気が出てるんじゃないでしょうか。

社員はおざなりにできない?

そうやって後継者が自分勝手をしていると、社員との関係性ってどうなの?
という疑問がわいてきます。
それがあるから、一番初めに、社員をまとめておきましょう、と私は提案しています。

ちゃんと絆ができれば、多少後継者が変なことをやりだしてもさほどハレーションは怒らなくなります。
そして、社員をまとめるシンプルなコツは、「安心感」を彼らに与えることです。
何かあっても安心だからこそチャレンジできるし、何を言っても安心だから意見を言える。

そして社員に安心感を与えるには、後継者は覚悟が必要になります。
なにがあっても、社員のカバーを自分がするぞ、という覚悟。
けど、逆をやりがちなんです。
トカゲのしっぽ切のように服従しない、意図にそぐわない社員を解雇する後継者、結構いらっしゃいます。
自分の安心のために仲間を排除する人は、人から信頼されるわけはないですね。

安心感を与えられれば、あなたに対する社員の見る目も変わります。
だから、あなたも自由になれる。
自分が自由を得るのに「時差」が発生しますから、少しの間耐える必要はあるかもしれません。
しかし、得るものの大きさを考えれば、多少の我慢ならできると思うのですが、いかがでしょうか。

スポーツマンのある後継者の話

ある後継者は、スポーツ大好き。
社員の気の合う仲間で、サッカーチームを作って休みの日には皆でスポーツを楽しんでいるようです。
しかし、会社に来てスーツを着れば、全く別人のようによそよそしいとのことでした。
いやいや、なんで、サッカーの雰囲気を社内に持ち込まないんですか?と思わず訊き返してしまいました。
当人は、仕事は仕事なので・・・と気のない返事。

たぶん、そんな堅い事言わなくたっていいんじゃないか、と私は思います。
甘えを出すのはよくないと思いますが、節度をもったチームとしての勢い。
これを利用しないなんて、もったいないと思います。
サッカーが好きなら、サッカーで会社をまとめればいいんです。

そしてそれは、次のビジネスへの架け橋になるような気もするのですが・・・。

まとめ

後継者は、積極的に叶えたい夢が見えないことが多いようです。
それゆえ、不満の解消にばかりフォーカスしてしまいます。
それは逆に言えば、良くない部分ばかりを見ている、ということです。

その視点を、やりたいこと、好きなことに集中してみます。
そしてそれが仮に仕事に関係ないものだったとしても、そこそこやりこんでみる。
仕事への活用は後から考えればいいと思います。
大事なのは、趣味と仕事、という風に分けてしまわないこと。
趣味をうまく仕事に持ち込む方法を、ぼんやりとでも考えてみてください。

それを可能にするために、社員との絆づくりは最も重要なプロセスです。
コツは、社員に安心感を提供すること。

すると、物事は意外な展開を始める可能性が高いと思います。
その変化(自分の変化、社員の変化、会社の変化、顧客の変化)をしっかりと観察し、進みたい方向を見極めていきます。
ざっくりした筋書きではありますが、後継者が会社経営の中で充実感を感じられる一つのモデルケースと言えるんじゃないかと思います。
自分なら何に集中するか。
少し時間を考えてみてはいかがでしょうか。

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