2人で残業しながらやっていた仕事を1人で定時に終わる仕事にした後継者の社内断捨離

私の会社で衝撃的事実が発覚しました。
なにかというと、小さな作業ではあるのですが、社内で
「何のためにやっているかわからない」仕事が継続して行われている事がわかったのです。

それぐらいで衝撃的って、オーバーじゃないの?
と思われる方もいるかもしれませんが、その首謀者は私だったんです。
なのにそんな指示した記憶がまったくない。

かなりの自己嫌悪でした。

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過去、このブログで何度か書いていますが、ある時2人の事務社員が退職しました。
彼女たちは毎日、朝8時から夜は19時くらいまでは残業するのが当たり前。
今でいうブラック企業だったのかもしれません。

しかし、就業時間短縮への努力を惜しんだつもりはありません。
あれこれ考え、やっては見たけどうまくはいかなかった。
結果として、社員に愛想をつかされたという痛い経験になりました。

彼女たちが辞めた後、社内の業務を全面的に見直し、現在は同じような業務をやりつつ一人で定時退社できる状況になりました。
その時に感じ取ったコツのようなものをまとめてみたいと思います。

同じ業務の繰り返しでも仕事量は増えていく

優等生ぶりたがる経営幹部

私が父から引き継いだ家業は保険代理店です。
ここ10年ぐらいのスパンで、やることが大きく変わったわけでもありません。
イノベーションらしいイノベーションが起こっていない、古い業界です。
そういう中でも、業務を効率化するシステム化は進んできています。
だから、作業の効率化は実現していても、ますます忙しくなることなどありえません。

しかし、当社に限らず、同業他社は「ますます忙しい」というところが多い。
その原因の一つに、コンプライアンス(法令順守)への対応があると言えます。
その主眼は、お客様の誤解や誤認を避け、不満を作らないもしくはそれを迅速に解決するためのものです。
要はそれを防止する仕組みができればいいのですが、厄介なのは万一の場合の監督官庁の監査対策が含まれます。
それらを記録し、「ちゃんとやっている証拠」を残すことが重要になります。

この業界は割と、同業他社同士の交流が頻繁な業界です。
そうすると、「いかに、(監督官庁対策が)すばらしいか?」という視点で実践事例が取り上げられがちです。
なぜなら、そういったことに手間暇かけて、コストをかけることを、メーカーである保険会社や同業他社が称賛するからです。

目的を履き違えた仕事の力点

さて、こういった監督官庁対策には限りがありません。
どこまでやっても完ぺきはありえません。
一度問題になってしまえば、どれだけやっていてもそれなりの罰を受ける可能性は否めません。

これは試験対策に通じるところだと思いますが、100点を目指すのと、90点を目指すのでは努力の量はケタが変わります。
しかも、コンプライアンス対策に100点満点はあり得ません。
99.9点までできても、かならず穴は残ります。

往々にして、業務は「ミスをなくすため」に倍々ゲームで増えていきます。
完ぺきな書類を仕上げるため、ダブルチェックをする。
たまに起こる問題に対処するために、日頃から膨大の量のデータ整理を常に行う。
突発的な事態に備えるために、貴重な時間を割いて入力業務を行う。
などなど。

ふたを開けてみると、1年の内に1回あるかないかのときに備えて、就業時間の8割近くをつかっている、なんて笑い話も起こり始めます。

ミスを責める体質が仕事を複雑化する

その背景には、ミスを責める体質です。
基本的には、行政はそういう体質ですね。
ミスがあったらただじゃ置かないぞ、ということで監査やらをやるわけです。

社内でも、トップダウン方式の経営では、こういう状況が起こりやすくなります。
「おい、あれはどうなった?」「なんでこうやってなかったんだ?」
イライラしながら社員に怒りをぶつける。
気が短い創業経営者にはありがちなシーンです。

やっかいなのは、それをトレースする後継者もいるから組織崩壊を招くのですが・・・(過去の自分です(;^_^A)

そうやって怒りをぶつけられることがわかってる社員は、そういった気まぐれに怒り出す上司に完全対応しようと考えます。
その結果、どんな怒りが飛んできても対応できるよう、いろんなことを整理します。
書類保管が必要ないものでも丁寧にファイリングし、出す必要のない手紙でも顧客に出し、やる必要の薄いチェックを日々やる。

実際に当社で残業続きだった社員の業務を見てみると、7割がた気の短い経営者対策の仕事でした。
その中には、数年に一度あるかないかの顧客からのレアな問い合わせへの対応のための書類整理も含まれています。
そしてそれをすべてやめてしまったら、一人で、定時退社でできる業務量になったという信じられない結果。

もう一度仕事の目的を考えてみる

こういった経験をして、さまざまなことを考えてみました。
その時の判断基準が、「その作業は何の目的でやっているか?」です。
その目的に応じて、業務の深さを考えていくし、目的が明確でないものはやめられないか検討する。

そんな風に、社内業務の断捨離は結構気を使っているつもりです。
それでも冒頭の話のように、いまだ「何の目的で始めたんだっけ?」という業務は残っているようです。

その役目を終えたというのならまだいいのですが、始めた経緯さえ思い出せないことを事務の方がずっとやり続けていた。
まあ事務担当者に言わせれば、「1週間で5分、10分の作業ですから」といいますが、そういった作業の積み重ねが長時間労働につながります。
しかも、その言い出しっぺが自分だったとは、なんとも自己嫌悪です・・・

ところで、こういった社内業務の断捨離を始めたころ、若干の先代との衝突はありました。
「今までこういう書類をとっていたのになぜとっていないのか!」と怒りをあらわにする先代から、社員を守る必要がありました。
そもそも、社員とのコミュニケーションをきちんと取り、彼らの安全を私が確保する、ということを信じてもらわねばなりませんでした。
そのことが結果として、当社の事業承継には、非常にいい効果をもたらしたのです。

 

作業の断捨離

作業の洗い出しとその目的

会社の作業は、複雑に絡み合っています。
その作業単体で存在するものというより、多くのかかわりの中でその作業が存在することも多い。
そういう意味では、いきなり何かをやめてしまうのは危険な部分もあります。
とはいえ、それなりに冒険も必要になってきますから、「まずはやってみる。不都合があれば元に戻すか別の方法を考える」という前提で進めることが重要です。

そこで、作業を日ごろのルーチンに沿って、一つ一つ検討していきます。
その作業の目的は何か?です。
ここで私の場合、二つの基準を設け、社内にも共有しました。
手間や時間をかけてもいい仕事と、かけるべきではない仕事です。

【手間暇をかけたほうがいい仕事】

顧客との出会い・関係作り・売り上げづくりにつながる仕事

【手間暇をかけないほうがいい仕事】

記録・証拠の保全・内部管理・コンプライアンス対策

※これは当社独自のものですから、皆さんが採用される場合はご自身で検討されることをお勧めします。

分類後の判断

ここで、手間暇をかけないほうがいい仕事を、次のステップで検討します。

・そもそもこの仕事は何の目的でやっているのか?
・より価値ある仕事にできないか?
・辞めることはできないか?
・より簡単にできないか?

まず始めるのは、その仕事・作業の目的です。
何かしらを実現するためにやっているはずなので、その作業が目指すゴールを明確にします。
もしこの時点で「なんだっけ?」となる場合、やる必要がない仕事である可能性が高いわけです。

目的が明確になれば、少しの工夫で別の目的を同時に狙えないか?を考えてみます。
これで別の作業がなくなることも結構あります。
また、ダブルでやってる仕事が浮上してきた李もします。

その広がりが見えない場合は、その作業をやめたらどうなるか?を考えます。
その作業がもたらす効果と、かける時間や手間を天秤にかけてみます。
そう考えたとき、辞められる仕事(ある程度の思い切りは必要ですが)となる事もあります。

どうしてもやめられない場合は、その目的をより簡単に実現する方法がないかを考えます。
仕事のステップの簡略化、フォーマットの簡略化、細分化、得意な方を担当に担当替えをするなどなど。

フィードバックを受ける

やっていたことをやめる、というのはけっこう大きなことです。
そこで大事なのが、現場担当者からのフィードバックを受ける必要があります。
つねに「何か問題があったら教えてね」と言っておくのは大事です。
現場の担当者はアラームですから、そういった話はちゃんと聞く必要があります。

できれば、1カ月後くらいに感触を聞いてみます。
企業の規模にもよりますが、立ち話で十分です。
「あれ、やめたけど、その後どう?」
関係者に話を聞けば、「PDCA」のCにあたります。

記録に残したいのであれば、決まったことをリストにしておき、そこに一つ枠を追加しこう記述すればいいでしょう。

A:9月1日に実施し、10月1日に担当者に確認し、問題がなかった場合
「2018年9月1日実施」
「2018年10月1日振り返り(特に問題なし)」

B:9月1日に実施し、10月1日に担当者に確認し、小さな問題を発見したので若干やり方を変えた場合
「2018年9月1日実施」
「2018年10月1日修正(修正箇所:〇〇を××することに変更)」

これで一応の試行錯誤の経過を記録にできます。

 

大きな戦略や、プロジェクトのPDCAの場合、「C」におけるミーティングはあったほうがいいのかもしれませんが、作業レベルの話なら立ち話でOKです。
これを仰々しくやろうとすると、また余計な仕事を増やしてしまい、本末転倒となります。
やらずに済むことはやらずに済ませ、時間をかけると決めた目的にそぐわない仕事は極力簡易にする。
そこに忠実である必要があります。

本当の問題は「やり方」ではない

「警戒心」が見える化を阻む

ここまで、業務をシンプル化する私なりの「やり方」をお伝えしてきました。
しかし、この「やり方」がわかったところでうまくいかないことも多いのです。
なぜそんなことが言えるかというと、当社を去った2名の社員とは基本的に同じやり方を試そうとしました。
残念ながら、結果は「なにもかわらなかった」。

なぜかというと、彼女たちは私や先代に対して常に警戒をしていたのだと思います。
すべての業務を白日の下にさらせば、余計な介入をされてしまう、ということですね。
そういったことに対して警戒モードだったので、すべてを正直に話さないし、改善案が出たところでそれに従いません。
なぜなら、彼女たちは自分の身を守ることで必死だったのだと思います。

なにかあって、怒鳴られたくない。
そういった恐怖が、上司の命令を無視してまでコッソリそやっていた業務を守り通した動機です。

「もうこの仕事は目的を失ってるからやらなくていいよね」となったとしましょう。
実際にやらないでいたとき、何か問題が起こった。
そのときに「なんでやらなかったんだ!」という怒鳴り声が聞こえれば、そりゃあいい気はしません。
そういう意味では、彼らを守る防波堤が必要なのです。

「感性」の人

多くの場合、皆さんの親(つまり先代)は、感覚的にモノを言う人ではないでしょうか?
その場の思い付きであれこれ言って、一貫性がない。
今、「こんなことやらなくていい」と言っているのに、一週間後には「なんでやってなかったんだ」と怒り出す。
特に創業社長だとこの傾向は強いと思います。

後継者はその防波堤とならなければ、業務の効率化は恐らくできないでしょう。
実は、ロジックではなく、感情の問題なのです。

「防波堤って、損な役割だなぁ・・・」と思われるかもしれません。
しかし、これは後継者にとってはチャンスです。
なぜなら、社員をまとめるという意味においては、あなたの言葉を社員が重視するという意味においては、これ以上にないチャンスです。
後継者であるあなたについていきたい、と社員が語りだすきっかけとしてはいいタイミングじゃないかと思うのです。

だから、社内で警戒心を解くことができないない社員たちの警戒心を緩めてあげる工夫をしてください。
やることはシンプルです。
あなたが、社員にとって信頼に足る人間で、あなたがいれば社員は安心できる、という状態を作るだけです。
これを、心理的安全性といいます。

これを社内で作ることは、きっと後継者にとって大きなターニングポイントになる事でしょう。

 

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