ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(2)

保険代理店のR社長は、会社を変革しようとその方向性に関する会議を開きました。
しかし、会議の結果は惨憺たるもの。
大混乱で収拾がつかなかったといいます。
変化の過程で、混乱は必須。
私はそうお伝えしましたが、そもそもその混乱というのは何を根拠に混乱したと言っていたのでしょうか。

(前回の記事はこちらから)

ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(1)

 

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二代目経営者R社長は、社内に呼びかけました。
今はまだ何とかなっているものの、このままだと会社はいずれうまくいかなくなる。
そう社内に問いかけ、その現状を打開すべく全体ミーティングを持ちました。
しかしR社長の判断は、「失敗だった」といいます。
収拾がつかない、と。

R社長は、今の労働集約型のビジネスモデルを脱却したい、と考えていました。
そしてたどり着いた結論が、マーケティングの考え方を取り入れようというものでした。
しかし、社員はそうは考えていなかったのです。

相いれない視点

会議における混乱の原因

R社長は、社員一人一人がお客様に個別に商品を売り込み、契約を獲得するというビジネスモデルに限界を感じていました。
なぜならば、それでは会社の成長に限界が生じるからです。
だから根本的なビジネスモデルを変えなければならない。
そう考えていました。
そこで思いついたキーワードが「マーケティング」です。
関連書籍を共有し、そのキーワードを全社員でピックアップしてきました。

しかし、ピックアップしたキーワード自体が、それぞれの社員でまったく相いれないものです。
R社長はどちらかといえば、会社全体のビジネスをどう変えていくかという視点。
社員はみんな「なにをやるか」というところばかり。
書籍にある事例を取り上げ、これもやる、あれもやる、というものの、会社として取り組むにはどれも相応に大きなテーマです。
ある程度絞り込む必要があるのですが、まったく、共有できるキーワードがないのです。

そこで、「どうまとめていいかわからない」とR社長は焦ったそうです。
私は言いました。
「まあ、そんなもんでしょう。双方、何を見てるかが違うことがわかった時点でいい機会になったんじゃないですか?」

経営者の幻想

これまでもR社長は、自分の考え方を社員に伝えていたといいます。
しかし、実際は伝わっていなかった。
そんな様子にがっくり肩を落としていました。
実際は、そんなものですね。
どれだけ言葉を尽くしても、同じ言葉を耳にしても、その人の思い込みでいかようにでも理解できる。
むしろ、それまでのR社長は数字のことしか話をしなかったそうですから、その思い込みを作った張本人は自分なわけです。
だから、会社を変えるとかいわれても、社員にとっては「数字を挙げろってことでしょ?」という程度の理解しかないのです。

会社を変えようと、R社長は言葉を尽くしてきたつもりでした。
しかし、言葉だけでは限界があったのでしょう。
なぜなら、会社として社員の売り上げしか評価しかしてこなかったから。
社員としては、社長のこれまでの言動を含めて、今の社長の言動を判断せざるを得ません。
ましてや、「マーケティング」という言葉は、売り上げに直結するイメージの強い言葉。

社員さんの脳内はこんな感じで翻訳されている気がします。
「私たちがあるべき姿は、もっと営業を工夫しなければならない。
これこそがR社長の言いたいことなのだ」と。

思い込みを解消するには・・・?

「社員さんの視点から始めましょう」

そこで、私はこうアドバイスしました。
「社員さんの視点から始めましょう。いきなり視点を変えろと言ったって変わるわけありませんから。
売上を上げる会議でいいです。そのかわり、ゴール設定だけは明確にしておいてください」
そのゴールは何かというと、
「マーケティングの目的は、営業をなくすこと」
というP・F・ドラッカーの言葉です。

つまり、この会議の目的は、営業をなくすことである、という前提で行うようお願いしました。
社員さん視点でいえば「売上を上げなければならない。そのために今何をするか」が課題。
R社長の視点でいえば「中長期的に会社を発展させるためには、会社を変えていかなければならない」という課題を持っています。
それを内包するのが、マーケティングです。

とはいえ、マーケティングの定義はなかなかわかりにくいものです。
そこでシンプルに目指す結果を設定しましょう、と。
それが「営業をなくすこと」であり、それはつまり、お客様が自発的に集まってくる仕組みを考えることです。
さらに言えば、営業社員が一軒一軒訪問して行う行為とは一線を画するものです。
結果として、営業社員は時間の大半を「買う気のあるお客様」に使うことができ、効率化が図れます。
「そんなことできるの?」という社員さんもいるでしょう。
しかし、実際にやってる会社はたくさんあります。
そこを目指すのが、ちょうどいい感じじゃないでしょうか?
できるかできないかはともかくとして、そこを目指そうよ、と。
R社長は、「やってみます」と快諾いただけました。

社員の脳内も混乱!?

「営業という行為をなくすためにできること」と問われて即座に社員から意見が出るとも思えません。
R社長でさえそんな考え方をしたことすらないのですから。
とはいえ、ここまで質問がはっきりすると軸がぶれにくくなります。

若干のガイドをしながら、話し合いは進んだそうです。

「営業をせずに済ませるためには、お客さんが何が何でも欲しい、という情報やサービスが必要ではないか」
そんな問いかけを社員にしたそうです。
「たとえば、のどが渇いている人に水を上げるといえば人はやってくる。お客さんがどんな”渇き”を持っているか、知ってますか?」
意外とお客さんの”渇き”を知っている社員はいないものです。
場内は、シーン・・・。

お客様の頭を占めるものは何?

彼らの扱う商品は、ウォンツもニーズも潜在化している商品。
だから、営業社員は、売り込みにいかなければ基本、売れない商品です。
都合よくお客様から電話がかかってきて、売れるということは一年で数件程度です。
そんなことから、社員は自分たちの商品をいかにして売り込むか?
という考え方にずっとフォーカスしてきました。

その前提として、私たちの商品は素晴らしい(はずだ)
私たちの商品は、おきゃくさんに求められている(はずだ)
という思い込みに支配されています。
そう思わなきゃやってこれなかったのかもしれません。
一方、それはあくまで売手視点であって、顧客視点ではない。
今まで彼らは、メーカーばかりを気にして、メーカーに言われるがまま動いていたので、そんな疑問を持ったことさえなかったようです。
彼らを評価するのがメーカーである以上、致し方ないのかもしれません。

ありがちなのは、
「〇〇保険という商品を、どうしても欲しいと思うお客さんは?」
という問いになりがち。
しかし、お客さんの思考は、1年が8,760時間なら、そのうちの1~2時間しか保険のことなど考えないでしょう。
それより、「お客様が集まってくる」ということを考えるなら、1年のうち大半を占める悩み事を知らなければならない。
そんな話に行きつく必要があります。
それこそが、前述の”渇き”にあたるものです。

その問いかけを社内にしてみてもも、やっぱりシーン。
それは私にとっては想定内です(笑←やっぱり意地悪)
「だったら、全社員で協力して、お客さんに聞けばいいんじゃない?」

分からないなら聞いてみよう。
シンプルな話です。
じつは、この顧客インタビューは、顧客を知るだけでなく、社員の意識の変化を促すプログラムの1つといえるかもしれません。
それは長らくお付き合いのあるお客様のことを、自分たちがいかに知らなかったかを思い知らされます。
そういった体験を通じて、社員のみなさんは意識を少しずつ変化させていくと考えられます。
人は、体験から学ぶことが手っ取り早いのではないかと思うのです。

つづく

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