後継者

後継者が見えている世界、見えていない世界

同族企業の後継者。
その多くの人が口をそろえて言うのは、
かなりしんどい状況だということ。
そりゃあ、経営者としてリーダーとして立つことを求められる立場。
楽なわけはありません。
しかし、しんどい理由はそれだけではないのかもしれません。

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後継者の成長を阻むもの

人の成長を阻害する要因

人が何かを学び、成長していく過程で、それを阻む障害があります。
それはこんなもの。
●選択肢がないと思える状況
●自らかけている制限
●プレッシャーを感じる
●ゴールが見えない
●価値観と行動が合致しない
●当人比の評価がなされない
これらは人材育成においても重要な要素なので、少し詳しく見ていきましょう。

選択肢がないと思える状況

これはシンプルに言えば、強制されるということ。
物事を強制されると、ヤル気は失せますね。
自分で選び、決めたことなら、それなりに責任を持とうとしますが、
他人に強制的に支持されたことには不満を感じるものです。
本当は、ああしたかった、こうしたかった。
そんな思いが、前進する力を奪い去ってしまいます。

後継者においては、そもそもその立場自体が「選択肢がなかった」
と思わせる状況なので、何かうまくいかなくなると、
「自分で望んだ状況じゃないのに」という思考に陥り、前に進みにくくなってしまいます。

自らかけている制限

これはある種の思い込みです。
本当は、別の方法や、別の道があるのに、それを自分で「そんなことをしてはいけない」と
思い込んでしまうパターン。
この思い込みが強いと、別の可能性がどんどん見えにくくなってしまいます。
けっかとして、前述の「選択肢がないと思える状況」に陥ってしまいます。

プレッシャーを感じる

人がパフォーマンスを発揮するために、適度なプレッシャー、緊張感は不可欠です。
たとえば、スポーツ選手が感じる試合前の緊張感、ライバルとの競り合いにおけるプレッシャー。
これはパフォーマンスアップに寄与します。
しかし、継続的にプレッシャーを浴びている状態になると、今度は体も心も委縮してしまいます。
後継者は、未来の経営者。
そんなプレッシャーもあるし、早く成長しなければならないというプレッシャーもある。
親からのプレッシャー、周囲の目によるプレッシャー、常に監視されているかのように感じてしまうものです。
こういったプレッシャーの中では、自分の能力を発揮するのが難しくなります。

事業承継の過程で起こること

ゴールが見えない

昨日も少し書きましたが、ゴールがどこにあるのかが見えないのはキツイことです。
持久走で、あと100mでゴールできるのか、まだ10Kmはしらなければならないのか。
この差は大きい。
ゴールが見えなければ、スパートも、ペース配分もできない。
あと〇年たてば終わるという希望も抱けない。
そうなったときに、絶望的な気持ちになることもあるのが後継者の目から見た事業承継。

価値観と行動が一致しない

自分の思ったことと、行動が一致するというのは意外と重要なことです。
たとえば、サラリーマンの場合「本来はお客さんにはこのような提案をすべき」と思っても、
会社の方針として「この商品を優先的に売れ」というしれが出ればそれに従わなければならない。
自分の価値観を心の底に沈めて会社の指示に従う。
これでは心が壊れてしまいます。
後継者とて同じで、本来こうあるべき、と思う行動がある。
しかし、それを先代は許さない。
そういうこと、けっこうありますね。

当人比の評価がなされない

他人と比較した自分というのは、心を奮い立たせるのには有効です。
いわゆる、好敵手(ライバル)というやつですね。
しかし、自分にその思いがないのに、他人とばかり比較されるのはきつい話です。
がんばって成長したのに、他人と比べてよいわけではないから評価されない。
そうやって、どんどんと自尊心を失っていく。
後継者にはよくあるパターンですが、比較対象の相手は先代だったりします。
これまで何十年も会社を引っ張ってきたリーダーと、ペイペイの後継者が比較される。
もうこれは、いじめの様にしか見えないかもしれません。

この阻害要因にどう対処するか?

誰かが何とかしてくれるのを待つか?

後継者として陥りがちな罠。
それは、周囲が変わることを期待するのです。
けどね、それを言葉にするとこんな感じ。

選択肢を与えてほしい。
自由にやらせてよ。
プレッシャーを与えるな。
ゴールを明確にしてくれよ。
自分の思い通りにやらせてよ。
自分の成長を認めてよ。

なんだか悲しいくらい駄々っ子状態ですね。
なんだか文字にするとムカついてきます(笑)
ああ、自分って、そんな駄々っ子やってたのか、と。

”知覚”の罠

ところで、人は見たいものしか見ない生き物です。
「確証バイアス」という言葉を聞いたことがありますか?
これは簡単に言うと、自分が信じていることを強化することには敏感だけど、
自分が信じたくないことを証明する事実を無視してしまうふるまい。
誰もが無意識にやってしまっています。

例えば、長時間並んでやっと入ったレストラン。
よっぽどおいしいのだろう、と期待していたのに食べてみるとたいしたことない。
あれ?と思うものの、これだけ人気があるのだからおいしいに違いない。
そう思って、おいしいと思える要素を必死に探す。
食べログのレビュー、周囲で食事をしている人の表情、同伴者の感想などなど。
人気のあるレストランで、並んでまで入ったから、おいしいはずだ、とおいしいことを証明する情報を探すのです。

他には、私と近い世代の男性なら車ですね。
自分が買った車。
なぜか、買った後、カー雑誌のレビューが気になる。
中には批判的なコメントもあるけど、それは完全無視。
いいことだけ取り上げて読む。
こんな経験、ありませんか?

何が言いたいかというと、たとえば
「自由がない」
と感じ始めると、自由がないことを証明する事実ばかりが目に飛び込んでくるのです。
少し離れた視点で見たとき駄々っ子に見える主張は、どうも自身の正当化をしている可能性があるんじゃないかと思うのです。

”知覚”を活用しよう!

さて、後継者が苦しい状態にあるとしたら、その苦しい状況は「確証バイアス」が作っているかもしれません。
いえいえ、もちろん大変な現実があるのは知ってます。
私だって経験者ですから。
しかし、あるとき感じたんです。
自分は、必要以上に自分の置かれてる状況を悲観的に考えすぎてるんじゃないか、と。
すると、割と自由なことに気づいたんです。
そりゃあ、先代はいろいろうるさいことを言いますよ。
けど、今度はそんな小言を聞かないようにしたんです。

「自分は自由だ」
という前提を頭の中で作り上げると、今度は自由であるという「確証」を得る情報ばかりを探し始めます。
つまり、問題を大きくしているのも自分、小さくできるのも自分、ということになります。

他者をコントロールしたい気持ちはわかります。
こんな風に自分を変えるより楽に見えるのですから。
しかし、実際は、他者を変えようとすると、期待と現実のギャップにイラつき、
余計にストレス増大です。
けっか、たいてい、うまくいかないことのほうが多い。

はじめは、こう考えるだけでいいのです。
自由がないな・・・と思ったら、その瞬間
「いやいや、自分が自由だとしたら、どこがじゆうだろうか?」
と問いかけてみる癖をつけてください。
選択肢がないな・・・と思ったら、
「選択肢があるとしたら、それはどんな選択肢だろうか?それはどうすれば選べるだろうか?」
と問いかけてみます。

はじめのうちは、モヤがかかって見えないところに、その答えが隠れているはずです。

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