親のようになりたい後継者と後継者を拒絶する社員

年の瀬。
ちょうどクリスマスイブの2日前だったかと思います。
数年前のその日、ある工場が火災で全焼しました。
幸い、死傷者はおらず、類焼もありませんでした。
しかし、工場はほぼ全焼で、地下倉庫は消化の放水でプールのようになっていました。
消化が一段落したころ、現場を見に行くと、消化放水の勢いですべての窓ガラスは割れています。
焼けただれた工場内に一歩入ると、焦げ臭いにおいが鼻を突き、かろうじて残った鉄の階段はすすで真っ黒。
地下に目を落とすと在庫商品が、水びだしの倉庫にぷかぷかと浮いていたのを、今でもはっきりと記憶しています。

そこで、その会社の二代目社長は、正月返上での復旧を社員に指示します。
そしてその結果は・・・

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その会社の創業者は、非常に厳しい社長でした。
もうちょっとしたことで怒鳴り散らすことで有名です。
当時、私は家業の保険の仕事で出入りしていましたが、
はじめのころはわずかなことでずいぶん怒鳴られました。
別に、何か失敗したとか、迷惑をかけたわけではないのに・・・。

経理を仕切っていた奥様も、その社長の横で同じように人を罵倒するタイプです。
私たちのような外部の業者に対してこれですから、社内に対しては言わずもがなです。

 

そんな社長が、それから数年後、突然お亡くなりになりました。
不運な事故でした。
その際に、社長のご子息は営業部長。
急遽、会社を継いで、二代目社長に就任しました。
その数年後です。
件の火災があったのは。

さて、この二代目社長。
ひざを突き合わせて話をすると、比較的話のしやすい人です。
時折電話を頂き、
「こういうアイデア、御社で採用すればすごく売り上げ上がるんじゃない?」
なんていうアドバイスをいただくこともありました。

 

しかし、社内では鬼軍曹。
社員には恐れられ、ゴリゴリの鬼軍曹を演じておられたようです。
そんな折の火災事故。
最終的に、工場再建に必要な火災保険は十分以上に支払われることとなりました。
多少のタイムラグはあるとはいえ、資金的な工場再建のめどは立った。
ただ残念なことが起こりました。

社員の一斉退職。

その二代目社長の下で働こうという社員は、ほとんど残らなかった。
けっか、会社は廃業。
二代目社長は、早すぎる老後を迎えることになりました。
先代は堅い人だったので、借り入れはわずかで、工場資産を売却し、火災保険金と合わせるとそこそこまとまった資金を手にしました。
その後、漏れ聞く話は、二代目社長は一気に老け込んで、病に伏しているとか。

 

実は、私は二代目が社長に就任した時、少し気になっていることがありました。
それは、二代目が、先代になろうとして無理をしている様子があまりに痛々しかったことです。
社員に厳しく当たることが、社長の務めだ。
そんなことを言い聞かせながら、営業会議では怒鳴り声をあげる。
「おまえら、そんなことでうまくいくとおもっとんのか!」
社員は、そんな二代目についていく気持ちが萎えてしまったのかもしれません。

先代には先代の物語があります。
何もないところから事業を立ち上げ、苦しい時代を共にした社員がいて。
同じ釜の飯を食う、という表現がありますが、まさにそんな中、一緒に成長してきた。
社員にしてみれば、そんな思いがあったのでしょう。
しかし、そこに、社員から見れば「苦労知らず」の二代目がトップに収まり、先代のコピーのようにふるまう。
これではついていけない。
そんな思いが、火災事故の発生・復旧の過程に一気に噴き出したのかもしれません。

先代と社員の関係の背景にある物語と、
後継者と社員の関係の背景にある物語は、
根本的に違います。
別のストーリーをなぞりながら、同じものにはなりえません。

きっと、二代目社長もそのことには気づいていたのではないかと思います。
それでも先代の存在の大きさゆえ、先代をトレースすることしか選択肢が浮かばなかったのでしょう。
二代目社長自身はそういう表現はしませんが、先代のようになりたかった。
これが心の奥底にある本音なのではないでしょうか。
しかし、それではうまくいかないことが多いのが現実です。
二代目にはないものが先代にはあるし、一方で、先代にはないものが二代目にはある。
親離れ、子離れ、というと失礼な言い方かもしれませんが、実は親族間の事業承継に必要となるのは、
心理的に親から独立することである、と私は考えています。

 

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