社員の「心理的安全」を作る~後継者の役割

なぜか社内が殺伐としている。
そう感じる後継者は多いかもしれません。
実は、これは中小企業に限った事ではありません。
大企業等でもそのような状況はしばしば見受けられます。

封建的なリーダーの下では、そういった状況がよくあります。
その原因はどこにあり、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。




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社内に私語は一つもなく、しーんと水を打ったような静けさ。
カタカタと、キーボードをたたく音だけがオフィスに響いている。
メンバーは、歯を見せて笑う事もなく、黙々と仕事に打ち込む。
肩をいからせて、前かがみにPCに向かい、ただただ画面とにらめっこを続ける人々。

しかし、リーダーが外出した瞬間、空気が緩むのを感じる
いからせた肩を緩ませ、椅子の背もたれに体重を預け、ちょっとした私語が始まる。

 

きっとこのシーンをリーダーが見ると、渋い顔をするのだろうな。
メンバーはそんな風に思いながら、窮屈な会社に嫌気を感じ始める。

 

こういった社内の状況は、意外とよくある光景ではないでしょうか。

ある大手金融系の会社に勤める女性社員がこんなふうに漏らしていました。
「正直なところ、今すぐにでも会社を辞めたいと思っています。
仕事はしたいけど、今の会社は嫌。
なぜかというと、社内が殺伐としてるんです。
何のきっかけもなしに会社を辞めると、親もうるさいし、同僚とも変な溝ができるので、きっかけを探してる感じ。
結婚とかしたら、良い口実なので今の会社を辞めて、スターバックスとかで勤めたい。」
明らかに、収入の減る会社への就職にあこがれるなんて、興味深い話だな、と強い関心を持ちました。

 

実は、こういった殺伐とした社風は、社員の定着率やモチベーションへの影響にとどまりません。
ミスが報告されないという、組織にとって致命的な問題を抱え始めます。
たとえば、時折大きなニュースになる企業の不祥事。
よくよく見ていくと、社内でまったくこういった問題を抑止する機能が動いていない事に気づきます。
たいてい、末端の社員はインタビューに答えてこういいます。

「いずれ問題になるとは思っていた。」

見方によれば、この社員も被害者面をしていて
「じゃあ、あなたはこの問題を起こさないために何をやったのか?」
と言いたくなる向きもあるかもしれません。
しかし、実態は、上に意見するなどとてもできない風土があった事は想像に難くありません。

 

威圧的なリーダーを擁するトップダウン組織の弱点が露呈するのが、こういった”不祥事件”のようです。

 

エイミー・C・エドモンドソンは、著書『チームが機能するとはどういうことか―「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』の中でこんなふうに言っています。

権力を持つ人が高圧的に、しかも最初に話をすると、それが本来の意図でなかったとしても、人々は一層自分で自分にブレーキをかけるようになる。同様に、そのつもりはなくても、マネージャーは自分の意見に対し、疑問を正直に口にすることよりむしろ支持を求めることによって、意義ある反対意見を述べようという人々の意欲をそいでしまうことが少なくない。

少しわかりにくい表現になるので、簡単に言い換えてみます。

リーダーが高圧的かつ最初に話すことで、メンバーは自分の意見を差し控える傾向が出る。
こういったリーダーの姿勢が、社内の心理的安全を脅かし、意義ある反対意見を封じ込めてしまう可能性があるという事のようです。

意地悪な言い方をすると、裸の王様になってしまいかねない状態といえるのかもしれません。
裸の王様に意見できる家来はいなかったから、王様は間違いに気づかなかったのです。

 

また、Googleでは、2012年にスタートした「プロジェクトアリストテレス」といった労働生産性を高めるプロジェクトでこう結論付けています。

「心理的安全性」をチーム内に担保できるか否かが生産性向上のカギ

 

では、メンバーの心理的安全性を担保するには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
前出の『チームが機能するとはどういうことか』の中で、こんな条件が示されています。

・直接話のできる、親しみやすい人になる。
・(リーダー自身が)現在持っている知識の限界を認める。
・自分もよく間違う事を積極的に示す。
・参加を促す。
・失敗は学習する機会であることを強調する。
・具体的な言葉を使う
・境界を設ける。
・境界を越えたことについてメンバーに責任を負わせる。

詳細は、書籍を紐解いていただければと思いますが、
自分は完璧な人間という訳ではないから、メンバーのサポートが必要である
という事を明確にチーム内に言葉と態度で表す必要がありそうです。

 

ここが、高圧的なリーダーともっとも異なる点だと思います。
王として君臨するリーダーは、自身が完ぺきではなくてはならない。
しかし、心理的安全性を保つためには、完ぺきではない事を認めることがスタート地点になるわけです。

 

ここで、先代と後継者のタイプの違いを考えてみましょう。
どちらかといえば、先代は高圧的なリーダーであるケースが多いのではないでしょうか。
そして後継者は、その逆を目指している事が多いと思われます。

時代の流れとして、それは大まかな部分においては正しいと考えられそうです。
今までは、リーダーに対して意見することがはばかられた社風に、新しい風を流す必要があります。
もちろん、先代の姿勢としては今までのスタイルを変えることは難しいでしょう。
しかし、後継者であるあなたは、まだまだ柔軟性を持っているはずです。

社内の心理的安全性を保とうと考えても、それを先代がうっかり潰してしまうかもしれません。
しかし、社員にとって、あなたはあなたであり、先代は先代です。
先代と全く違う雰囲気をまとったあなただからついてくる社員も、少なからずいるのではないでしょうか。

 

会社の中で実現したいことがあるとき、まずはあなたを応援してくれる人を増やす。
あなたを応援したい社員が増えれば、彼らはあなたの見ている未来を見たいと思うはずです。
社内での仲間づくりを行う際、心理的安全性というのは、とても重要なキーワードとなるのではないでしょうか。

 

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