未だ、本ブログの中で最もアクセスの多い記事があります。
この記事です。
四年半前に書いた記事ですが、最近は少し考え方が深まっています。
そんなこともあって、続編としての記事を記しておきたいと思います。
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Contents
後継者が親の会社を辞めたくなる本当の理由
経営に対して自信がないという後継者
たくさんの後継者・二代目経営者の方とお話をしていて、必ずと言っていいほど出てくる話が「自信がない」ということです。
論理的に考えれば、初めて経営というものをやるのですから当たり前と言えば当たり前です。
これが創業者であれば、自分の成長とともに社員が増え、設備が増え、顧客が増え、と徐々に責任が大きくなります。
しかし、後継者や二代目経営者は、いきなりある程度の完成品を引き継ぐわけです。
そりゃあ、自信のなさや、不安を感じるのは当然です。
誰しも初めての体験には不安が伴います。
とはいえ、今までだっていろんな「初体験」を不安を乗り越えて済ませてきたはずです。
なのになぜ、親の会社を継ぐことに対して、そんなに消極的になるのでしょうか?
後継者の不安の正体は社長の仕事のブラックボックス化
なぜか親の会社を継ぐことに関しては、自信を失い、不安でいっぱいになる。
そういう方は、いくつかのことをチェックしてみてください。
その不安の原因は何なのかを。
できれば、紙なんかに書き出してみていただくといいと思います。
・・・書けましたか?
じゃあ、答え合わせをしていきましょう。
その中にたとえば、
・親(社長・先代)がやっていることが見えない
という項目はないでしょうか?
たとえば、具体的にいうと「経理をどうするかわからない」「借入先の金融機関との付き合い方がわからない」「重要顧客とのコミュニケーションをどうやってるかわからない」など。
項目は違えど、社長の仕事の中で結構大事と思われる部分が、ブラックボックス化されている、ということです。
そして大抵、その部分を教えてほしい、と頼むと
「お前にはまだ早い」
「そんなことを心配してないで、もっと自分の仕事のレベルを上げろ」
と言っていたいとこを突かれてしまう。
いかがですか?当たってませんか?
本当は事業を継がせたくない親
事実を積み上げていくと垣間見える親の本音
経営の重要な部分のブラックボックス化だけではなく、
たとえば、「〇歳になったら引退する」と言いつつそれは実現しない、という事実。
そろそろ後継者にこれもあれもやってほしいと言いつつ、そのステップを踏まない事実。
親がかかわれそうにない新規アイデアを提案すると完全否定する事実。
これらを積み上げていくと、ある事実とつながります。
それは、親は口では早く代を譲りたいと言っていたとしても、本当はそうはしたくないのです。
そんなお話を動画でもしてますので、良かったら見てみてください。
親の無意識が後継者の自信を奪っていく
親は頭では、早く代を譲らなければならない、と考えていると思います。
会社のことも、後継者のことも考えれば、そうすべきだとわかっている方が多いのです。
しかし、無意識(つまり自分でも気づかないところで)は、今の立場を手放したくないという思いがあります。
そして無意識は、人の行動の9割を制御すると言います。
たとえば、仲のいい恋人同士は、ほぼ同じタイミングで同じ動作をしたりします。
これは自分たちは意識していないけど、無意識が勝手に動作を合わせているわけです。
それと同じように、親もまた自分では気が付かないのですが、無意識に「後継者が後を継ぎにくいような行動」をとってしまうのです。
それは例えば、自分の仕事のブラックボックス化であったり、後継者への反対意見の表明であったり。
もう少し注意深く見ていると、
・後継者を軽く扱う(後継者の都合を考えずに予定を入れる、など)
・後継者のことを勝手に決める(事前の相談などはなく、どこかの団体に所属させるなど)
・後継者を人前で見下した表現をする(こいつにはまだまだできませんが・・・的な表現)
・後継者に上から目線(後継者にやらせるというような言い方)
・後継者の欠点を強調する(お前は、〇〇がまだまだだ)
といった扱い方が散見されると思います。
とらえ方によっては「後継者は部下であるから当然」と言えるかもしれませんし、「後継者を厳しく育てる一環」と言えるかもしれません。
しかし、後継者にとってはこういった「自分が尊重されていない扱いを受けている」という感覚は、後継者の自信をそぎ落とされているかのようにじわじわと効いてきます。
あなたがダメなのではなく誰でもダメ
これは後継者が、実の息子・娘だからでしょうか?
恐らく違うと思います。
実際に、血縁関係のない社員を後継者に据えて企業でも、同じようなことが起こっていたケースをいくつか見ています。
ひどいケースでは、新規事業を立ち上げ、会社全体の売り上げ規模を上げた功績を故残した後継者を、その後一時的に売り上げがダウンしたのを機に、引退していた先代社長が社長の座に返り咲いたケースもありました。
その後継者はさすがに我慢しきれず、会社を去ったと言います。
10年ほど前のことですが、今も返り咲いた元社長が今も会社のトップに立っています。
すべての事例がそうだとは言いませんが、後継者の自信をそぐ親の行動はそれが実の子だからというわけではないようです。
誰であろうと、無意識に自分の社長の座を守るような行動をとってしまうのです。
自尊心を失った後継者へのアドバイス
いつしか自分で自分を責め始める
親が後継者を尊重しないことで、後継者は自分のことを公表するようになります。
「自分はまだまだだ。もっと勉強して、もっと仕事を頑張って、もっと経験を積まなければ」
ふがいない自分に活を入れ、もっと、もっと、と自分に高い要求を突きつけます。
いつまでたっても会社を任せてもらえないのは、自分が未熟だからだ。
ああ、自分はなんてダメなんだ。
そんな風に考え始めているのではないでしょうか?
そうするとだんだんと、自分に鞭を入れても動けなくなってきます。
何をやってもうまくいきそうにない感覚にとらわれてきます。
自分が苦しんで、苦しんで、耐えきれなくなると今度は、周囲を責めたくなってしまう。
あの親がいるから、
自分の思い通り動かない社員ばかりだから。
そうやって、自分で自分を攻撃することを言っときでも忘れようという、これもまた自己防衛本能の一種だとおもいます。
すると、社員もどんどん自分と距離を取り始めます。
そして、後継者は孤独の中で、自責し、人を責め、そして人を責める自分を情けなく感じ、また人を責め・・・
そんな負のスパイラルに陥りがちです。
一通り経験した私から提案したい3つのステップ
なぜ、こんなにリアルにわかるかって?
私も同じ経験をしたからです。
そして、その根底にあるものを探求しつづけたのです。
その期間はすでに25年に至ります。
参考にした考え方は、組織マネジメント論から、心理学、脳科学、哲学、そしてスピリチュアルな分野まで。
たぶん、読んだ本は千冊はくだらないと思います。
前の記事、後継者が「家業に向いていない」と思ったとき、考えたい3つの選択肢。の選択肢を考える前にやってみてほしいことがあります。
それは、自尊心を取り戻す方法です。
もう少し平たく言うと、「自分と、自分の考えが大切に扱われる環境」を作ってほしいのです。
その具体的なステップは、以下の3ステップです。
STEP① 社員との絆を取り戻す(社員の話をよく聞き、自分の弱みを知ってもらう)
STEP② あなたの考えを繰り返し社員に伝える(会社をどうしたいのかを繰り返し伝える)
STEP③ あなたの考えを短い単語で表し日常の会話に取り込む(会社の進む道を象徴する単語を設定し、それを日常会話に入れ込む)
あまりにシンプルすぎであっけにとられている方もいるかもしれません。
もう少し詳しく・・・というご要望もあろうかと思いますが、2019年6月発売予定の私の書籍で書かせていただいていますので、良ければ手にとってもらえればと思います。
とはいえSTEP①を実践するだけで信じられないほど状況は変化します。
あなたが、社員一人一人に「重要な人である」と感じてもらえることができるからです。
そのことで、会社が変わり、なによりあなた自身の気持ちの持ち方が変わります。
そうすると親が何を言っても、痛くもかゆくもなくなります。
後継者に不足しているのは、自分が、自分を含めた誰かにとって、重要な存在である、という事実への認識です。
それを取り戻すための最もシンプルな方法は、人の話を真剣に聞くことなのです。
さらに深めるとすれば
そもそも、「人に大事にされていなければ自分は取るに足らない存在だ」という思考に陥るのは、そもそも自分が自分を認めていない証です。
たしかに、「もっと、もっと」という気持ちは向上心として、自分を成長させる起爆剤です。
しかし、会社の将来を預かる後継者という重責においては、「もっと」という思いは「足りない」という考えと直結しがちです。
ここで少し実験をしてみましょう。
「先月一カ月の反省点は?」
と聞かれると、いくつか思い浮かぶものがあるのではないでしょうか。
しかし、
「先月一カ月で成し遂げたことは?」
と聞かれても、何も思い浮かばないことが多いのではないでしょうか。
「あれかなぁ」と思ったとしても即座に、「いや、そんなことできて当たり前だし」と否定していないですか?
これは思考の癖です。
自分のダメな部分はたくさん思いつくけど、良い部分は自分さえもが見てあげていないのです。
もし周囲の誰もがあなたの良さを認めていないとしたら(実際はそんなことあり得ませんが)、あなた自身がまずは自分を認め、労わなければあまりに不憫です。
あなたは今のままで、何も不足していない。
そこを出発点にしてみたとき、自分のこと、会社のこと、親との関係、それぞれが違った見え方がするはずです。
認知するものが変わるということは、世界そのものが変わるということ。
物事のとらえ方次第で、現実は一瞬で変わるのです。
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画像提供元Ngo Minh TuanによるPixabayからの画像