新井和宏
実は、私は金融というものをあまり信用していません。
というのも、明確な価値を創造していないように思うからです。
値が上がりそうなものに投資し、上がりきったときに売却する。
高く売った人は得をしますが、必ずその裏で損をする人がいるわけです。
こんなゲームのような仕組みが、金融工学の発達とともにどんどんと膨れ上がり、その結果がバブル経済だったりリーマンショックであったり。
どうも、感覚的に、しっくりこないわけです。
この本は、鎌倉投信という会社の資産運用部長が書いた本です。
小さな資産運用会社が資本主義を語るなんて…と、なんだか大それた感じがしたのは事実です。
しかし、読み始めるとグイグイと引き込まれる話が満載です。
著者は言います。
これまでの資本主義は搾取の経済で、誰かが利を得るためには誰かが損をする。
例えば、商品を安くするなら、社員の労働環境、仕入れ業者への値段の圧力といった事が発生します。
次第にそれでは吸収できなくなると、海外で劣悪な労働環境で作られた部品を安く買いたたく。
結果として、目の前に差し出された商品は安くなったかもしれませんが、多くの人や環境に負荷をかけた結果です。
金融も、短期的な利益だけのために頻繁に売買を繰り返す。
投資される側は、短期的な利益を出さざるを得ず、長期的な戦略はねることができない。
永遠に、その場しのぎの対策で、ただ規模の拡大を必死にやるばかり。
つまり、本質的に企業や人を育てようという風潮がなくなっているわけです。
それをかえよう、と、「よい会社」に投資する鎌倉投信を作る会社を立ち上げた経緯がわかりやすく語られています。
良い会社に長期的に投資する。
彼らの言う良い会社には、金銭的価値に換算できる資産がある。
それは人財であったり、社風であったり、社内の仕組だったりするようです。
そんな資産を持っている限り、多少の上下はあれど、長期的に見れば必ず株価は上がる。
そのために、投資先の会社を1件1件取材し、投資する。
金融を通じて、いい会社がよりよく発展できるように頑張っているのが鎌倉投信のようです。
この本は、金融に携わる人ももちろんですが、経営者にとってもとても参考になる本だと思います。
経営者として、この会社に投資してもらえる会社にしたいな。
そんな風に思えるとしたら、素晴らしいな、と思います。
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