親子で会社を経営していると、大きなテーマとして親子の確執というものがあります。
以前は、単なる経営上の障害としか認識していませんでした。
しかし最近は、この確執が結構重要な意味を持っているのではないかという思いに至っています。
その重要な意味について、わたしなりの考えをまとめてみました。
私の著書です。
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親子の確執が起こるメカニズムは、いくつかの層にわかれています。
第一層:表面上の意見の対立
第二層:無意識における自らの保身
そして、第三層に来るのは、ある物事のきっかけとして。
まず、第一層の表面上の意見の対立。
これは目に見える部分なので、非常にわかりやすいと思います。
後継者はこうしたい、という思いがあるのに対して、先代はそれを拒否する。
逆に、先代は後継者にこうさせたいという思いがあるのに、後継者はそれに従わない。
特に会社の戦略や、仕組化でこの対立が表面化することが多く、頭を痛めるポイントです。
しかし、果たして表面的な意見の対立で、血のつながった親子が、修復不可能なほどの確執を起こすでしょうか?
私も長年、後継者がいかに自分流の経営を社内に取り込めるか?という事を考え続ける中での大きな疑問でした。
一方、巷で目にする事業承継や親子経営の書籍や情報における考察は、ほとんどがこの第一層レベルでしかありません。
ハッキリ言って、浅いのです。
「親子でちゃんとコミュニケーションを取りましょう。」
等という、小学生向けの教科書的なアドバイスに何の意味もない。
それができないから困ってるんじゃないか、とブツブツ呟いたものです(笑)
そこでもう少し深い部分を掘り下げてみました。
多くの場合、先代は後継者に対して、理不尽ともいえる判断をすることがあります。
たとえば、会社のホームページを作りたい、と後継者が言い出してもこう反論する先代がいます。
「そんなものまかりならん。我々の商売は人のつながりで成り立っているんだ。」
なんとなく、違和感がありますよね。
今時ホームページなんて、会社案内のようなものです。
自分たちの事を公表せずして、人とのつながりがどうこうというのはおかしい。
はじめは、こういった先代の判断基準を、単なる思い込みだと思っていました。
しかし、それほど簡単なものでもなさそうだな、と思える事例がいくつもあります。
そこで、たどり着いたのが、先代が無意識に持っている”目的”についてです。
代を譲らなければならない年齢になっているのはわかっている。
しかし、そうしてしまうと、今まで持っていたものを手放さなければならない。
それは、お金、社長としての権力、社会的地位など。
極めつけは、誰かに頼られるという快感。
意識上では、代を譲らなければならないと考えてはいても、
無意識に今あるものを捨てる事を恐れているのです。
今回は割愛しますが、後継者も同じように、捨てきれないものを持っていて、
代が変われば失うものに対する恐怖を抱えています。
この”無意識”の行動はなかなか厄介で、まずはそのような無意識があることに気付かなくてはならない。
そうやって、自分の気づかない本心に気付き、そこを緩めていく必要があります。
この第一層、第二層の話は、過去のブログにも何度か書いており、
今後も度々触れる部分だと思うので、今日はこの辺で差し控えます。
さて、ここからが第三層の話です。
恐らく、親子経営の話から、このような話につなげる人は、恐らく私ぐらいでしょう(^^;
その第三層にあるものは、親子双方が人として一皮むけるための試練ではないかと思うのです。
順序立てて話していきましょう。
経営者の多くは、自己肯定感が低い(つまり自分が取るに足らない存在であると思い込んでいる)と言われています。
小さいころのトラウマ、育った環境(貧しいなど)、親から十分な愛情を受けられなかった(離婚、死別、褒められなかった、兄弟と差別された)といった事が原因です。
親から、人から、愛されないのは自分がしっかりしていないからだ、と無意識のうちに自分を責めています。
そういった、愛情への渇望感から、「人から頼られる存在」になるため起業し、会社を育ててきました。
それが起業の絶対的なパワーにつながるから、起業家として存在し得るといった分析を行っている専門家がいます。
しかし、いくら頑張っても、その愛情への渇望感は満たされることはありません。
なぜなら、もっとも自分にとって重要である、自分が自分を認めていないからです。
後継者もほぼ同じ傾向を示します。
なぜなら先代は、社会的な対面を気にします。
だから、子供へのしつけは一定程度の厳しさを持っていたはずです。
後継者の子供時代は、褒められて育ったというより厳しくしつけられてきた、という傾向が強いのではないでしょうか。
小さなころから、親に認められていない自分を意識し、やはり同様に自己重要感が低い状態です。
人は、特にきっかけがなければ、身近に手に取れるものでその渇望感を満たそうとします。
渇望感を紛らわすため、
酒、ギャンブルといったものに依存したり、
寄り添ってくれる異性に心奪われたり、
高級ブランドの車や時計、装飾品で身を飾ることで自己肯定感の穴埋めをしたり。
しかし、どこまで言っても満たされることはありません。
やはり、無意識の領域では、自分で自分を認められていないからです。
その事に気付くにはきっかけが必要です。
そのきっかけこそが、”確執”という試練です。
物事が上手くいかず、立ち止まらざるを得ない状況になって初めて自分を探求し始めます。
親子経営では、親子双方にとってのシグナルが、親子の確執なのだと感じています。
いいかえると、脱皮のタイミングですよ、という合図です。
だから、表面上の手を打っても、改善することはない。
一時的に改善したとしても、別の形で問題は再発するでしょう。
まさにもぐら叩きを続けることになってしまいます。
この、きっかけ。
結構重要だと思います。
なかには、こういったきっかけを得ることなく人生を終えていく人もいるのでしょう。
しかし、あなたが今、親子の確執で頭を悩ませているとしたら、
それは自分の事、先代の事を深く知るべきタイミングなのではないかと思います。
ぜひ、この第三層にアクセスしてみてください。
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